近年の大競争時代において、我が国経済の活力維持のためには、物流のサービス向上やコスト削減等により産業の誘致を積極的に図ることが不可欠であり、また、多様化するユーザーニーズに適切に対応するためには、各輸送モードの選択肢の多様化と相互連携を図ることが必要である。
このため、社会資本の整備については、国際的にみて整備の遅れがみられるようになった国際ハブ港湾・空港の整備を着実に進めるとともに、道路、鉄道、港湾、空港、物流拠点の相互連携、物流のボトルネックとなっている区間・地点の解消を併せて推進していくこととしている。
我が国においては、貿易量(約9億トン)の99.8%が港湾を経由しており、港湾は我が国産業を支える重要な役割を果たしている。しかしながら、近年、アジア経済の発展や国際分業制の進展の中で、相対的に我が国港湾の地位は低下しつつあり、特に、大型コンテナ船に対応した大水深のコンテナターミナル整備は、諸外国に比べて著しく立ち後れているのが現状である。
このため、東京湾、伊勢湾、大阪湾及び北部九州の中枢国際港湾において、大水深(水深15m級)・高規格の国際海上コンテナターミナルを早急に整備するほか、中枢国際港湾を補完する全国8地域の中核国際港湾(北海道、日本海中部、東東北、北関東、駿河湾沿岸、中国、南九州、沖縄)において、国際海上コンテナターミナルの拠点的整備を推進するとともに、港湾諸手続の簡素化・情報化等ソフト面の施策を講じ、効率的な国際物流システムの形成、物流コストの削減を図ることとしている。
一方、内航海運は、鉄鋼、セメント、石油製品等の基礎素材物資の国内における輸送の大部分を担っており、我が国産業にとって必要不可欠な輸送手段である。今後、このような大量性、低廉性、エネルギー効率に優れた内航海運の輸送特性を活かし、長距離幹線輸送について、内航海運への積極的な誘導を図るため、十分な荷役ヤードと駐車スペースを有する複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの整備を推進し、物流コスト、CO2(二酸化炭素)排出量の削減に資することとしている。
航空貨物の近年の伸びは目覚ましいものがあり、特に国際航空貨物取扱額は、我が国の輸出入総額の26%を占めるまでになっている。
空港の整備については、第7次空港整備五箇年計画に基づき、大都市圏における拠点空港の整備を最優先課題として推進することとしているが、急増する航空貨物需要に適切に対応するため、貨物取扱施設についても着実な整備を行うこととしている〔1−2−5表〕。
新東京国際空港の航空貨物取扱量は8年度には159万トンであり、昭和61年以来連続して世界第1位である。これらの需要に対応すべく順次貨物上屋の整備を進め、平成8年4月には延べ面積6万m2の第4貨物ターミナルビルを供用するなど、貨物取扱能力の拡充を重ねてきている。
我が国初の本格的な24時間空港である関西国際空港は、6年9月の開港以来貨物取扱量が急増しており、8年度の対前年度伸び率は19.2%で我が国第1位となっている(全国平均3.2%)。また、関西国際空港は、従来の大阪国際空港(伊丹)にあった発着枠の制約がないことから、貨物専用機の乗り入れも増加し、特に23時から早朝6時までに発着する貨物専用便が9年9月現在で週17便を数えるなど、24時間空港としての利点を発揮している。
昭和30年代以降、我が国の貨物輸送の担い手は、鉄道輸送からトラック輸送へと大きくシフトしたが、近年の地球温暖化問題等を背景に、環境負荷の軽減・輸送効率の向上に資する鉄道輸送の見直しがなされている。このため、荷主にとって利用しやすい列車の運行を可能にし、鉄道貨物の利用を促進するため、鉄道インフラの整備を推進することとしており、現在、東海道線の貨物輸送力増強について、以下の支援策を行っている〔1−2−6表〕。
貨物の保管、積卸し、荷捌き等様々な物流活動の結節点である物流拠点の整備は、物流システム全体の効率化、高度化にとって重要な位置を占める一方、民間事業者による整備は、初期投資が莫大で投下資本の回収に時間がかかるため、必ずしも容易には進みにくい。したがって、金融上、税制上の優遇措置等により、民間事業者が整備する倉庫、トラックターミナル、物流高度化基盤施設等の整備や、物流施設を集積する流通業務市街地の整備を促進している。
しかし、用地取得の困難性による物流拠点の絶対数の不足、既存施設の老朽化等の問題が生じ、その整備促進がより一層必要になっている。また、物流事業者が物流拠点を活用して、環境負荷の低減等を含めて荷主に係る物流の効率化を図ることが、昨今特に期待されている。こうした状況を受け、8年6月、運輸政策審議会において、物流拠点の整備のあり方について取りまとめがなされた〔1−2−7図〕。
総合物流施策大綱を踏まえ、社会経済的にみて今後重点的に整備すべき物流拠点について、民間事業者による整備を円滑に進める上での拠り所とするために、9年度中に物流拠点の整備指針を策定することとしている。
輸入拡大の要請、製品・部品輸入の急増等により、国際物流と国内物流との接続の円滑化が一層求められている。このため、中枢国際港湾の大水深コンテナターミナルや大都市圏の拠点空港等の整備を進めているが、これにあわせて、「輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法」に基づき、港湾又は空港及びその周辺地域を輸入促進地域(フォーリン・アクセス・ゾーン=FAZ)として、輸入促進に寄与する事業に対する支援措置が講じられている〔1−2−8図〕。さらに、国際空港周辺、中枢・中核国際港湾、輸入促進地域等において、総合輸入ターミナル等の物流拠点の整備を進めるほか、固定資産税の特例措置等により輸入拡大に対応する臨港倉庫、港湾上屋等の整備の促進を図っている。
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