国土交通省
 地域を牽引する日本型の産業集積拠点の形成に向けて
 −知の創造を地域の活性化につなげる仕掛け作り−
 −「産業集積拠点の形成に関する研究会」報告書−

ラインBack to Home

平成16年6月1日
<問い合わせ先>
国土計画局総合計画課

(内線29403、29315、29356)

電話:03-5253-8111(代表)


 

  1. 本研究会の趣旨

     本報告書は、「二層の広域圏」における地域ブロックを経済的に牽引する「成長の極(growth pole)」と位置付けられる産業集積拠点を形成することを目的として、平成15年度新全国総合開発計画推進調査「競争力向上に資する産業集積を活かした国土のあり方に関する調査」として、矢田俊文九州大学大学院経済学研究院長(現:九州大学名誉教授)を座長に迎え、11名の委員による研究会論議を行った結果を取りまとめたものである。ドイツに調査団も派遣した。
     本研究会では、このまま放置すれば個々の地域だけでなく日本全体が沈没するとの危機感があるなかで、我が国の地域産業の将来を、大学を核とした産学連携等を通じ、「選択と集中」の考え方に基づき、「産業集積拠点」という新しい「地域産業のかたち」に賭けることを提言するものである。 

  2. 報告書の概要

    (1)地域雇用を支えてきた地域産業の厳しい現状
     高度成長期に形成され、依然として変わらない東京圏を頂点とする経済構造のなかで、地域雇用を支えた製造業や建設業などの基幹産業は落ち込んでいる。
     我が国では、地場産業の集積などが形成されてきたが、最近の厳しいグローバル化の競争のなかで、撤退や東アジアへの進出もあれば、強い国際競争力を持った集積拠点となっているものもある。
     さらに、最近の新しい動きとしては、研究開発、デザイン、ソフト、マーケティングという知識財の投入によって新たな活力をえて成長するもの、また、バイオ、IT、環境・リサイクルのように新たな集積の芽が吹き出しつつあるものがある。

    (2)地域産業の立地・配置に係る国土政策の動向
     国土審議会調査改革部会報告「国土の総合的点検」−新しい“国のかたち”へ向けて−(平成16年5月)において、地域が経済的に自立しうる圏域としての「地域ブロック」、生活上の利便性を確保する上での圏域としての「生活圏域」という「二層の広域圏」の形成が提起された。
     地域ブロックの経済的な自立を促すためには、地域内部に生産力など独自の富を有し、雇用機会を生みだし、地域ブロックを経済的を牽引する「成長の極」である「産業集積拠点」をもつことが重要である。我が国の英知は知による新しい創造に注がれるべきであり、それを事業化することで東アジア等との差別化を図る。その際、日常的なフェイス・トゥ・フェイスが決定的に重要であり、こうして形成される産業集積拠点は、目指すべき新しい地域産業のかたちと考えられる。

    (3)諸外国と比較した我が国産業集積の現状と課題
     我が国では、過去の産業集積における技術蓄積を基に、次の段階の産業集積として成長しつつあり、地域経済の活力が次第に芽ばえつつある。
     ドイツ等欧米諸国と比較すると、我が国の産業集積拠点の反省点は、産業の集積が乏しい地に施設建設を先行し、交通利便性が確保できなかったことなどにより、人材が集まらなかったことにある。

    (4)国土政策による産業集積拠点の形成
     産業集積拠点の形成に当たっての基本的考え方は、「選択と集中」であり、生産性の低い地域から高い地域へ、限られた労働と資本の重点的投入を誘導することである。
    <産業集積拠点の10〜15年先の達成目標>
     1技術革新の維持向上             2地域産業の柔軟性や適応力の向上
     3外資の投資先として魅力ある基盤の確立 4地域の雇用機会の創出
    <産業集積拠点の形成手法>
     1人の集まりを促し、知による創造を生み出す集積の核の形成
     2知による創造を事業化につなげるネットワークの形成
     3外資参入を容易にするための環境整備
     4長期勤務・居住を促す快適な環境整備
     5我が国の市場としての特長、既存の産業集積など日本の強みを最大限活用
    <産業集積拠点の目標・評価のためのアウトカム指標>
     集積状況、活動状況、集積の効果・成果を評価する指標が必要
    <産業集積拠点を形成するための各主体の役割>
     企業 :技術革新の事業主体。また、R&D支援サービスを行う企業の存在も重要。
     大学・公的研究機関 :国立大学の法人化を契機として、知による新しい創造を生み出す中心的役割を担うべき。
     地方自治体 :産業集積拠点を空間計画で位置付け、まちづくりなどによる環境整備を行う中心的役割を担うべき。
     国 :特定の「生産性の高い」地域に重点的に支援を行い、民間投資を誘導し、大規模な産業集積拠点の形成を図る。その主要な支援内容としては、
      1核やネットワークの形成や活動、研究開発等に対する競争的手法による資金提供
      2産業集積拠点の形成に貢献するよう空港、港湾、鉄道、道路などの基幹的交通アクセス網の重点的整備
      3次の新しい国土計画における適正な位置付け
      4地方自治体が行う活動に対する支援
     金融機関 :健全なビジネスプランのある企業への融資・投資。
     民間団体・NPO :コーディネート機能などを担うべき。
    ※知による創造において重要となるコーディネート機能は、いずれかの主体が担うことが必要。

     すでに関係府省、地方自治体や民間独自の産業集積形成の取組みなどが行われているが、本報告で提言した産業集積拠点の形成を推し進めるためには、関係者間の密接な協力が行われる必要がある。かつての新産業都市建設促進法や工業整備特別地域整備促進法などは、関係者一丸となって推進した良い例である。産業集積拠点の形成を推し進めるためには、「長期的視点から国民にとって適切な地域間の配分(空間計画)、部門間の配分及び世代間の配分」を行うことを役割とする国土政策の見地からの取組が重要である。

    研究会名簿

    座長 矢田 俊文 九州大学大学院経済学研究院長
        九州大学学術研究都市推進機構準備会副理事長
    委員   児玉 俊洋 経済産業研究所上席研究員
        難波 正憲 立命館大学アジア太平洋大学経営大学院技術経営担当教授
        原山 優子 東北大学大学院工学研究科教授
        古川 勇二 東京農工大学工学部教授
        社団法人TAMA 産業活性化協会会長
        前田  昇 大阪市立大学大学院創造都市研究科教授
        丸川 知雄 東京大学社会科学研究所助教授
        森  知也 京都大学経済研究所助教授
        山口 泰久 日本政策投資銀行地域政策研究センター参事役
        山崎  朗 九州大学大学院経済学研究院教授
        柚岡 一明 日本貿易振興機構対日投資部長

 

 「報告書については、こちらをご参照下さい。」(PDF形式)
     https://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/suishinchousa/pdf/h15/kyousouryokukoujou.pdf


 PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Acrobat Readerが必要です。右のアイコンをクリックしてAcrobat Readerをダウンロードしてください(無償)。
 Acrobat Readerをダウンロードしても、PDFファイルが正常に表示されない場合はこちらをご参照下さい。

アクロバットリーダーホームページへ
(ダウンロード)

ライン
All Rights Reserved, Copyright (C) 2004, Ministry of Land, Infrastructure and Transport