ナホトカ号事故等による大規模油流出事故を教訓として、運輸省では、船体構造に関するポートステートコントロールの強化等事故の再発防止策、油防除資機材の整備、大型の浚渫兼油回収船の建造、荒天対応型大型油回収装置等の研究開発等流出油防除対策、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)などを通じた国際協力体制の構築等の油防除のための施策を進めている。また、発生する海洋汚染等の低減を図るため、海洋環境の保全指導・監視取締りを実施している。
(1) 油流出事故の未然防止対策
ナホトカ号事故の主な原因が構造部材の衰耗による船体強度の著しい低下であったことに鑑み、老朽船による事故の再発を防止するため、我が国はIMOに対し船体構造の健全性に関して、旗国(船舶の登録国)の検査及びポートステートコントロール(寄港国による外国船舶の監督)の強化を提案しており、提案の実現に向けて努力しているところである。
(2) 油防除体制
海上保安庁では、「油汚染事故への準備及び対応のための国家的な緊急時計画」の改定等により、対応体制の整備を図るとともに、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の一部改正により、関係機関との連携の強化及び領海外で外国船舶から油の流出があった場合にも、海上保安庁長官が海上災害防止センターに対して防除措置の実施を指示することができることとした。また、外洋においても対応可能な大型油回収装置等、必要な油防除資機材の整備を図ったところである。さらに、海上保安庁では災害発生時に効果的な対策を講じるための情報事前管理として沿岸海域環境保全情報の整備を進めており、また、海上保安庁及び気象庁では漂流予測の高度化を進めている。
また、関門航路の浚渫工事に従事している大型浚渫船「海鵬丸」の代替船として、油回収機能を付加した大型浚渫兼油回収船を10年度からの3箇年で建造することとしている。
(3) 海洋環境の保全指導・監視取締り
海上保安庁は、海洋汚染が発生する可能性の高い海域に巡視船艇・航空機を重点的に配備するとともに、監視取締用資機材を活用するなどして、海洋環境保全のための監視取締りを実施しており、9年には海上環境関係法令違反を765件送致した。また、訪船等により有害液体物質等の排出事故防止、ビルジ等の適正処理等の指導を実施するとともに、講習会等を通じて海洋環境保全の重要性を呼びかけている。さらに、船舶の不法投棄については、「廃船指導票」の貼付により、原因者による自主的かつ円滑な処理の促進を図っている。
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