2 海運市況


(1) タンカー市況

  タンカー市況は48年10月にはワールドスケール389.7(ノルウェージャン・シッピング・ニュース調べ)という史上空前の高値となったが,同年11月の石油危機以後急速に低下し,50年4月には16.1(15万D/W以上)と史上最低の冷え込みとなり,以後も20〜40程度を低迷し続けている 総論 〔2−5−6図〕
  49年の世界の石油消費量は 〔II−(I)−2表〕のとおり主要先進国で軒並み減少を示した。この結果世界海上輸送量も,備蓄増大の傾向によりマイナスは避け得たが,その伸びは 〔II−(I)−1表〕のとおりトン・マイルベースで前年比1.8%増に過ぎず,これまで逐年大幅な増加を示してきた石油輸送量の傾向が大きく変った。

  一方,この間の世界タンカー船腹量は,市況好調期に発注された船舶の就航が相次ぎ, 〔II−(I)−3表〕のとおり前年比12.4%増とここ数年来最高の伸びを示した。この結果49年の船腹需給は,前年と一変して一気に供給過剰となり,こうした船腹需給のアンバランスが市況を引き下げる大きな要因となった。

  こうした状況を反映して 〔II−(I)−4表〕のとおり50年6月末には少くみても,世界タンカー船腹量の11%にあたる2,700万重量トン余りのタンカーが係船されていると見られるに至っている。さらに今後についても,世界の石油輸送需要の伸びはきわめて小さいと見られるのに対し,既に発注済みのタンカーが新たに大量に就航してくることが予想され,タンカーの船腹過剰は近い将来に解消に向うことは考えられず,タンカー不況の長期化が憂慮されている。

(2) 不定期船市況

  不定期船市況は,48年の好況に引き続き,49年夏頃までは好調に推移したが,その後下降に転じ,さらに50年に入ってからは一層悪化し不況の局面を迎えることとなったが,49年を通じてみれば高水準であった。
  乾貨物の海上輸送量は,49年は鉄鉱石,石炭がそれぞれトン・マイルベースで前年比7.3%,8.1%の伸びをみせ,全体でも前年比8.6%の伸びとなった。これは基礎資材の世界的な不足のため,その原料の輸入と製品の輸出が盛んであったことが大きな要因であった。このほか自動車,肥料等の輸送も活況であり,穀物も48年に比べ減少したものの47年以前に比しかなりの輸送量があった。こうした需要サイドの要因に加え,49年の不定期船の船腹量の増加が比較的小さかったこと,及び一部の外国港での滞船による船舶の回転率の低下等の供給サイドの要因が好市況を支えたとみることができる。
  49年秋以降には,鉱油船が逐次不定期船市場に進出したため,鉄鋼生産の操業の鈍化と相まって,不定期船市況は急速に軟化し始めた。今後はさらに発注中のタンカーがバルクキャリアーに切り換えて建造される事例も増える傾向にあるので,市況の回復は難しいと見られているが,最近伝えられているソ連の穀物大量輸入が,こうした市況をどこまで支えるか注目される。


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