2 旅客輸送


(1) 輸送網の現状

  昭和38年度における旅客輸送需要は 〔I−(II)−3表〕のとおり,35年度に比較して,輸送人員では1.47倍,輸送人キロでは1.61倍と増加している。これに対応して,輸送力も 〔I−(II)−9表〕のとおり,著しく増加している。以下,乗合バス,貸切バス,ハイヤータクシーおよび自家用自動車の別にその現状をみることとする。

 イ 乗合バス

      免許キロは,毎年4000キロから6000キロ程度増加しているが,その増加率は,車両数および走行キロにくらべきわめて小さい。これは,乗合バスへの需要のある地域のほとんどに路線が行きわたり,免許路線の増加は,つぎにのべる長距離バスに関するものおよび高速自動車道等の新たな道路の完成に伴うものにほとんどかぎられてきたためである。
      一方,昭和38年度末における車両数は35年度末の1.26倍,38年度の走行キロは35年度の1.28倍となつており,既免許路線における運行系統や運行回数の増加が著しいことを示している。
      事業者数は,35年度末が347,38年度末が354とわずかに増加している。
      乗合バスは,主として鉄道に接続する末端輸送,地域内輸送の機能をはたしているものであるが,最近における道路整備の進捗に伴い,鉄道と平行し,又は鉄道に対し短縮連絡をはかる長距離の乗合バスが運行されるようになつた。
      この長距離バスの現状をみると,38年3月末において,長距離バス(運行系統が100キロ以上のもの)を運行している事業者は76業者,運行系統は209系統である。なお33年度からの,長距離バスの運行系統数の推移は 〔I−(II)−10表〕のとおりである。
      これらの長距離バスは,都市間輸送の急行便が最も多く,そのほかにローカル的な短区間の輸送需要に応じることを目的としながらも長距離にわたる運行をしているもの,都市と観光地との間の直通輸送需要に応ずることを目的とするもの(定期観光系統)がある。
      長距離バスの多くは鉄道と平行路線をとつており,運賃は国鉄の2等運賃を若干上まわる程度の額が設定されているが,平均時速は約30キロメートルであり,最近における鉄道の電化,デイーゼル化によるスピードアップと快適度の増進により相当の影響を受けている。
      長距離バスは,運賃,快適度,所要時間,運行時刻,乗換えの有無などの諸要素の総合において鉄道との競争力が決定されるものであり,その発展のためには道路の整備,車両の性能の改善によるスピードアップと快適度の増進が不可欠の要素である。しかし,長距離バスは宿命的に固定された鉄道に対し,道路の整備拡充の進捗状況に即応した機動性をもつており,道路のあるところただちに輸送需要に応じうる強みをもつているから,鉄道との関係において種々の問題をはらみながらも近年における急速な道路整備の進捗状況(とくに高速自動道の建設)からみて,依然増勢をたどるものと思われる。

 ロ 貸切バス

      車両数及び走行キロは,輸送需要の増加を上回つて増加している。事業者数は,35年度末が442,38年度末が521とかなり増加した。

 ハ ハイヤー・タクシー

      輸送需要の著しい増加に伴い,昭和38年度末の車両数は,35年度末の1.61倍,38年度の走行キロは,35年度の1.93倍となつている。事業者数は,35年度末の6666から38年度末には1万2590と1.89倍になつたが,これは個人タクシーの増加が著しいのが大きな原因となつている。

 ニ 自家用乗用車

      38年度末の車両数は,35年度末の2.34倍,38年度の走行キロは,35年度の2.92倍と著しく増加している。なかでも,乗用車の車両数の増加は,目ざましく,35年度末から38年度末までに増加した66万5155両の旅客自動車のうち,89%にあたる59万1947両は,自家用乗用車である。

(2) 高速道路における輸送

  わが国においても高速道路の建設がその緒についたことは貨物輸送の項でのべたところであるが,旅客輸送においても高速道路を利用することによつて高速,快適な輸送が可能となる。
  したがつて乗合バスについては,たとえば名神高速道路の完成により名古屋,大阪間といつた長距離系統が新設されて鉄道と比肩しうるようなサービスを提供することになり,また貸切バスの長距離輸送はますます盛んになり,乗用車についても地域間輸送が活発化するものと思われる。


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