1 活力ある海上交通に向けての取り組み
我が国の海運に関する法制度、施策は、戦後その目的が主に輸送サービスの安定供給の確保におかれていた。国内旅客船及び港湾運送の需給調整規制、内航海運の船腹調整事業、日本籍船の維持・確保政策、外航海運協定制度は、この目的を達成するために効率的に機能してきたといえる。しかしながら、戦後半世紀を経て、各事業者の創意や経営努力を生かし、サービスの低廉化・高度化・多様化を実現するために、市場原理の積極的導入という政策転換が行われた。このことは海運分野においても例外ではなく、より競争的で事業者の自由な活動を認める制度に転換することとなった。また、既に自由な競争が展開されている外航海運では日本籍船の競争力強化を更に徹底する必要に迫られている。
本年6月には、海上運送法の一部を改正し、一般旅客定期航路事業への参入について免許制を許可制に改め需給調整規制を廃止するほか、運賃設定等を認可制から届出制に改めることとした。同時に、離島等の生活航路を維持するための措置を整備するとともに、人の運送をする全ての船舶運航事業に安全規制・利用者保護規制を適用することとした。
○港湾運送事業の規制緩和に向けた取り組み
港湾運送事業の規制のあり方についても、本年6月に、規制緩和の具体的実施及びそれに伴う港湾運送安定化方策等の具体的内容を明らかにした最終答申がとりまとめられた。具体的には、混乱を防止するため段階的に規制緩和を進める必要があり、主要9港において、平成12年内に事業免許制を許可制に、料金認可制を届出制にすべきであること等が指摘されている。今後は、これらの平成12年内の実施を目指して港湾運送事業法の改正等所要の措置を講じていく。
○内航海運暫定措置事業の進展
一方、内航海運船腹調整事業解消のためのソフトランディング措置として昨年5月に導入された内航海運暫定措置事業は、同時に過剰船腹処理のためのインセンティブとして機能してきており、本年5月末時点における解撤等交付金申請に係る認定状況は、80.3万トンと当初想定していた62万トンを大きく上回っている。今後、内航海運暫定措置事業の進展により、できるだけ早期に過剰船腹が解消されることが望まれる。
○外航海運の国際競争力の確保と協定審査手続の整備
外航海運において、昨年の船舶職員法の一部改正による外国資格受有者に対する承認制度の創設を受けて、本年5月より国際船舶における日本人船長・機関長2名配乗体制が導入された。これにより我が国外航海運の国際競争力が確保され、日本籍船の減少に歯止めがかかることが期待されている。
また、外航海運サービスの安定供給に不可欠な外航海運協定の独禁法適用除外制度を維持しつつも、個々の協定の内容が不当に競争制限的であると認められる場合には運輸大臣が変更・禁止命令を発出する等の審査手続を整備した。
我が国の大手・中手造船業は、現在のところ外航船等の大型船の受注・建造量において世界第1位である。しかしながら、今後の建造需要低迷の兆しが見られる中、韓国の設備拡張等による船価の低迷も継続する見通しであることから、2000年代の造船業は生き残りを賭けた激しい国際競争の時代となることが予想されている。
そのため、経営資源の集約等により、競争力の向上を図ることが喫緊の課題である。
一方、中小造船業は、内航船の建造需要の低迷によりここ数年極めて厳しい経営環境にあるため、金融・税制措置、雇用安定対策、造船業基盤整備事業協会による土地・設備の買収等、各種支援措置を講じているところである。
〇舶用工業の現状
舶用工業においては、特定産業集積活性化法や産業再生法等に基づく支援措置等を活用し、これら造船関連産業の活性化等を図るとともに、造船関連産業全体を視野にいれた高度情報化体制の構築に向け、総合的な連携の促進を図っている。
また、内航船建造需要減少の影響を受けている舶用工業事業者に対して、信用補完措置の強化や雇用安定対策を講じることにより、これら事業者の経営安定等に取り組んでいるところである。

外航海運については国際船舶制度の拡充に向けた施策として、日本人の若年船員を対象とした実践的な教育訓練や外国資格受有者が船舶職員として船舶に乗り組める制度の円滑な施行を図るとともに、高齢化の著しい内航海運における若年船員確保対策、本四架橋の供用等に伴う離職船員対策等を推進している。
また、船員教育体制の整備充実、船員の労働時間の短縮及び船員災害防止対策の推進等を図っている。