1 今後の交通流動予測−東京圏を例に
運輸政策審議会地域交通部会における2015年(平成27年)における東京圏の予測によれば、1995年(平成7年)に比べ、夜間人口は3.7%増の3,535万人、就業人口は現在とほぼ同数の1,801万人、就学人口は20.6%減の445万人と見込まれている。この結果、総交通流動は、1日当たり 8,925万人となり、1995年(平成7年)に比べ微増と見込まれ、うち鉄道流動は1995年(平成7年)に比べ1.5%増の1日当たり2,371万人と見込まれる。
2 鉄道の混雑緩和のための輸送力増強等
今後少子・高齢化の進展に伴い、全体の輸送人員の減少が見込まれる鉄道事業者もあるが、路線区間によっては、混雑緩和が進まないところも多く、今後とも、通勤・通学混雑緩和のために、既存ストックの一層の有効活用を図りつつ、都市鉄道の計画的な整備等が必要である。また、現行の混雑率の指標ではとらえきれないサービスの改善度を評価できる新たな指標を検討し、サービスの質的向上をめざすことも重要である。
東京圏については、10年11月、運輸政策審議会に対し「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備について」諮問を行い検討を進めており、2015年(平成27年)を目標年次とする新たな鉄道整備計画を策定することとしている。
(2)混雑緩和のための新たな取り組み事例
運輸省は11年6月に「都市鉄道調査委員会」を設置し、営団13号線と東急東横・目蒲線、京急空港線の接続等の大都市における10の先導的プロジェクトについて、整備効果、収支採算性、費用対効果、事業化に向けての課題等について、関係地方公共団体や鉄道事業者とともに調査を行い、具体的検討を行うこととしている。
(3)オフピーク通勤の推進
こうした輸送力増強対策とともに、輸送需要を分散させるためのソフト面の対策も必要であり、「快適通勤推進協議会」において、時差通勤やフレックスタイム制の導入などオフピーク通勤を推進するためのキャンペーン活動等を実施している。
今後の高齢化社会に適切に対応するため、バリアフリー化、シームレス化を推進していく必要がある。シームレス化とは、乗り継ぎ等の交通機関間の「継ぎ目」や交通ターミナル内の歩行、乗降に際しての「継ぎ目」等、移動に際してのあらゆる「継ぎ目」をハード、ソフトの両面にわたって解消することである。
こうしたバリアフリー化やシームレス化は、高齢者、障害者等の移動制約者の社会参加にも資するほか、ゆとりや快適性が重視されるこれからの時代においては、すべての利用者にとっても重要な課題であり、鉄道事業者としても、これら対策の充実強化を図る必要がある。
(2)交通施設バリアフリー化設備整備費補助制度の創設
運輸省は、10年度、交通施設バリアフリー化設備整備費補助制度を創設し、全国23の鉄軌道事業者の90の駅のバリアフリー化設備整備に対し、総額50億円の補助の交付決定を行った。
バリアフリー化の投資は、事業者から見るとコストに見合うような需要増に直ちに結びつかないが、社会的必要性は極めて高く、多数の利用客が利便性の向上を日々実感できるわけで、公的資金の投入効果は高く、今後とも公的支援措置の充実に努める必要がある。
(3)「やさしさ指標」の策定及びピクトグラムの標準化
「鉄道駅におけるあるべきバリアフリーの姿」を検討し、バリアフリー施設整備の目標基準である「やさしさ指標」を策定し、鉄道事業者のバリアフリー化対策を促すため、10年4月、「公共交通ターミナルのやさしさ指標検討委員会」を設置した。
また、利用者にわかりやすい交通情報の提供といった観点から、案内用図記号(ピクトグラム)の標準化を進めるため、「一般案内用図記号検討委員会」を設置した。
(4)路面電車のLRT(ライトレール・トランジット)化
LRTは新しいタイプの路面電車であり、@都市内の交通渋滞の緩和に資する、A車両が低床式であるため高齢者にも利用しやすい、B 騒音・振動が少ない、C大規模な施設を要しない、といった特性を持っており、我が国においても導入例が出ている。運輸省としても、鉄道軌道近代化施設整備費補助制度を通じて車両購入費に対する補助を行っている。
(5)鉄道事業法に基づく「乗継円滑化措置」の創設
11年5月の鉄道事業法の一部改正により「乗継円滑化措置」が設けられ、12年春からは鉄道事業者に対して乗継円滑化の努力義務等が課せられ、運輸大臣の改善勧告に従わない場合、社名等が公表されることとなった。また、乗継円滑化事業の促進を図るために、そのための駅の大規模改良について固定資産税及び都市計画税の軽減措置が講じられることとなった。
運輸事業に対する規制緩和の流れの中で事業者の創意工夫により様々なニューサービスが展開されており、利用者ニーズに沿ったサービスとして好評なものが多い。
武蔵野市の「ムーバス」、金沢市の「ふらっとバス」等、高齢者・身障者の社会参加等のニーズに応えるコミュニティバスが全国各地で導入されている。その多くは、採算性の問題を抱え、地元地方公共団体の支援等により路線を維持しているケースが大半であるが、先進事例に学びながら地域の関係者での創意工夫が望まれる。運輸省としても、バス利用促進等総合対策事業の一環として、こうしたコミュニティバスの導入に対する支援を行っている。このほか、「100円循環バス」の運行、共通プリペイドカードの発行、自社バス路線網を自由に利用できる高齢者向けの割引定期券の発行等の新しい動きが相次いでいる。
(2)タクシー会社等のニューサービス
高齢化社会や福祉重視型社会の進展に伴い、個別需要に即応できるタクシーは重要な役割を果たすことが期待される。これまでの観光タクシーや乗合タクシーといったサービスに加え、福祉タクシーや介護タクシーが増加傾向にある。
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