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委員長記者会見要旨(平成31年4月23日)

平成31年4月23日(火)14:00~14:19
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 この度、運輸安全委員会委員長を拝命いたしました武田展雄と申します。どうぞよろしくお願い致します。
 また、同じく4月1日付けで、法制担当の柿嶋美子委員及び航空担当の非常勤委員として宮沢与和委員も就任したことを報告致します。

1.委員長所感(就任)  

 さて、委員長就任後、初めての記者会見となりますので、所感を述べさせていただきます。

 運輸安全委員会は、航空、鉄道及び船舶の事故等の調査、再発防止、被害軽減のための施策などを担当しており、公正・中立の立場から、日本の運輸の安全を守る要として重要な役割を担う組織であり、その委員長としての責任の重さをひしひしと感じているところであります。

 さて、従前より私は、航空、鉄道及び船舶を含む日本の安全な運輸技術の高さを信じており、一国民として日本の誇りとも思っておりました。これは先人の皆さんの安全な日本を作ろうとする志の高さとそれを支える地道で弛まぬ技術的向上のための努力の賜物であると考えています。
 ただし昨今、この日本の運輸安全を揺るがしかねない事故や重大インシデントも度々発生していることもあり、運輸安全技術の向上をこれまで以上に図っていく必要性があると思っております。

 運輸安全委員会のミッションには、『私たちは、適確な事故調査により事故及びその被害の原因究明を徹底して行い、勧告や意見の発出、事実情報の提供などの情報発信を通じて必要な施策又は措置の実施を求めることにより、運輸の安全に対する社会の認識を深めつつ事故の防止及び被害の軽減に寄与し、運輸の安全性を向上させ、人々の生命と暮らしを守ります。』とあります。これまでの委員会活動により培ってきた事故調査での経験を踏まえつつも、有用な新しい安全調査技術も積極的に取り上げ、科学的・客観的に適確な事故等調査を行っていく所存です。

 また、特に社会的にも関心が高い事故等では、被害者や遺族の方々の心情にも十分に配慮して、事故原因調査に関する情報を適時適切に発信していくことが重要と考えています。
 さらに、当委員会のホームページでは、事故等調査報告書や運輸安全委員会ダイジェスト、記者発表資料などの情報を提供しておりますが、更に充実させることにより皆様に広く活用され、事故の再発防止並びに被害の軽減に役立てることができるよう取り組みたいと考えております。

 当委員会は委員長1名、常勤委員7名、非常勤委員5名からなりますが、現場の事故等調査には航空、鉄道、船舶それぞれの事故調査官があたりますし、事故防止分析官、事故調査調整官も配置されています。それを国際渉外、広報などを担当する総務が支える事務局体制が作られています。委員長としては、委員会・事務局に属するメンバーの一人ひとりが安全な運輸技術を支える誇りを持ち、各々の能力を十分に発揮・向上していける組織となるよう努力したいと考えています。

 また、航空、鉄道及び船舶の事故等には各々個別の特徴もありますが、ヒューマンファクターや私が専門とする材料・構造など共通の課題については、自由に意見交換を行い問題点や解決策を共有し、日本の運輸安全を守る組織としての能力のなお一層の向上を図って参る所存です。

 今後とも、皆様のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

2.事故調査の進捗状況 

 次に、事故等調査の進捗状況について、前月の定例会見から新たに発生した事故及び重大インシデントは、各モード合わせて5件ありました。
 航空モードは、3月29日に関西国際空港へ向けて降下中に発生したジェットスター・エアウェイズ機の重大インシデントの1件です。
 鉄道モードは、4月13日に福井鉄道福武線で発生した踏切障害事故、及び4月14日に弘南鉄道大鰐線で発生した列車脱線事故の2件です。
 船舶モードは、3月27日に荒川で発生した屋形船の火災事故、及び4月4日に名古屋港で発生したコンテナ船のインシデントの2件です。
 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

3.機関故障検索システムの稼働開始

 最後に「機関故障検索システム」の稼働開始について報告致します。お手元の資料2をご覧下さい。

 船舶分野の新たな取組として、本日より「機関故障検索システム」を公開します 。
 以前から、船舶エンジンや付属機器の名称や部位などから「日頃、あるいは不具合発生時にどのような安全措置を講じると良いのか」検索できるツールが欲しいとの要望をいただいていたことから、船会社や教育機関など関係の方々のニーズを調査し、本検索システムを構築しました。
 資料の1ページ目の中段の左側にある画像が、検索システムの最初に表示される画面です。ここに表示されているエンジンモデルから気になる場所を選択し、知りたい事故調査事例を選ぶことにより、これまでその部位について、どのような安全措置が講じられたのか、情報を収集することができます。3ページ以降には、具体的な検索方法を紹介しております。

 船上の乗組員、船舶事業者、海事教育機関関係者の方々が、エンジン不具合に備えてメンテナンス等の予防措置を適確に行っていただくほか、故障に至ってしまった場合の対応や、船員養成機関における教育資料等に本システムを活用していただけるものと考えております。
 これまでデモ版を海事関係者に使ってもらったところ「エンジンモデルから直感的に必要な情報を入手できる」など、期待の声をいただいておりますので、今後、検索可能な事故調査事例を増やすとともに、機能の改善に努めて参ります。

 本日、私からは、以上です。
 何か質問があればお受けします。

4.質疑応答

(委員長就任所感関係)

問: 委員長に就任されて、強化したいことや新たに取り組みたいことなどありますでしょうか。
答: 強化したい点としては、航空・鉄道・船舶の3モードがシナジー効果を発揮できるようにすることが必要だと考えています。特に共通するヒューマンファクターの分野、材料・構造の分野に力を入れたいと考えています。材料・構造分野は私の専門とするところですので、これまでの経験を活かせるのではないかと思います。
 それから、調査官をはじめ事務局職員の皆さんが、この仕事に誇りをもって、各々の力を100%発揮できるような職場にしていきたいと考えています。

問: これまでに起きてしまった事故で、原因等を含め心に浮かぶものがあれば教えてください。
答: 何か一つ取り上げることはできませんが、私は、これまで複合材料の研究を長年行ってきましたので、カーボンやFRPなどの新しい材料が要因となるような事案が気になっています。複合材料は、場合によっては金属より燃えやすいというようなこともあるので、新しい材料の導入は、安全確保のために重要なファクターの一つと考えているところです。

資料