4 高エネルギー価格時代における交通産業


  エネルギー価格の相対的低下の時代,特に原油価格がバーレル当り2ドル以下の時代には,交通産業においても,エネルギー効率の改善ということは今日ほど重要な命題とはなっていなかった。しかし,テヘラン協定(1971年)以後,産油諸国の政策の動向とあいまって,エネルギー供給の見通しの不安は次第に原油価格の上昇という形で表われ,石油危機を迎えることとなった。
  石油危機以降は,エネルギー価格が著しく上昇し,我が国経済社会は省エネルギーに努めざるをえなくなった。
  原粗油の輸入価格(CIF)の推移をみると,昭和48年9月の5,778円/Klが50年1月には22,428円/Klと約4倍の高騰をみせ 〔2−1−32図〕,実質GNPの減少とともに,交通産業においても経営を圧迫する大きな要因となった。その後国際通貨事情から,円高の影響もあり,53年には原粗油価格の低下をみ,国内のエネルギー価格もガソリンをはじめとして低下し,特にガソリンの小売価格,軽油の卸売価格,天然及び石油ガスの卸売価格は50年の水準を下回るものとなった。しかし,1978年末のイランの政治的混乱を機に再び原粗油輸入価格は上昇をはじめ,国内石油製品等の価格も高騰し,遂に79年6月ジュネーヴで開催されたOPEC総会における原油価格の引上措置によりバーレル当り20ドル時代を迎えるに至った。

  エネルギー価格が上昇した場合に産業においてどの程度コストがあがるかをみるため,原油価格が10%上昇した場合における部門別生産コストの上昇率を,昭和50年産業連関表をもとに試算 〔2−1−33図〕してみると,電力,都市ガスといったエネルギー部門とともに,自家用輸送部門へ与える影響が大きく,しかも石油製品の値上げによる直接的影響が大きいという結果がでた。これは自家用輸送におけるエネルギー費用のウエイトが高いこと,逆にいえば人件費をはじめとした非エネルギー費用が営業用輸送部門に比べて低いことのあらわれである。営業用輸送部門では沿海内水面輸送への影響が相対的に大きく,しかも石油製品の値上げによる直接的影響が大きいという結果がでた。沿海内水面輸送はエネルギー価格の上昇の影響を強く受けやすい構造となっていることがわかる。 〔2−1−34図〕は同じく原油価格10%上昇による運輸部門への影響を生産コスト上昇率でみたものであるが,昭和45年から50年までの変化で比較してみると,沿海内水面輸送,外洋輸送,航空輸送においては原油価格の上昇の与える影響が大きくなっている。これに対して道路貨物輸送をはじめとする陸上運輸部門においては,45年より50年のほうが原油価格の上昇の与える影響がより小さくなってきている。

  また, 〔1−5−6図〕は53年度における各交通産業における動力・燃料費の経費に占める割合をみたものであり,航空運送業,外航海運業,区域トラック事業等における割合が高いことがわかる。
  交通産業以外の分野における売上高に対する石油・電力費をみると,繊維では石油7.7%,電力1.5%,化学15.1%,2.3%,鉄鋼2.8%,4.6%,自動車0.5%,0.8%(日経会社情報79年夏号石油・電力消費比率による。)となっている。
   〔2−1−35表〕はエネルギー価格の指数の推移をみたものであるが,48年以降エネルギー価格は高騰したものの,53年度においては下降気味にあった。しかし,同年末のイランの政治的混乱以降,我が国国内のエネルギー価格も再び上昇をはじめた。この影響は交通産業にも現われはじめており,燃料油の入手が難しくなる傾向にあり,交通産業における燃料油の入手単価は各燃料油とも上算している。


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