(1) 国際海上コンテナターミナルの拠点的整備
1960年代初頭に本格化した国際海上コンテナ輸送は、輸送効率の高さを背景に急激に増加し、現在では我が国の外貿定期貨物量の約9割、海上貿易額の約5割を占めるなど、国際物流の主力を担っている。近年では、産業構造の変化、国際水平分業の進展等を背景に、輸入コンテナ貨物量の増加が著しく、1994年に初めて輸出コンテナ貨物量を上回るに至り、なおその傾向は続いている〔2−8−4図〕。
一方、1980年代以降、近隣アジア諸国の急速な経済発展に伴い、国際海上コンテナ物流における近隣アジア地域の占める割合が大幅に増加しているなか、輸送効率のさらなる向上をめざし、コンテナ船の急速な大型化が進展する中で、欧米はもとより近隣アジア諸国の主要港においても、大水深コンテナターミナルの整備が積極的に進められている〔2−8−5表〕。
このため、水深15mの大水深コンテナターミナルを東京湾、伊勢湾、大阪湾等の中枢国際港湾において早急に整備することにより、我が国港湾の国際競争力を高めるとともに、スケールメリットの享受等による物流コストの削減を図ることとしている。
また、三大湾と北部九州以外の地域で生産・消費されるコンテナ貨物は日本全体の約3割であるが、これら地方圏の港湾で取り扱うコンテナ貨物は日本全国のわずか7%強でしかないことから、三大湾、北部九州地域への長距離国内輸送を強いられており、コスト高の一因となっている。
このため、一定量の国際海上コンテナ貨物の集積が期待できる全国8地域(北海道、日本海中部、東東北、北関東、駿河湾沿岸、中国、南九州、沖縄)の中核国際港湾において、欧米等と結ぶ基幹定期航路の展開も視野に入れた国際海上コンテナターミナルの拠点的整備を推進することにより、三大湾への貨物の過度の集中を緩和し、国内輸送距離の短縮による物流コストの低減を図ることとしている〔2−8−6図〕。
(2) 多目的国際ターミナルの拠点的整備
大型船が直接寄港できず他港からの迂回輸送を強いられ輸送コスト高となっている地域が多数存在することや、木材、石炭、飼料等のばら貨物は重量や容積が大きく国内輸送コストがかさむことから、整備に要する費用と物流コスト削減効果等を比較しつつ、一定量の貨物が集積する地域ごとに、近年の船舶の大型化に対応した大水深の多目的国際ターミナルを拠点的に整備する。
(3) 複合一貫輸送に対応した内貿ターミナルの拠点的整備
大量性に優れかつエネルギー効率の良い内航海運の特性を活かし、物流コストの削減と環境負荷の低減を図るため、関連する道路・鉄道網の整備といったハード面の施策や、内航海運の規制緩和等ソフト面の施策と連携し、海・陸の複合一貫輸送のメリットを享受できる「陸上輸送半日往復圏」(トラック輸送で1日2往復が可能となる圏域)の人口カバー率を現状の7割から21世紀初頭には9割に向上させるよう内貿ターミナルの拠点的配置、整備を推進する。
(4) 輸入対応型物流拠点の整備
増大する輸入コンテナ貨物等を円滑に処理していくため、中枢・中核国際港湾や輸入促進地域(FAZ)等において、高度で効率的な保管、荷捌き施設や流通加工、展示・販売等の複合的な機能を備えた総合輸入ターミナル等の物流拠点の整備を進める必要があり、民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法(民活法)等によりこれらの整備を支援している。10年には、民活法に基づき仙台港等2港で整備計画を認定し、現在全国16港で総合輸入ターミナルが供用または整備が進められている。
(5) コンテナターミナルの新しい整備・管理運営方式の導入
従来、コンテナターミナルは、(1)埠頭公社がターミナル全体(岸壁、背後用地、上物施設)を整備し、特定の海運事業者に専用貸付を行う「公社方式」、または、(2)国及び港湾管理者が岸壁を、港湾管理者が背後用地及び上物施設を整備し、港湾管理者が岸壁等全体を管理し、不特定な事業者に使用させる「公共方式」の2つの方式を基本として整備・管理が行われてきた。
近年、コンソーシアムによるターミナルの共同利用等外航船社の輸送体制の変化、コスト及びサービスの近隣アジア諸国港湾に対する遅れ等から両方式の課題が顕在化している。すなわち、「公社方式」では岸壁建設費を貸付料で回収しなければならないこと等から、貸付料が高くなるという課題があり、「公共方式」では背後用地を複数の港湾運送事業者に分割して使用させていることからターミナル全体の一体的利用ができないため、利用効率が低いとの課題がある。
この問題に対処するため、9年8月に港湾審議会に「今後のコンテナターミナルの整備及び管理運営のあり方」が諮問され、国及び港湾管理者が岸壁を、港湾管理者が背後用地を、公社が上物施設を整備し、公社がターミナルを一体として特定単一の借り主(ターミナルオペレーター)に貸し付ける「新方式」の導入についての答申が10年3月に出された。新方式は、岸壁を公共整備することにより利用料金の低廉化を図るとともに、特定単一のターミナルオペレーターが一体的に運営することにより利用効率の向上・利便性の確保を図るものであり、10年度は、横浜港、名古屋港及び神戸港において導入される予定である。