3 地方空港の整備


(1) 地方空港の現状

  幹線交通体系の一つである航空路線網は,基幹空港と地方空港を結ぶ形で形成されている。最大の特色は,東京,大阪を中心として地方空港との間に放射状の航空路網が形成されている点であるが,このほか主要地方都市を背後に控える千歳,名古屋,福岡,那覇空港を核として独自の航空路線網が形成されている。また,島国である我が国は,離島が多く,離島・本土間及び離島相互間において,比較的路線距離の短い航空路線網を有している。
  成田,羽田,大阪の基幹空港を除いたいわゆる地方空港は74あり,このうち離島空港30と専ら小型機の離着陸に使用されている調布,八尾,弟子屈の3空港を除いた41空港のうち,ジェット機の就航できる地方空港数は29である。
  地方空港の管理者別には,国の管理する飛行場20,地方公共団体の管理する飛行場48,防衛庁との共用飛行場5,米軍との共用飛行場1となっている。
  空港は幹線交通体系の一つとして,地域間格差の是正,地域社会の活性化等による国土の均衡ある発展という観点から重要な役割を担っており,時間価値の増大等に伴い,その整備拡張に対する要望は強い。さらに,多数の島しょから成る我が国では,離島における隔絶性の緩和,民生の安定と福祉の向上のため,航空輸送に対する期待が大きい。

(2) 58年度事業と空港整備

  地方空港については,従来から就航機材のジェット化,大型化に重点をおいた整備を促進してきた。58年度においては,就航機材の大型化を図るための整備として新たに着手した松山,出雲,美保空港の他に大分空港等5空港において滑走路の新設または延長事業を実施した。また,ジェット機を就航させるための事業として,新たに着手した稚内空港の他に,高知空港等10空港において滑走路の新設または延長事業を実施した。なお,58年度をもってジェット化のための事業が完了した空港は,徳島(58年11月供用),高知(58年12月供用),富山(59年3月供用)であり,この結果,現在供用中の77空港(成田,羽田,大阪を含む。)のうち37空港がジェット化され,第4次空港整備五箇年計画期間前と比較するとジェット化空港数で9空港,さらにこれを第1次空港整備五箇年計画期間前と比較するとジェット化空港数で31空港の増加となっている 〔6−1−10図〕

(3) 今後の課題

 (ジェット化の効果)
  58年度にジェット化された徳島空港及び高知空港について旅客輸送量の変化をみると 〔2−1−5図〕(P.58参照)に示すようにジェット化後に大幅に増加している。
  徳島〜東京路線は58年11月18日にジェット化され,その翌月から59年4月までの旅客輸送量は,対前年同月比で44%〜96%増となった。これは,これまでのYS-11型機5便体制からDC-9-41型機4便,YS-11型機1便体制となり,1日当たりの提供座席数は,640から1,152と増加し,所要時間は,1時間45分から1時間10分へと短縮されたこと等によるものである。
  高知〜東京路線は,58年12月16日にジェット化され,その翌月から59年5月までの旅客輸送量は,対前年同月比で63%〜100%増となった。これは,それまでのYS-11型機7便体制からB-767型機1便,B-737型機4便体制となり,1日当たりの提供座席数は,896から1,478と増加し,所要時間は,1時間55分から1時間15分(B-767は1時間5分)へと短縮されたこと等によるものである。
  このようなジェット化による航空旅客増加の推移を50年5月にジェット化した長崎空港を例にみてみると,長崎〜関東ではジェット化以後,国鉄の旅客輸送量は減少しているが,航空を含めた旅客輸送量は,全国値(500キロメートル以上)に比べると著しく増加している 〔6−1−11図〕。すなわち,ジェット化によって,国鉄利用客の一部が航空へシフトするとともに,潜在需要の顕在化による新たな旅客流動が生ずることにより,航空旅客が増加すると考えられる。
  ジェット化の航空旅客輸送への効果は以上のとおりであるが,このほかジェット化による航空機の高速化及び大型化は,航空貨物輸送能力の増加をもたらし,空港周辺にIC部品等の技術集積型産業の立地を促進するなど,地域経済社会の発展に果たす役割は大きい。
  今後とも,航空需要の着実な増加が見込まれるため,その動向を見極めながら航空機材の大型化,ジェット化に対応した空港整備を地域経済社会とのかかわりあいに配慮しつつ,長期的視点から先行的に整備していく必要がある。 
 (小型機による地域航空輸送)
  最近,地域航空システムを整備することに対する要請が高まっている。すなわち,小型航空機の利便性を生かし,これによって地域間の新たな結びつきを図る動きである。
  なお,58年12月からは,日本エアコミューター(株)が関係地方公共団体の出資等を受けて奄美関係4路線について小型航空機による旅客輸送を開始している。
  このような小型機による地域航空輸送については,航空輸送サービスを期待する地域の自主性を尊重しつつ,空港整備の問題,航空事業の経営上の問題,安全性の問題等を含めた検討が必要となろう。


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