3 郊外部における輸送
大都市に集中する人口のほとんどは,大都市周辺部に定着する傾向にあり,その急激な増加に対して交通施設の整備が伴わないこともあつて,住民の足の確保をめぐり新たな問題が生じている。
大都市郊外部における住宅団地の造成は,近年目覚ましいものがあるが,これら住宅団地は用地取得の困難さからますます郊外に立地し,また既設鉄道駅から相当離れた地区に造成される場合が多く,団地と既設鉄道駅とを結ぶ交通手段の確保に加えて団地の増加によつて急増した既設線の輸送需要をどうさばくかという問題を生じている。このため,大規模団地への鉄道の乗入れ新線の建設,バス輸送の確保,駅前広場の整備,既設鉄道線の線増工事等が強く要請されている。
しかし,ここに発生する交通需要は,朝夕のラツシユ時間帯への集中率が高く,しかも片道輸送となるため輸送効率がきわめて悪く,これら大規模投資に伴う利子負担をはじめとする諸経費を収入でまかないきれない場合が多いため,事業者にとつて魅力の薄いものとなり,これらの投資がなされにくい事情にある。また,これら住宅団地が建設される地区は,道路が未整備のところが多く,駅前広場も狭隘であつて,バスの運行を妨げている面もある。
大都市郊外部におけるバス輸送については,さらに,終車時刻が早すぎるため終車後の足の確保が問題となつている。大阪陸運局が46年1月に大阪高槻地区の団地居住通勤者に対して実施したアンケートの結果をみても,毎日の通勤で不便を感じている事項のうち「終バス後タクシーがひろえない」が全回答者の66%,「バスが早く終る」が57%に達し,終バス希望延長時間については,10時30分までが29%,11時までの累計が65%,11時30分までの累計が91%となつており,バスの運行時間の延長に対する希望がきわめて強いことを示している。また,深夜バスについて特別運賃を設定することについては,「やむを得ない」とする者が68%,「運賃は従来どおり」とする者が26%,「特別運賃を設定するならばタクシーを利用する」が4%となつている。
終バス後の郊外駅と団地を結ぶ輸送対策として,運輸省は,@主要路線は原則として終電車にバスを接続させる。Aその場台,夜11時までは,昼間と同じ普通運賃とする。B夜11時以後終電車までの時間帯は普通運賃で採算が合わなければ地元の利用者側と十分話合つて特別料金を定める。その際,路線バスの定期券をもつているものは,運賃を減額するなどの対策を打ち出した。
今後,生活様式の多様化と,経済活動の活発牝から大都市住民の活動時間も深夜に及ぶ傾向が進むなかで,この問題もますます拡大することが予想される。
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