(1) 行政の取り組み
国内航空分野では、昭和61年以降、上述の主要路線の複数社化(ダブル・トリプルトラック化)を推進し、平成9年4月には路線参入の基準を廃止した結果、同年11月末時点では3社路線が25路線、2社路線が36路線となり、利用する航空会社の選択の幅が広がり、利用者利便の向上が図られた。
(イ) 運賃・料金に係る規制の見直し
6年12月から割引率5割までの営業政策的な割引運賃及び料金について認可制から届出制へと緩和され、これを踏まえ、7年5月から我が国ではじめて事前購入割引が導入された。また、普通運賃については、標準的な原価を最高額とする一定の幅の中で、航空会社が自主的に運賃を設定できる幅運賃制度が7年12月に導入され、これに基づく運賃設定が8年5月から実施されている。これにより、航空企業は多様な利用者ニーズに対応した運賃・料金を設定することが一層容易となり、現在、最大50%の事前購入割引、特定便割引等の多様な割引運賃や季節に応じた普通運賃が設定され、利用者利便の向上が図られている。
(2) 航空企業自身の取り組み
我が国航空企業自身の取り組みとしては、雇用形態や賃金体系の見直しによる人件費の圧縮、宣伝費その他の管理費の節減に加え、ウェットリース(注1)や航空貨物における運航委託の活用、コードシェアリング(注2)の活用による路線運営の改善等の運航費の節減を行いコスト削減を懸命に行っている。
また、輸送サービス面では、航空ネットワークの拡充や輸送力の増強のほか、FFP(常顧客優遇制度)の特典の拡大等各種の営業努力が行われている。運賃についても、国際航空では、PEX(個人回遊運賃)運賃の設定等により増収に取り組んでいるほか、国内航空でも上述の幅運賃制度の導入等に伴う新しい運賃制度・割引運賃の活用等により増収に取り組んでいる。
長期にわたり景気の低迷が続いているものの、これら輸送サービスや運賃面での取り組みの効果が輸送需要の増加傾向というかたちで顕在化してきている。しかしながら、航空企業にとっては、収入単価の減少のため、旅客数の増加の割りには収益増につながっておらず、経営面では厳しい状況が続いている。このため、航空企業においては、輸送サービスや運賃面のみならず、運航乗務員の人件費削減等の経営効率化の課題にも引き続き取り組んでいくことが求められている。
(注1)ウェットリース:乗員と機材をパッケージにして他の航空会社にリースする形態。
(注2)コードシェアリング:ある航空会社が自社の機材等を用いて運航する便に、当該会社を含む複数の航空会社がそれぞれ自社の便名を付し、その座席を分割して各社が自社便として販売する形態。
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