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委員長記者会見要旨(令和4年3月22日

令和4年3月22日(火)14:00~14:33
国土交通省会見室
武田委員長

発言要旨

 運輸安全委員会委員長の武田でございます。
 ただいまより、3月の月例記者会見を始めさせていただきます。

1.事故等調査の進捗状況  

 はじめに、前月の定例会見から新たに調査対象になった事故及び重大インシデントは、航空、鉄道、船舶モード合わせて5件ありました。
 航空モードは、3月6日に八尾空港で発生した小型機が着陸する際にプロペラが滑走路に接触した重大インシデント、3月7日に熊本空港で発生した小型機が他の航空機が使用中の滑走路への着陸を試みた重大インシデント、3月12日に伊江島空港で発生した小型機の墜落事故の3件です。
 鉄道モードは、3月16日に宮城県内の東北新幹線で発生した列車脱線事故の1件です。
 船舶モードは、昨日21日、鹿児島県種子島の南東約185km付近で発生した漁船第五十一勇仁丸の火災事故の1件です。

 このうち、伊江島空港で小型機が墜落し2名の方が亡くなった事故について、当委員会は当日12日の午後に事故発生の通報を受け、翌13日に航空事故調査官3名を現地に派遣し、同機が墜落した事故現場周辺の状況確認、機体の残骸等の確認、目撃者及び空港関係者からの聴き取りなどの調査を行いました。
 これまでの調査において、機体は大破し焼損した状態であることを確認していますが、今後、さらに焼け残った部品についての詳細な調査や当時の気象状況、機体の整備状況等の情報収集などを進めてまいります。

 また、3月16日夜に発生した東北新幹線の列車脱線事故については、翌17日に鉄道事故調査官2名を現地に派遣し、車両及び軌道施設等の損傷状況、乗務員からの聴き取りなどの調査を行いました。
 これまでの調査において、車両や軌道施設、橋脚の一部に損傷が確認されましたが、今後、さらに損傷状態の詳細な調査や当時の地震の揺れ方等の情報収集を行い、収集したデータを用いて地震の揺れと車両や橋脚との関係(メカニズム)について、調査分析を進めてまいります。

 昨日発生した第五十一勇仁丸の火災事故については、1名の方が亡くなられ4名の方が行方不明となっています。現在も、捜索が続けられていますが、乗組員の方々が無事発見されることを願っています。本件について、当委員会は船舶事故調査官3名を指名し、情報収集など調査に着手しています。詳細については後ほど広報室にお尋ね下さい。

 事故等調査の進捗状況については、資料1をご覧ください。

2.運輸安全委員会年報2022の発行  

 次に、本日、お手元に配布しております「運輸安全委員会年報2022」を公表しましたので、概要をご報告します。
 まず、冒頭、「この一年の主な活動」として、ドローンを活用した航空事故調査の実施、令和3年に公表した主な調査報告書などを紹介しています。
 「ドローンを活用した航空事故調査の実施」のページでは、事故現場を上空から撮影することにより、事故機の残骸の分布状況を容易に把握できることや、低高度から撮影した写真を活用して、着陸時の接地点から停止位置までの痕跡をわかりやすく表現できることなど、航空事故調査におけるドローン活用のメリットを紹介しています。
 また、「令和3年に公表した主な調査報告書」(3~7ページ)については、社会的に注目された事故や、地方事務所が数多く調査に取り組んでいる小型船舶の衝突事故などの調査報告書の概要を紹介しています。
 このほか、年報では、昨年発生した事故や公表した調査報告書の概要のほか、事故防止に向けた情報発信・国際的な取組を紹介しています。
 なお、巻末の資料編には、事故等調査件数などの統計も掲載しています。当委員会のホームページからもダウンロードできますので、ご活用ください。

3.安全啓発資料の公表  

 次に、安全啓発資料の公表について、ご報告します。
 運輸安全委員会ダイジェスト第39号として、超軽量動力機等の事故に関する分析集を本日公表しました。お手元の資料3をご覧ください。
 この分析集では、スカイレジャーとして普及している超軽量動力機やジャイロプレーン、自作航空機など簡易な構造の航空機の事故件数が、平成30年以降小型飛行機やヘリコプターよりも多い傾向にあることから、これまでの調査結果を分析して空を安全に楽しむためのポイントを提言しています。
 分析の結果、超軽量動力機等の事故では、死亡者や重傷者を伴う事故が54件中42件で78%、機体が大破・中破した事故が54件中47件で87%を占めており、このような簡易な構造の航空機は、事故に至ると重大な被害を伴うことが多いことが分かりました。
 また、事故に至る主な要因は、不適切な操縦、風の影響、知識・技量・経験不足などが多いことから、安全のためのポイントとして、安定した速度や姿勢を維持すること、常に風の状況を意識して飛行すること、マニュアルに従って飛行や点検・整備を行うことなどを呼びかけています。
 この種類の航空機の事故調査報告書を分析し、運輸安全委員会ダイジェストとして安全対策を提言するのは初めてのことです。例年、これからの時季、特に5月から8月にかけて事故が多くなる傾向があることから、超軽量動力機等を愛好する皆様に本資料を役立てていただき、空を安全に楽しまれることを期待しています。

4.委員の異動  

 最後に、委員の異動について、ご報告します。
 任期満了に伴い、航空分野の常勤委員を務めた宮下徹氏が退任し、新任の委員として、島村淳氏が2月27日付けで国土交通大臣から任命されました。
 島村委員は、昭和56年に旧運輸省に入省し、航空局において技術部航空機安全課長、技術部運航課長、安全部運航安全課長、安全部長などを歴任し、航空機の安全確保、航空機の運航の安全に関する指導・監督、航空安全行政の総括等の業務に従事していました。
 退官後は、平成31年から日本航空株式会社安全推進本部に所属して、本部長代理及びフェローを歴任し、安全関連業務全般に関わる企画、調整等の業務に従事した経験もお持ちです。
 航空安全行政に関する豊富な経験と航空機の運航・整備、空港の運用、管制等に関する幅広く体系的な知識を有しており、航空事故等の分析及び原因究明に貢献していただけるものと期待しています。

 また、航空分野の非常勤委員である中西美和氏についても、2月27日に再任されています。引き続き、ヒューマンファクターに関する高い識見を生かし、当委員会でご活躍いただくことを期待しています。

 本日、私からは以上です。
 何か質問があればお受けします。

5.質疑応答

(東北新幹線列車脱線事故関係)

問: 冒頭の発言でも触れられました、先週の16日深夜に東北新幹線の脱線という大きな事故がありましたが、委員長に改めてどのようにお感じになっているかもう一度お聞かせいただきたいのと、調査官を派遣して具体的な調査が始まっていますが、具体的にどのようなところをポイントに見ていこうとお考えなのかを伺えますでしょうか。
答: 初動の段階ですのでそれほど多くは言えませんが、地震との関係では、地震を感知して、その後脱線、逸脱を防止する装置がどう効いたかということ、どの段階で脱線したのかということが重要なポイントです。そこの事実情報をはっきり把握し、分析して再発防止につなげていくのが一番重要だと思っています。鉄道施設に関しても、逸脱、脱線に関与するものであれば、事実情報を集めて分析することもあると、現時点では考えています。
問: 現段階では多くは言及できないかもしれませんが、17日夜の調査官の囲み取材の中でも、脱線痕と呼ばれる跡が見られないとか具体的な話も聞かれましたが、その辺りはどのような認識というか関心を持たれていますか。
答: 17日の調査で、列車が進行してきた方向に脱線箇所の手前まで脱線痕が見あたらないということから、調査官が、停止する直前か停止してから脱線した可能性があるとの、その時点の見解をお話ししたところです。今の段階では可能性です。車輪やレールの状況について更に詳細に調査し、脱線の経過を明らかにしていくことになりますので、そうしたことを含めて調査の過程でお知らせすべきことがあれば、情報提供や経過報告などもしたいと考えています。
問: 国内でもそうそうない事故ケースの一つかと思うのですが、委員長としては、中間も含めて最終取りまとめまでどれくらいの期間をかけて調査に当たっていくお考えでしょうか。
答: 今の段階では、なるべく早くなるよう努力していくとしか申し上げられません。

問: 今の質問に関連しているところですが、低速か停車後というところの可能性についての評価なのですが、どちらかというと報道が出てからは停まってから脱線したんじゃないかという印象の方を強く受けるのですが、その辺はどっちによるというのは難しいと思いますが、現状で何か評価できるものがあれば伺いたいです。
答: 今の時点では、これ以上言えるほどの情報はありません。
問: 停車しているとは言えないということですね。
答: そうです。
問: わかりました。これも非常に難しいとは思うのですが、逸脱を防止する装置だったりとか、ある程度機能しているかなというふうにも見えると思うのですが、その辺の評価も言える範囲で伺いたいと思います。
答: その点も調査中なので何とも言えませんが、車両やレールの状況、逸脱、脱線の痕跡を把握して、防止できたのか、防止できていない部分があったのかを調べ、分析したうえでお話しできるようになると思っています。
問: これまでも運輸安全委員会では、熊本地震であったり東日本大震災では、かなり脱線防止に関する検討とかあったと思いますが、少なくとも何らかの機能はある程度果たしたということくらいは言えると思うのですが、どうですか。
答: そう願いたいところですが、そうであったかはまだ申し上げられません。JR東日本の逸脱防止装置は他の事業者とは異なるところもあるので、そういった点も、必要であれば調査しなければならないと思っています。

問: 今の質問の関連ですが、逸脱防止ガイドで、現状見ている範囲で、そこから外れたものというのは、一応あるということでしょうか。
答: 現在調査中ですので、まだ何とも言えない状況です。
問: 現地調査で調査官の方が示された一つの可能性の見解として、最初の揺れが来てその後に二回目の大きな揺れが来て、検知装置が最初の揺れの段階で働いて停止して、その直前か直後に脱線したということは可能性としてはあり得るということですか。
答: 可能性の一つとしてあり得ると考えています。今後事実情報を積み重ねて確認していきます。
問: そうしますと、検知装置がどう働いたかという部分に関しても、今後調べていかれるという形になるのですね。
答: どの程度有効であったかという点を調べていきます。

問: 検知装置の関係ですが、JR東日本は運輸安全委員会に最大限協力というか話をしているというのがありまして、ログの解析も詳細に見ていきたいという話をしていますが、航空事故ではないですが、ログは鮮明にというかきっちり残っているという理解で良いですか。解析していく材料はしっかりあるという理解で良いですか。
答: 今後確認していく予定です。

問: JR東日本が逸脱防止ガイドとレール転倒防止装置で、JR東海が脱線防止ガードで、東日本と東海だと逸脱防止の鉄板も付けている位置が違ったりとかがありますけれども、優劣というものはあるのでしょうか。それとも一長一短といったイメージで捉えておけば良いのでしょうか。
答: 新幹線の脱線対策と言っても、線路の構造の違いによってメリットデメリットがあります。各社がメリットデメリットを踏まえて判断していると理解しています。東海道新幹線は頻繁に通りますし、レールもバラスト軌道です。東北新幹線や上越新幹線は高架橋ということで、構造も違うし振動特性も違うので、各社によって対応策が違うということで優劣があるとは考えていません。
問: 委員長が東海道新幹線は頻繁と言っていたのは、本数が多いということですか。
答: そういう意味です。
問: 東海道がバラスト軌道で東北ががスラブ軌道であることは、何か今の話と関係はあるのでしょうか。
答: そこは多分、運行している会社の考え方が違うことの、一つの原因だろうというふうに思っています。
問: もう少し具体的にかみ砕いて言うと、どういう考え方の違いなのか、可能でしょうか。
答: 多分、高架橋の方が揺れやすいということだと思います。
問: 揺れやすいから、なかなか完全に脱線は防ぎにくいみたいなイメージがあるのですか。
答: はい、印象ですけれども。

問: 今回、17両中16両が脱線したということで、程度は軽いと見られるのですが、3人ねん挫などのけがを負われたという状況です。写真を見た限りでの印象と言いますか、これまでの脱線事故との違いだったりとか、思われてることがあればお願いします。
答: 今は何も言えませんが、乗客の方に聴き取り調査も必要ではないか思っています。航空の分野では機体が揺れて乗客や乗員がケガをした事故の調査、分析の実績があり、それらの情報から、転倒防止、怪我防止のためにはどうしたら良いのかという点も検討できるかもしれないと思っています。

問: 施設が、逸脱脱線に関与したかどうかを分析するとは、具体的に何を指すのかということと、もしかするとそのことが指しているかもしれないのですが、脱線の現場からは離れているのですけれども、軌道の歪みが生じているというのがあって、直接の因果関係は薄いのかもしれませんが、これについても調査対象にされるかどうかを教えてください。
答: まずは、脱線に関する調査、分析を行いますが、関与要因としての可能性があり得る場合には、その点も調査するということになると思われます。400m以上の長い部分で脱線していますので、地盤条件等、広域の条件を調べて、地震動でどういうふうに揺れたのか、構造物自体も電化柱などの付帯構造物もあるので、そういったものが全体としての橋脚の振動にどう影響したのかということを分析して、そのうえで、車両の振動をもう一度考え、どういうことが起きたのかを考えていきたいと思っています。
問: その場合、レールの大きな歪みがあったところがあると思いますが、そこは今回の調査の対象になるかどうかは、イエスかノーのどちらでしょうか。
答: まず脱線現場の調査を行って、その他の部分は、もし関係があるということになれば、その後で考えたいと思います。これまでも地震の被害でレールにゆがみは生じていますので、鉄道局、JR東日本、鉄道総研などとともに、場合によっては運安委がイニシアチブをとっていかなければいけないかもしれないと思っています。

問: 設備の被害がおよそ千カ所に上っていたことも衝撃というか、よく当該列車だけの被害で済んだという見方もあるかもしれませんが、架線の破断とか致命的になるようなことも起きていますが、千カ所の被害についてどのようにお感じでしょうか。
答: 東北新幹線全体の損傷となると運安委の範疇を超えるのでお答えできないのですが、脱線事故を調査する中で、地震による被害をどう防ぐかと言う観点から指摘すべきことがあれば、それに触れることもあると思います。

資料

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