グローバリゼーションの進展、経済のボーダーレス化といった国際環境の大きな変化の中、国際的相互依存が高まるとともに、国際的な調整課題も増大している。人及び物の流れを担い、ボーダーレス化の最前線にある運輸分野においては、より一層円滑な国際交流の実現に向けた環境整備が求められており、また一方、日米航空問題、港運問題、自動車・同部品問題等をめぐる個別経済問題も生じている。こうした状況に適切に対応するために、国際交通ネットワークの整備を進めるとともに、多国間・二国間の政策調整・協議等を通じて公正な国際競争や、諸外国との協調による円滑な国際運輸サービスの実現に努める。また、途上国の経済発展と生活向上を図るため、運輸分野における国際協力に対する期待は極めて大きく、その効果的・効率的な推進を図る。
さらに、貿易物資の安定的な国際輸送体制の確保に取組むことが必要である。
アジア太平洋地域の18カ国の地域で構成され、貿易・投資の自由化、円滑化、経済技術協力を目標にして活発な活動を続けるAPEC(アジア太平洋経済協力)や東アジア10カ国の運輸当局の次官レベルで運輸に関する共通政策課題について率直な意見交換を行う東アジア運輸フォーラム等に積極的に取組むとともに、主要国及びEUとの間で運輸ハイレベル協議等を開催して継続的に対話を行うことにより、多国間・二国間の政策調整・協議等を実施する。
また、輸送機器の国際基準調和等への対応について、国連欧州経済委員会1958年協定加入に向けての体制整備等自動車に係る基準の国際調和、相互承認制度の確立に努めるとともに、国際基準に適合しない船舶の排除を国際的な協力の下で実施するためのポートステートコントロール(PSC)の充実強化を図る。
さらに、日米航空問題、港運問題等については、我が国の基本的立場を堅持しつつ、毅然とした態度で対応していく。
国際交通ネットワークの整備については、国際定期航空輸送について、航空交渉を通じて利用者ニーズに適切に対応した運航路線と輸送力を確保するとともに、国際海上輸送について、WTO(世界貿易機関)、APEC、IMO(国際海事機関)等における活動に積極的に貢献し、自由で公正な国際海運市場の形成に努める。
この他、貿易物資の安定的な国際輸送体制を確保するため、日本籍船及び日本人船員の確保のために設けられた国際船舶制度の拡充(国際船舶の日本人船長・機関長2名配乗体制の導入、若年船員を対象とした実践的教育訓練スキームの確立等)を推進して、我が国外航海運の活性化を図る。
開発途上国の発展のためには、効率的な輸送体系の構築や観光の振興等が不可欠である。しかしながら、多くの開発途上国においては、これに必要な技術やノウハウ、資金が不足しているため、運輸分野に対し、大きな期待がある。
このため、運輸審議官による開発途上国運輸担当大臣等との会談をはじめとする政策対話等を通して、各国の協力ニーズを把握し、これを踏まえ、鉄道、港湾、空港等の運輸インフラの整備等のハード面の協力を推進するとともに、開発途上国の交通政策策定に対する支援や安全かつ効率的な運輸システムの運営手法の技術移転等のソフト面の協力を進めている。
特に環境問題については、地球規模の取組みが必要となっていることから、開発途上国における環境にやさしい物流システムの整備や都市交通公害対策、海洋環境の保全等の環境問題の運輸国際協力については重点的に取組んできている。
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