2 地方における交通対策


  三大都市圏以外の地域の人口の推移をみると,30年代後半から激化していた大都市圏への人口流出は,40年代に入ってスローダウンしており,地方の内部では県庁所在地及びこれに準ずる規模の都市の人口が全国平均を上回って増加している。また,急速な流出を続けていた過疎地域の人口は依然として減少しているが,その減少率は近年次第に鈍化してきている。
  まず,人口の増加している地方都市においては,輸送需要の増大とモータリゼイションの進展に,都市構造上の問題も加わって,40年代に入ると道路交通の混雑が激しくなっている。そこで法域ブロックの中核都市等入口規模の大きい都市では,地下鉄,モノレール等の大量公共輸送機関の導入が検討されるようになり,これらの都市のうち,46年に札幌で地下鉄が営業を開始したほか,他の数都市でも地下鉄,モノレール等の建設又は導入計画が進められている。また,バスは,これら軌道系の大量輸送機関を補完する輸送機関として,又は,地方都市の主要な公共輸送機関として重要な役割を果しており,その効率的な運行が期待されているが,大都市と同様に交通渋滞による運行効率の低下に悩まされている。したがって,円滑な都市機能を維持するために,必要に応じて,大都市について述べたようなバスの機能の確保とサービスの改善のための措置を講ずることが必要である。
  一方,地方都市以外の地域においては、過疎化の進行により人口が減少し,加えて自家用乗用車が急速に普及したため,輸送需要が一層希薄になり,バス,鉄道等の公共輸送機関に大きな影響を与えている。
   〔2−3−23図〕は,三大都市圏以外の地域における旅客輸送人員の輸送機関別分担率の推移を示したものである。40年度には輸送人員の53.7%を分損していたバスは49年度には28.7%に減少し,鉄道も分担率が半減し,代って40年度の分担率は4.8%にすぎなかった自家用乗用車が急速に伸びて49年度には39.0%を分担している。その過程をたどると,まず鉄道がバスを含む道路交通との競争から後退し,次いで乗合バスも自家用乗用車の普及に押されて輸送量が減少してきた。

  このような利用者の減少と人件費を始めとする輸送コストの上昇により,地方における鉄道及びバスの経営は年々圧迫を受けている。こうした状況に対処して,鉄道及びバス事業者は,経費の節約,省力化その他経営全般にわたって合理化を徹底して行うとともに,利用者負担の原則にたってコストに見合った運賃を収受するよう努力してきた。しかし,輸送需要量の絶対的な不足や運賃改定の際の自家用乗用車への転移などもあってこれらの努力には自ら限界があり,経営の悪化により路線の休廃止等のやむなきに至ったものもある 〔2−3−24図〕

  こうした地方交通における輸送構造の変化に対処して,地域住民の生活上必要不可欠な公共輸送サービスを確保するために,国は次のような施策を講じている。
  中小民鉄線については,地域交通の中心として必要な路線であってその経営の維持が特に困難なものについて,当該路線の経常損失額を国と地方公共団体が折半して補助している 〔2−3−25図〕
  また,地域住民の生活に不可欠な地方バス路線についても,その運行を維持するため,都道府県が地方バス路線の運行維持費及びバス車両購入費補助,廃止路線代替バス購入費補助等を行う場合に,都道府県に対し,その半額を補助することとしている 〔2−3−25図〕

  輸送需要の少ない過疎地域において,ミニマムとしての輸送を確保するためには自動車が主たる交通手段となるが,このため,今後とも,所要の道路整備を行なうとともに,需要量に応じバス路線の確保や運行改善,デマンドバス・タクシーの活用を図ることが必要である。また,地方における公共輸送サービスの確保については,その利用範囲が主として当該地域の住民に限られるものであり,地域住民の日常生活の足の確保の問題であることにかんがみ,国は,関係地方公共団体と密接に協力して,これらの解決を図っていくこととしている。
  なお,国鉄の地方交通線については,その運営による欠損が巨額となり,国鉄が企業体として独立採算性を志向した自立経営を行う上で障害となっているので,自立経営上の負担の程度と地域住民の利便とを十分に勘案しつつ,国の積極的な支援の下に国鉄の責任においてその取扱いを検討することとなっている。


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