1 自動車旅客輸送の活性化


(1) 需給調整規制の廃止等

 バス・タクシーの事業参入に際して行っている需給調整規制は、供給輸送力の安定的確保等に一定の効果が認められてきたが、一方で、意欲のある事業者の事業拡大や事業への新規参入を制限してきた面もある。また、バブル崩壊以降、輸送需要が低迷し、事業の活性化が求められている。このため、運輸省は、競争の促進により事業の効率化・活性化を図るため、目標期限を定めて需給調整規制を廃止することとした。

 需給調整規制の廃止により生活交通の維持、安全の確保、利用者保護等に支障の生ずるおそれがあるため、需給調整規制の廃止に向けて必要となる環境整備方策等について、9年4月に運輸政策審議会に諮問し、現在、同審議会自動車交通部会において審議が進められている。
 10年6月には、「貸切バスの需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について」答申され、事業参入について免許制から許可制に、運賃規制について認可制から届出制に、それぞれ移行するとともに、安全確保策を充実することとされた。今後、同答申を踏まえ、具体的措置を実施することとしている。
 また、乗合バスについて、中間報告がなされ、参入と退出の枠組みづくりでは、競争促進と生活交通維持との調和が必要であること、退出についても事前予告等の一定のルールが必要であること等について様々な論点の指摘がなされている。
 乗合バス、タクシーについては、10年度中に答申の予定である。

(2) バス

(3) タクシー事業の活性化

 需給調整規制廃止までの当面の措置として、9年度より需給調整基準の弾力化、ゾーン運賃制の導入等を行っている。
 事業者においては、サービスの向上や事業の活性化を図るため、ゾーンの上限以外の運賃の設定、初乗距離・初乗運賃をほぼ2分の1とする運賃の設定、女性タクシー運転者の積極的な採用、情報機器の活用等に取り組んでいる。10年7月には、秋田県大館市で初めて女性運転者だけのタクシー会社が事業を開始する等女性タクシー運転者数は、10年3月現在約8,259人、全タクシー運転者の約2%になっている。また、情報機器の高度化に伴い、無線やGPS(Grobal positioning system:衛星航法測位システム)等を活用したAVMシステム(Automatic vehicle monitoring system:車両位置等自動表示システム)の導入等が進められている。
 さらに、過疎地域や団地、深夜の都市等において運行されている乗合タクシーの普及を図っており、コース数では都市型は横這いであるが、過疎地型、団地型は増加傾向にあり、観光型や空港型も登場してきている。

(4) 高齢者・障害者等の輸送サービス

 今後の高齢化の進展、ノーマライゼーションの実現に向けて、高齢者・障害者等の移動を容易にするため、乗合バスへのノンステップバス・スロープ付バス・リフト付バスの普及、リフト付タクシーの普及、STSの調査・研究等に取り組んでいる(第1部第3章参照)。

(5) その他の輸送サービス

 レンタカーは、企業の利用や旅先等での個人利用のほか、自身で保有するよりも必要なときに借りる方が合理的と考えるユーザーの利用も増えてきている。自動車リースも、そのユーザーのほとんどが企業や自営業者であるが、近年、個人ユーザーも増加している。9年3月末現在で、レンタカーが約26万台、自動車リースが約198万台となるなど成長を続けている。
 また、近年、主に企業等との長期的な契約に基づき自家用自動車の運転、整備、燃料等の管理等を請け負う自家用自動車管理業や、飲酒等のため自己の車両を運転できなくなった者に代って運転を行う運転代行業が発展してきている。これらの事業については、利用者ニーズに的確に対応したサービスの提供、利用者保護、輸送の安全確保を図っていくため、関係行政機関とも連携しつつ所要の指導、助言、支援を行っている。


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