1 我が国経済の成熟化と社会情勢の変化


(1) 経済の停滞と経済構造改革の推進

 戦後、海外からの技術導入とその応用による良質な製品を大量に内外の市場に供給することにより、急速な発展を遂げ、成熟化してきた我が国経済は、90年代、バブルの崩壊を経て、長びく景気停滞の時期を迎えている。
 我が国経済を力強い回復軌道に乗せるとともに、21世紀における活力ある我が国経済社会を実現するため、金融の再生、国内需要の喚起などとともに、民間部門がその活力を最大限に発揮できるようにするための条件整備、弱者の保護にも配慮した自己責任の原則の徹底など経済構造改革を強力に推進し、その発展基盤を整備する必要がある。

(2) 国民の価値観・意識の多様化の進行

 経済の成熟化に伴う国民の価値観・意識の多様化の進行により、より個性的で自由な生き方が求められ、心の豊かさやゆとりが重視されるようになった。しかし、我が国の経済的な豊かさと国民の豊かさの実感との間に乖離があることも指摘されており、真に豊かさとゆとりを実感できる社会の実現が求められている。

(3) 我が国社会の急速な高齢化及び障害者の自立と社会参加の要請の高まり

 平均寿命の伸びに伴い高齢者人口が大幅に増加する一方、女性の社会進出の拡大、晩婚化等により少子化傾向が続いており、我が国の高齢化は急速に進んでいる。我が国が世界に例のない高齢社会へとなっていく中で、高齢社会に適した社会システムを構築し、豊かで安心できる高齢社会への円滑な移行を図っていく必要がある。
 また、ノーマライゼーションの理念の普及とともに、障害者の自立と社会参加の要請が高まっている。障害者であっても健常者と同様、支障なく地域社会の中を移動し、社会参加することのできる社会システムの構築をめざす必要があり、こうした「バリアフリー」に向けた動きは、世界的な潮流ともなっている。

(4) 交流拡大による地域活性化の必要性

 地方部においては、過疎化の進行、地場産業の衰退等の問題を抱える地域が少なくないが、そうした中で、優れた自然景観や地域に固有の歴史文化、伝統芸能等を活かした魅力ある観光地づくりにより、地域活性化を図る事例が出てきている。観光は、関連産業が多岐にわたりすそ野が広いことから、交流拡大による経済波及効果や雇用吸引力には大きなものがある。今後、新しい観光魅力の創出、交通アクセスの整備、観光関連事業者の連携強化等を通じて交流拡大による地域活性化を図る必要がある。


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