2 トラック輸送の現状と課題
(1) トラック輸送を取り巻く環境
トラック輸送は、その利便性・機動性から、我が国物流の基幹的役割を担っている(第2部第1章2−1−13図参照)。しかし、高速道路料金や軽油価格の値上げ等のコストアップ要因を抱え、さらに、利用者ニーズの高度化・多様化や物流コスト削減要請の高まり、交通渋滞、騒音、NOx等の都市環境問題やCO2を中心とした地球環境問題、労働力の高齢化や労働時間短縮等の課題への対応が求められており、トラック事業を取り巻く最近の環境は厳しい状態にある。
このような中、トラック事業においては、今後とも、共同化や情報化による輸送の効率化を進めるとともに、トラック輸送にとどまらない総合的な物流サービスの提供を目指すことなどにより、これらの課題に積極的に取組んでいく必要がある。
(2) 規制緩和への取組み
トラック事業に関する規制は、2年に貨物自動車運送事業法が施行されたことにより、大幅に緩和されたが、その後も事業者の負担を軽減する等の観点から、逐次規制の緩和を実施してきている。8年度は、運賃・料金届出の際の原価計算書添付不要範囲の拡大や、中国地区・九州地区における拡大営業区域の区域拡大を行った。
運輸省としては、今後とも輸送の安全を確保しつつ「規制緩和推進計画」に盛り込まれた措置(第1部第2章第3節3)を着実に実施していくこととしている。
(3) トラック事業を巡る諸課題への取組み
(ア) 輸送の効率化の推進
物流コストの削減や環境問題の改善を図るため、共同集配や幹線共同運行など輸送の共同化を推進するとともに、求車・求貨情報システムの普及支援やITS(高度道路交通システム)のトラック事業への活用方策の調査・研究など輸送の情報化にも取組み、輸送の効率化を図っている。
(イ) 輸送の安全の確保
トラック輸送は、道路という公共的な空間を利用して提供されるサービスであり、輸送の安全の確保は至上命題である。
9年6月には、8年に引き続き「高速道路における安全運行対策会議」を開催し、大手宅配便事業者等から、安全運行統括責任者制度を活用した事故防止に向けての活動報告などを受けるとともに、さらなる事故防止・安全の確保に努めるよう指導したところである。
運輸省では、今後とも貨物自動車運送適正化実施機関の活用等により、過積載や過労運転の防止等に取組んでいくこととしている。
(ウ) 労働時間短縮等の推進
トラック産業は、労働力の高齢化により若年層を中心とした構造的な労働力不足が深刻化しつつある。このため、9年4月から実施されている週40時間制の円滑かつ着実な定着に向けた各種取組みや省力化の推進等を通じて、トラック産業を魅力ある職場とすることにより、安定的な労働力の確保を図っていく必要がある。
(エ) 利用者保護対策の充実
利用者ニーズの高度化・多様化によるサービス形態の複雑化に伴い様々なトラブルが発生している引越運送に関し、苦情処理体制の拡充等利用者保護対策の充実を図ることとしている。