(ア) 環境と安全に配慮した自動車交通の円滑化・効率化の推進
車社会の抱えるこれらの問題は個々の人の生命や健康にとどまらず、「人と環境にやさしい住みやすいまちの確保」といった観点からも対応が求められている。
このため、運輸省では以下のような施策を推進している。
「人・まち・環境」にやさしいバスの特性を活かし、その利用を促進することは、道路交通の円滑化を図る上で重要である。そこで、関係者と一体となって、バス輸送サービスの向上とともに、バスの走行環境の改善に向けた諸施策を推進している。
また、交通の円滑化のためには、ハード面の対策のみならず、自動車利用者に働きかけるソフト面の施策を推進することが重要である。このため、都市中心部の入口で自動車からバスに乗り換え、中心部でスムーズに移動できるパークアンドバスライドや時差出勤を関係者と一体となって推進している。
さらに、米国を中心に導入されている通勤時のマイカーの相乗り(カープール)の我が国での導入・普及に向けた検討を行っている。
トラックの輸送効率(積載効率)を向上し、総走行距離の削減を図り、環境と調和のとれた安全なトラック輸送を実現するため、情報通信技術等を用いた効率的な運行管理等トラック輸送の情報化を推進しているとともに、都市内においては、共同輸配送の推進、都市間輸送においては、幹線共同運行や、トレーラ化等による車両の大型化を推進している。
(イ) 環境にやさしい自動車の開発・普及の促進
自動車交通に起因する環境負荷の低減のためには、低公害車の開発及び普及促進が有効である。現在実用段階にある低公害車としては、メタノール自動車他3種類がある〔2−6−3表〕。
低公害車の開発・普及を促進するためには、一層の技術開発による性能の向上、価格の一層の低減、取得に対する支援措置等が必要である。このため、以下のような支援措置を講じている〔2−6−4表〕。
(ウ) 排出ガス対策への取組み
自動車排出ガス規制については、特に、新車に対し順次規制強化を実施してきている(第2部第2章第3節1参照)。
(エ) 自動車NOx法への対応
大都市地域を中心とした窒素酸化物による大気汚染については、「自動車から排出される窒素酸化物の特定地域における総量の削減に関する特別措置法」(いわゆる自動車NOx法)に基づき、自動車使用車種規制、自動車使用の合理化を柱とした施策を推進している(第2部第2章第3節1参照)。
(オ) 騒音対策への取組み
自動車騒音規制については、新車の加速走行騒音規制の強化、使用過程車に対する近接排気騒音規制の導入、消音器装着の義務付け等について実施してきている(第2部第2章第3節1参照)。
(カ) 省エネルギー対策への取組み
近年、内外のエネルギー需要の増大、二酸化炭素等による地球温暖化への関心の高まり等により、省エネルギーの重要性はますます増大してきている。
運輸省においては、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」に基づき、5年1月、ガソリン乗用車の燃費の一層の改善を図るため自動車メーカーが遵守すべき新たな目標値等を告示するとともに、8年3月にはガソリン貨物車についても燃費目標値を告示し、自動車燃費の一層の改善を推進している。
また、9年4月から、ディーゼル車の燃費目標値の設定について検討を開始している。
(ア) 自動車の安全に関する技術基準の見直し等
自動車の保安基準については、国際的調和にも留意しつつ、交通環境の変化に対応した見直しを適宜行っている。特に、近年交通事故死傷者が高い水準で推移しているという厳しい事態に対処するため、4年3月に運輸技術審議会から出された答申を逐次計画的に実施することとしている。このため、前面衝突時及び側面衝突時の車両本体による衝撃吸収性能の強化、大型後部反射器の装備義務付け対象車種の拡大、ブレーキ性能の強化等について自動車の安全基準の拡充強化を実施したところである。今後も事故の実態、自動車の技術進歩等社会的要請に対応するよう、引き続き拡充強化等を図ることとしている。また、4年3月に設立された(財)交通事故総合分析センターの事故データを活用しつつバス、トラックの車両構造などに関する安全性について検討を進めている。
(イ) 先進安全自動車(ASV)の開発推進
エレクトロニクス技術等の新技術の活用により自動車を高知能化し、安全性を格段に高めた先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)について、学識経験者、関係省庁、自動車メーカー各社代表等により構成するASV推進検討会を中心に研究開発を行っている。
3年度からの第1期5か年計画に引き続き、8年度からの第2期ASV開発推進計画においては、対象車種について、第1期の乗用車にトラック、バス、二輪車を加え、ヒューマン・インターフェイスの最適化及びインフラとの整合・連携について重点課題として取組むこととしている。
8年度においては、主要安全技術として、予防安全技術、事故回避技術等6分野を設定し、その中をさらにドライバ危険状態警報システム等32システム技術、その細目として107の要素技術に分類し、研究開発項目を決定するとともに、ヒューマン・インターフェイスに関する新技術、ASVに関する高度道路システム等について、内外の研究開発や実用化の状況調査を行ったところである。
今後とも、107の各要素技術について順次実用化を目指し、今世紀中に市販車両への搭載を図るとともに、各要素技術を統合制御できるシステムを開発し、21世紀初頭において統合システムを搭載したASV車の実用化を目指して、研究開発を推進する。
(ウ) 自動車ユーザーへの情報提供
(a) 自動車安全情報
より安全な自動車の普及や研究開発の促進と自動車ユーザー等の安全意識の向上を図るため、7年度に引き続き、1.現在販売されている乗用車の安全装置の装備状況とこれらの安全装置の正しい使い方、2.7年度に実施した1500ccクラスの乗用車8車種に加え、販売実績の多いものから選定した乗用車10車種の計18車種のブレーキ性能と全面衝突安全性能の試験結果を掲載した8年度版「自動車安全情報」を9年2月27日に公表した。
(b) 自家用乗用車の点検結果
自動車のユーザーによる保守管理等が的確に行われるための情報として、全国の指定自動車整備事業者の工場(民間車検場)に継続検査(車検)のために入庫した自家用乗用車約16万台について、定期点検で整備が必要であると判断された装置と部位を調査し、その結果を年式別にグラフや一覧表にとりまとめた。「自家用乗用車の通称名別点検結果」と「自家用乗用車の型式別点検結果」の2種類を作成し、これらを9年5月29日に初めて公表した。
(c) 自動車事故の状況を踏まえた情報提供
米国や国内における自動車事故の状況を踏まえ、「エアバッグ付き自動車と幼児・子供用乗車装置の使用上の注意」、「水中に転落した自動車からの緊急脱出方法」及び「チャイルドシートの適切な使用による乗車中の子供の交通事故被害の軽減」について、関係省庁と連携しつつ情報提供を行った。
(エ) 今後の自動車の検査及び点検整備
7年7月1日に「道路運送車両法の一部を改正する法律」が施行され、新しい自動車の検査及び点検整備制度が導入されてから2年が経過した。施行後の状況を見ると、ユーザー車検が増加する一方、自動車整備業においては、点検整備サービスの多様化やユーザーの利便向上及び負担軽減を図る努力が進められてきている。
また、7年12月24日に行政改革委員会から出された「規制緩和の推進に関する意見」を踏まえ、8年3月29日に閣議決定された「規制緩和推進計画の改定について」に基づき、1.指定整備事業において、点検の際にユーザーが点検結果と併せて検査合否の情報を得、これに基づき、ユーザーが整備内容を選択できるサービスが導入され、普及しつつあり、2.指定整備事業において、自ら検査施設を有しなくても、別の工場の検査施設を共有することにより、検査が可能となり、3.自動車の点検・検査項目について、透明なプロセスによる見直しを行う仕組みとして、基礎調査検討会を創設し、8年度の試行調査等の措置を踏まえ、9年度以降継続的な調査を行うこととしている。特に9年度は、トラック等について集中的に各種データの収集、分析等を実施することとしている。
さらに、分解整備検査について、9年6月18日に運輸技術審議会より、分解整備事業の認証制度の維持を前提に、安全確保を図るための措置を講じつつ、分解整備検査を廃止することが望ましいとの答申が出されたことを踏まえ、必要な措置を講じていくことととしている。
また、運輸省としては、引き続き、ユーザーの保守管理意識の高揚を図るための「自動車点検整備推進運動」等の各種活動を関係者の協力を得ながら積極的に行っていくこととしている。
(オ) リコール制度
リコール制度とは、自動車が設計又は製作の過程に起因することにより、保安基準に適合しない場合又はしなくなるおそれがある場合、法律に基づき自動車メーカー及び輸入代理店が、その原因、改善方策等を運輸大臣に届け、対象となる自動車を回収し、無料で修理する制度である。
8年度のリコール届出件数は58件で改善措置対象台数は210万台である。
(カ) 自動車ユーザからの苦情相談等への対応
リコール制度が7年1月に法律事項として施行され、また、製造物責任法(PL法)が同年7月に施行されたことに関連する措置として、ユーザー利益の保護及び事故の未然防止対策の一層の充実を図る観点から、以下の対策を講じた。
(a) 自動車交通局審査課ユーザー業務室に自動車不具合情報受付専用FAXを設置する等により、ユーザー業務室及び各地方運輸局に設けた自動車に係る苦情相談窓口の充実を図った。
(b) 交通安全公害研究所の自動車技術評価部がユーザー業務室と連携し、車両欠陥等に関し、行政上必要となる原因究明及び試験調査を行っている。
(キ) 事業用自動車の安全な運行の確保
事業用自動車の安全な運行を確保するため、一定規模以上の自動車運送事業者に対して営業所ごとに運行管理者を選任させ、運転車の労務管理、乗務員の指導監督等日常の運行の安全を管理させている。また、運行管理者に対しては、その資質の向上を目的とした研修の充実を図り、安全運行に係る指導・教育の徹底を図っている。
さらに、事業用自動車に係る重大事故発生時における緊急連絡マニュアルを定め、情報を迅速に収集し、事故原因の究明及び再発防止を図るとともに、自動車事故情報分析システムを用いて事故の発生状況を統計的に分析することにより事故防止対策の検討を行っており、これらをもとに事故警報を発出するなど、自動車運送事業者等におけるより一層の交通事故防止対策に係る積極的な取組みを推進している。
(ク) 自動車事故被害者に対する保護・救済対策
自動車事故による被害者の保護・救済を図るために実施している自動車損害賠償保障制度については、7年12月に自動車損害賠償保障法が改正され、9年4月から全国労働者共済生活協同組合連合会が自動車損害賠償責任共済事業に参入している。さらに最近における事故率の低下や医療費支出の適正化の進展を踏まえ、保険加入者に対する累積黒字の還元を図るため、自動車損害賠償責任保険(共済)の保険料(共済掛金)を9年5月から平均7.7%引き下げている。
また、自動車事故によりいわゆる植物状態等となった重度後遺障害者に対し、自動車事故対策センターにおいて援護業務を行っているが、運輸省としては、8年6月に有識者からなる研究会において「今後の重度後遺障害者の発生動向、社会保障制度における介護支援サービスの整備動向等を勘案しつつ、その充実及び事業実施の効率化を図る」旨の提言が出されたことを踏まえ、援護事業の適切な実施を図っていくこととしている。
自動車を1台ごとに識別する役割を有するナンバープレートに対し、従来から自分の希望する番号を付けたいとの声が多数のユーザーから寄せられてきたが、これまでは自動車登録検査業務電子情報処理システムの制約から、登録された順に一連の番号を付与せざるを得ない状況であった。
しかしながら、8年1月に自動車の種別及び用途による分類番号を3桁化対応できるようにシステムを全面更新したため、ナンバープレートの払出能力がこれまでの10倍に増大され、希望ナンバー制を導入する前提条件が整った。
このため、ユーザーの多様なニーズに応えるべく、10年5月に全国26ヶ所の陸運支局等でナンバープレートの4桁以下のアラビア数字の部分に希望ナンバー制を導入することとしており、その後概ね1年後を目途に全国的に実施することとしている。