第9節 街づくりと連携した総合的な都市交通政策の展開


1 周辺整備と一体となった駅や交通ターミナルの整備

 公共交通機関の利便性・快適性を向上させるためには、各モードにおいて、車両、施設、サービス等の改善を図るとともに、これらモードの結節点となる駅や交通ターミナルにおいて、周辺整備と一体となった拠点機能の向上を図り、全体として円滑な移動を確保することが重要である。
 そのためには、都市交通圏ごとに市町村が主体となって、交通事業者等の関係者の連携の下で、具体的な施策を総合的に講じていくことが効果的である。運輸省としても、11年度より、市町村によるこのような取り組みを支援するため、都市交通総合改善事業を実施している。
 また、駅構造を改善する事業であって、市街地再開発事業等の都市側の事業が周辺で一体的に行われるものについて、鉄道駅総合改善事業費補助制度に基づき、国及び地方公共団体が助成を行うことにより、鉄道駅の利便性向上等の機能強化を図っている。

2 連続立体交差事業の推進

 連続立体交差化は、これにより複数の踏切が除かれ、交通渋滞や踏切事故の危険性が解消されて都市交通が円滑化されるとともに、鉄道で分断されていた市街地の一体化、高架下空間の活用による公共施設の充実等の街づくりの面でも大きな効果があり、今後とも推進していく必要がある。

3 駅や交通ターミナルの生活機能の充実


4 バスを活用した街づくり

 バスの利用促進等による自家用車と公共交通機関のバランスのとれた交通体系の確立は、自動車交通量の抑制、交通の円滑化等を通じて安全に配慮した交通システムの形成に資することから、運輸省としても積極的に支援しており、バス利用促進等総合対策事業に対して、地方公共団体と協調して補助している。また、バスの社会的意義を最大限に発揮する街づくりをめざす「オムニバスタウン構想」を警察庁、建設省と連携して推進するほか、各都道府県ごとの「バス活性化委員会」等を通じ、関係者と一体となってバスの走行環境改善のための諸施策を推進している。
 さらに、バスを活用した街づくりという観点からは、中心市街地の活性化、バリアフリー化推進等による高齢者に優しい街づくり、都市内観光の振興といった視点も重要である。

5 ウォーターフロント開発と街づくりとの連携

 運輸省では、全国の港湾において、親しみやすいウォーターフロント空間の形成をめざし、港湾緑地、マリーナ、交流・賑わい施設等の整備を民活事業や公共事業等を相互に連携させつつ総合的に推進している。具体的には、「港湾緑地一体整備促進事業」、「歴史的港湾環境創造事業」、「みなとづくりとまちづくりの連携事業」等を推進している。
 また、レクリェーション需要に対応するとともに、海とまちの接点という立地をいかした地域社会の交流拠点として、マリーナ、海浜等の整備を進めている。

6 空港整備と街づくりとの連携

 最近、空港本来の目的とは別に、空港へのアクセス向上を背景に観光スポットとして人気の高まる空港が出てきている。運輸省としては、空港周辺の移転跡地の有効利用として親空港親水公園(エアフロントオアシス)整備を推進し、空港と周辺地域との調和のとれた街づくりをめざしている。さらに、最近では空港を核として地域開発を図る動きも活発化している。

7 中心市街地の活性化と公共交通

 地方都市においては、モータリゼーションの進行とともに駐車場を備えた郊外店舗に賑わいが移り、中心市街地の衰退が見られる。こうした状況を改善し、都市のアイデンティティと魅力を回復し、地域住民の生活環境の向上を図るため、10年7月、中心市街地活性化法が施行された。
同法において、公共交通機関の利用者利便の増進は、主要施策のひとつとして位置づけられており、運輸省は、基本計画に定められた当該施策について積極的に支援することとしている。

8 歩道・自転車道の整備等

 自宅から公共交通機関へアクセスする手段としては、徒歩又は自転車がほとんどであるが、自動車との混在道路では危険を感ずることが多く、実際、交通事故死者数の4割が歩行中及び自転車乗車中である。こうした交通事故の減少と公共交通機関の利用促進のためにも、歩道の整備及び自転車走行のための空間確保に向けての努力が期待される。
 駅や交通ターミナルに十分な駐輪場が確保されていないため、路上駐輪となり、通行上の障害や街の景観を損なう結果となっている。
 今後は、放置自転車に対する取締的な視点だけではなく、公共交通機関利用者のドア・ツウ・ドアの円滑な移動の確保の視点から、地域の実情に合った利用しやすい駐輪システムを工夫していく必要がある。


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