4 高エネルギー価格時代における交通産業
エネルギー価格の相対的低下の時代,特に原油価格がバーレル当り2ドル以下の時代には,交通産業においても,エネルギー効率の改善ということは今日ほど重要な命題とはなっていなかった。しかし,テヘラン協定(1971年)以後,産油諸国の政策の動向とあいまって,エネルギー供給の見通しの不安は次第に原油価格の上昇という形で表われ,石油危機を迎えることとなった。
エネルギー価格が上昇した場合に産業においてどの程度コストがあがるかをみるため,原油価格が10%上昇した場合における部門別生産コストの上昇率を,昭和50年産業連関表をもとに試算 〔2−1−33図〕してみると,電力,都市ガスといったエネルギー部門とともに,自家用輸送部門へ与える影響が大きく,しかも石油製品の値上げによる直接的影響が大きいという結果がでた。これは自家用輸送におけるエネルギー費用のウエイトが高いこと,逆にいえば人件費をはじめとした非エネルギー費用が営業用輸送部門に比べて低いことのあらわれである。営業用輸送部門では沿海内水面輸送への影響が相対的に大きく,しかも石油製品の値上げによる直接的影響が大きいという結果がでた。沿海内水面輸送はエネルギー価格の上昇の影響を強く受けやすい構造となっていることがわかる。 〔2−1−34図〕は同じく原油価格10%上昇による運輸部門への影響を生産コスト上昇率でみたものであるが,昭和45年から50年までの変化で比較してみると,沿海内水面輸送,外洋輸送,航空輸送においては原油価格の上昇の与える影響が大きくなっている。これに対して道路貨物輸送をはじめとする陸上運輸部門においては,45年より50年のほうが原油価格の上昇の与える影響がより小さくなってきている。
また, 〔1−5−6図〕は53年度における各交通産業における動力・燃料費の経費に占める割合をみたものであり,航空運送業,外航海運業,区域トラック事業等における割合が高いことがわかる。
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