新たな運輸技術の誕生が、交通、更には社会に革命的変化をもたらしてきた歴史的経緯を考えるとき、間近に迫った21世紀において、真に豊かな社会を創造していくために、運輸技術の果たす役割は、非常に重要であると言える。
現在、21世紀に向けて、例えば以下のような技術開発が進められている。
(運輸多目的衛星)
衛星を利用した気象観測、海洋測地、海上測量等を引き続き行うとともに、様々な衛星利用ニーズを効率的かつ経済的に満たすため、航空管制及び「ひまわり5号」の後継としての気象観測を行うための運輸多目的衛星(MTSAT)を、11年度に打ち上げる計画であり、6年度から衛星の調達等を進めている。
運輸多目的衛星を中核とした次世代航空保安システムの導入により、航空交通容量の拡大、航空交通の安全性の向上、効率的な航空保安システムの形成等が可能となる。
(超電導磁気浮上式鉄道)
超電導磁気浮上式鉄道(リニア)は、超高速、低公害等の特性を有することから、新しい都市間大量輸送機関として期待されている。営業最高速度500km/hの超高速性、ピーク時間当たり1万人程度(片道)の輸送能力等の確保をめざし、9年4月から山梨県に建設された実験線において走行試験が開始されており、11年度までに実用化に向けた技術上の目途を立てることにしている。
(超大型浮体式海洋構造物)
海洋空間の一層の有効利用により運輸関連施設等の社会資本の円滑な整備に資するとの観点から、数キロメートル規模、耐用年数100年を目標とした超大型浮体式海洋構造物(メガフロート)の研究開発を推進している。実用化に向け、引き続き、大型浮体モデルを用いた実証実験を行うとともに、空港への利用可能性に関する技術的な検討を実施している。
メガフロートは、海上空港、物流基地、エネルギー基地、レジャー施設としての利用が考えられており、実用化されれば海洋空間における社会資本整備に新たな道を開くことになる。
(高度道路交通システム)
情報通信技術等を用いて、人と車両、道路を情報でネットワーク化すること等により一体のシステムとして構築する高度道路交通システム(ITS)は、安全性、輸送効率、快適性の飛躍的向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化により環境保全に大きく寄与することが期待される。エレクトロニクス技術を応用し、安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV)の開発推進や、公共交通の支援、商用車の効率化等の観点から道路運送事業におけるITSの活用方策についての調査等を関係省庁と連携しつつ実施している。
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