(4) 引越運送


  (総合的生活産業への展開)
  トラック運送事業者による引越運送の売上高は,年々増加する傾向にある 〔5−2−3図〕。これは,主として生活水準の向上に伴って家具・家財が大型化してきており,自ら引越運送を実施することが困難となってきたために運送事業者に頼ることが増えたことと,必要な事務手続の代行等荷主の多様なニーズに応える質の高い付帯サービスの提供による売上高増を背景としたものである。
  消費者が煩雑な作業を自ら行うことを避け,有料であってもサービス産業に委ねるという最近の生活意識の変化を勘案すると,トラック輸送を核とする引越産業は今後とも家具類の販売,インテリアデザインなど高付加価値を生じる付帯サービスの一層の拡大を図り,利用者の生活空間の移動に関する総合的な生活産業として成長することが十分に可能であると考えられる。
  この成長市場には,引越専業のトラック運送事業者や自動車運送取扱事業者が多数参入してきており,競争が激化している上に,サービスの差別化の余地が依然として充分にあること,サービスの質によっては高収益性が見込める分野であること等から,企業間格差が拡がっていくものと考えられる。
  (引越運送の消費者保護)
  引越運送は,付帯サービスの多様化,高度化によりサービスの質の改善が図られているが,他方,請求された額が高くその根拠が不明確である,見積りで提示された額と請求された額に大きな開きがある,見積りをしただけで見積料を請求された,等の苦情が生じている。引越運送の契約関係については標準貨物運送約款が,運賃・料金については認可運賃・料金がそれぞれ適用されているが,これらは利用者にわかりにくく,また,引越運送の特性に必ずしも適合していないので,61年10月に標準引越運送・取扱約款の制定及び引越運賃・料金の設定が行われた。
  このほか,都道府県トラック協会を通じての引越運送事業者の組織化,当該組織と国民生活センターとの連携強化による苦情処理体制の強化等の施策を講ずるとともに,一般利用者に対する引越運送制度の周知に努めている。


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