5 経営基盤の確立


(1) 費用の節減と需要の開拓

  運輸事業の営業費用の増大の大きな要因としては,人件費や燃料費の増大などがあげられる 〔1−3−8図〕。また,運輸事業は一般に自己資本が小さく利子負担が大きい等の経営の不安定要因を有している。一方,輸送需要は,55,56年度と伸び悩んでおり,輸送原価は年々上昇している 〔1−3−9図〕。このような状況を踏まえ,輸送原価の縮減の観点から,従来より輸送手段の大型化,各種作業の合理化や機械化等による輸送の効率化,省力化など経営の全般にわたって合理化の徹底に努力してきたが,この結果,例えば乗合バスのワンマン化のように既に9割を超えるなど今後の合理化が困難な面もでてきている。しかし,依然として,企業形態別,企業別,地域別にみると経営状況には差がみられ改善の余地がないとはいえない 〔1−3−10図〕, 〔1−3−11図〕

  今後,収支の改善,健全な経営の確保を図る一方,各事業主体において,輸送サービスの質的充実が一層重要となり,また,輸送需要の伸びに多くを期待できないことから,輸送・事業の一層の省力化,効率化,合理化による経営体質の強化,事業基盤の充実が急務となっている。

(2) 運賃と需要の動向

  運輸事業の経営は,能率的な経営を前提とする適正な原価に見合った運賃・料金収入により維持されることが原則となっている。したがって,各企業の合理化努力を勘案しつつ,生産性向上によりなお吸収しきれない人件費,物件費等の費用については運賃の見直しによりカバーしている。
  しかし,マイカーの普及や各種公共輸送機関の整備による利用輸送機関の選択幅の広がりに加え,近年利用者は価格に対し敏感になっており,運賃引上げは大幅な輸送需要の減退を惹起するおそれもある。
  最近の航空運送業における輸送需要と収支の関係をみることとする。費用の面では,近年の燃料費の高騰や高値での推移,施設使用料等の増大などにより,座席キロ当たり営業費用は大型機材の導入などによる節減が図られたものの総じて上昇の途をたどってきた。これに対して運賃の引上げは最近の主なものとして49年9月(国内3社,平均29.3%),55年3月(国内5社,平均23.8%),57年1月(国内4社,平均13.5%)に実施されており,このため,旅客人キロ当たり旅客収入は49年度,55年度に大幅な増加をみている 〔1−3−12図〕。この結果,49年9月の引上げに対して50年度は利用率が低下したものの黒字が確保されたが,55年3月の引上げに対しては,個人消費支出の停滞の下で利用人員や利用率の低下を招いたこともあり,55年度に黒字を計上するに至らなかった 〔1−3−13図〕

(3) 地域交通の維持の整備

  地域交通対策の推進,運輸関係社会資本の整備等の観点から,過疎地域など収益性の低い地域での輸送サービスの維持や膨大な施設建設費を要する大都市交通の整備などのため種々の助成措置が講じられている 〔1−3−16図〕


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