(1) 需給調整規制の廃止等
バス・タクシーの事業参入に際して行っている需給調整規制は、供給輸送力の安定的確保等に一定の効果が認められてきたが、一方で、意欲のある事業者の事業拡大や事業への新規参入を制限してきた面もある。また、バブル崩壊以降、輸送需要が低迷し、事業の活性化が求められている。このため、運輸省は、競争の促進により事業の効率化・活性化を図るため、目標期限を定めて需給調整規制を廃止することとした。
(2) バス
大都市、地方中核都市の過密な道路交通において、公共交通機関であるバスの利用促進は、自動車事故の防止や交通渋滞の緩和等に資するものであることから、運輸省としても積極的にその支援を行っており、バス利用促進等総合対策事業について、地方公共団体と協調しつつ補助を行っている。
具体的には、(1)バス運行を効率化するための情報通信システムを活用したバスロケーションシステム(停留所表示端末、バス車載器、中央処理装置等)の導入、利便性を高めるバスカードシステムの導入、バス停におけるシェルター、待合所の整備、ノンステップバスの導入、(2)マイカー等からバスへの転移を図るためのパークアンドバスライド、サイクルアンドバスライド等を推進するための施設整備、(3)中小型バスを用いて中心市街地と周辺住宅地を巡回するといった通勤・通学以外の輸送需要を担うコミュニティバスの導入などを支援している。
さらに、これらの施策を総合的に推進し、バスを中心とした安全で環境にやさしいまちづくりをめざす「オムニバスタウン構想」を9年度より警察庁及び建設省と連携して推進しており、9年12月に浜松市をオムニバスタウン第一号として指定し、諸施策を実施した。
また、関係省庁による「バス活性化連絡会」、各県毎の「バス活性化委員会」を通じ、警察、道路管理者、地方公共団体、バス事業者等の関係者と一体となって、オムニバスタウン構想の推進をはじめとしたバス利用促進等総合対策事業の推進、バス専用レーンの設置、違法駐車の排除等の走行環境改善の実現に向けた諸施策を推進している。〔2−6−2図〕
バス事業者においても、低廉な運賃を設定する等の取り組みにより、利用者のバス離れをくい止め、利用者増に転換しようとする経営努力が行われている。10年7月には静岡県浜松市のバス事業者が最低運賃を100円に値下げしたほか、埼玉県狭山市、群馬県前橋市等の事業者も試行的に最低運賃の割引を実施している。休日の同伴家族の運賃を割り引く環境定期券(エコ定期)も、9年9月に神奈川県の事業者が導入したのをはじめ、東京都、岩手県等の事業者で導入されている(第1部第2章参照)。
また、バス事業における女性運転者も年々増加し、10年7月には東京都渋谷区で初めて女性運転者だけのバス会社が事業を開始する等6年の125名から9年には317名と2.5倍となった。しかしながら、全運転者数に占める割合は9年度で0.3%に過ぎず、今後のさらなる進出が期待される。
(イ) 地域における足の確保
地方バスは、地域住民、特に学生、お年寄り等のいわゆる移動制約者にとって必要不可欠な生活交通であるが、過疎化の進行、マイカーの普及等の原因により利用者の減少傾向が続いており、路線の維持自体が困難であるところがあるなど厳しい経営状況におかれている。
このため、運輸省では地域住民の足を確保するため、事業者に対し、分社化、管理の受委託等をはじめとする経営効率化を指導するとともに、それらの経営努力を前提に所要の助成措置を講じている。9年度は生活路線維持費等補助制度により、地方公共団体と協調して、163事業者に対し、運行欠損等への補助を行った(国費総額88億円)。
また、輸送人員が極めて少なく、事業性のないものについては、路線の廃止を認めた上で、地方公共団体がなお存続が必要と判断した場合は、地方公共団体による廃止代替バスの運行あるいは地方公共団体からの民間事業者への委託による運行等が行われており、これらの運行維持に要する費用として地方公共団体が負担する額については、所要の地方交付税措置が講じられている。
さらに、地域の特性に応じて、スクールバスとの一体的運行、乗合タクシーの運行といった試みも行われているが、これらの取り組みを一層推奨し、効率のよい生活路線の維持を図っていく必要がある。
(3) タクシー事業の活性化
需給調整規制廃止までの当面の措置として、9年度より需給調整基準の弾力化、ゾーン運賃制の導入等を行っている。
事業者においては、サービスの向上や事業の活性化を図るため、ゾーンの上限以外の運賃の設定、初乗距離・初乗運賃をほぼ2分の1とする運賃の設定、女性タクシー運転者の積極的な採用、情報機器の活用等に取り組んでいる。10年7月には、秋田県大館市で初めて女性運転者だけのタクシー会社が事業を開始する等女性タクシー運転者数は、10年3月現在約8,259人、全タクシー運転者の約2%になっている。また、情報機器の高度化に伴い、無線やGPS(Grobal positioning system:衛星航法測位システム)等を活用したAVMシステム(Automatic vehicle monitoring system:車両位置等自動表示システム)の導入等が進められている。
さらに、過疎地域や団地、深夜の都市等において運行されている乗合タクシーの普及を図っており、コース数では都市型は横這いであるが、過疎地型、団地型は増加傾向にあり、観光型や空港型も登場してきている。
(4) 高齢者・障害者等の輸送サービス
今後の高齢化の進展、ノーマライゼーションの実現に向けて、高齢者・障害者等の移動を容易にするため、乗合バスへのノンステップバス・スロープ付バス・リフト付バスの普及、リフト付タクシーの普及、STSの調査・研究等に取り組んでいる(第1部第3章参照)。
(5) その他の輸送サービス
レンタカーは、企業の利用や旅先等での個人利用のほか、自身で保有するよりも必要なときに借りる方が合理的と考えるユーザーの利用も増えてきている。自動車リースも、そのユーザーのほとんどが企業や自営業者であるが、近年、個人ユーザーも増加している。9年3月末現在で、レンタカーが約26万台、自動車リースが約198万台となるなど成長を続けている。
また、近年、主に企業等との長期的な契約に基づき自家用自動車の運転、整備、燃料等の管理等を請け負う自家用自動車管理業や、飲酒等のため自己の車両を運転できなくなった者に代って運転を行う運転代行業が発展してきている。これらの事業については、利用者ニーズに的確に対応したサービスの提供、利用者保護、輸送の安全確保を図っていくため、関係行政機関とも連携しつつ所要の指導、助言、支援を行っている。
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