○ | 「まち」の停滞 |
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産業構造の変化、グローバリゼーションの進展に伴う競争条件の激化等に伴い、国内各地域においては、人々が生活し、集う基盤であるいわゆる「まち」の多くが活力を失い、停滞してきている状況にある。 特に、近年では地方分権に向けた動きや人口の減少等が相まって、各地域は人々の定住、来訪促進をめぐり、他地域との間で激しい競争を展開している。この地域間競争を生き抜くため、より多くの人々に住んでもらい、より多くの観光客に来訪してもらえるような「まち」の魅力が必要とされ、今後はそのための地方独自の活性化への様々な取組みが試される状況となってきている。 |
○ | IT化 |
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今後、IT革命が急速に発展・普及し、個人レベルであらゆる情報を一斉かつ広範に発信したり、受信することが可能な社会に進展していくことが予測される中、宿泊、交通等も含めた観光産業もその顧客としての旅行者を獲得するためにITは不可欠な手段になってきているほか、ITの利用により旅行中にオフィスと同様に仕事を進めることも可能になるというようなことから、旅行者にとって観光と仕事の境目がなくなるような状況も生まれてこようとしている。 さらに、従来は、情報の受け手と送り手が区別され、情報を広く発信することは高価であったり困難であったりしたが、今後は、より幅広い主体がこれまでよりも容易に情報を発信することが可能となるとともに、情報の受け手にとっては、多様なニーズに合致した情報を迅速かつ容易に入手することが可能となる。 |
○ | 少子高齢化 |
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我が国においては、今後、これまでに経験したことのない人口減少社会が到来し、社会に占める高齢者の割合も世界的に例を見ないほど急速に高まる。このような少子高齢化の進展は、社会の活力維持への懸念を生じさせ、従来の産業構造のままでは労働力需給の不均衡をもたらす等の社会・経済問題を生じさせる。その結果として社会のあり方を大きく変貌させる。 |
○ | 環境意識の高まり |
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地球環境問題が顕在化し、自然・社会環境の保全・向上についての国民の関心が高まってきている中、大量生産・大量消費を前提とした社会のあり方が根本的に問われている。 |
○ | グローバル化 |
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IT化により、国際間でやりとりされる情報が飛躍的に増大することとも相まって、21世紀には、これまで以上に、モノ、カネ、情報、そして、人や企業が国境を越えて移動することとなり、国家間の障壁が低くなっていく。 それらの結果として、人々は国境を越えて移動することが日常的になり、世界的な大交流時代が到来し、地球規模で国という枠を含めたそれぞれの社会が大きく変貌していこうとしている。 |
○ | 国民のライフスタイルの変化 |
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国民も旧来の社会や組織から独立した自由で独創的な人間個人の活動が幅広く進展する時代、いわば、「個の時代」が到来する。 しかし、個人による活動が社会の中で大きなうねりを生み出していく一方で、共同帰属社会(コミュニティ)意識の希薄化も拡がりつつあることから、人間同士のつながりともいうべき、共通の理念や感覚(個の共通理念、共通感覚)が求められる中、それぞれが相互の価値基盤やメンタリティを理解し合える「知」が必要とされている。 |
○ | 生活レベルの向上 |
・ | 経済優先から生活の豊かさへと国民の関心が移っていく中で、これまで以上に一層ゆとりや快適さというような価値が重要視されている。 |
・ | また、生活レベルが向上してきたことに伴い、人々の多様なニーズに合わせて、多様な娯楽的要素も含めたメニューが整ってきており、時間の過ごし方も多様化してきている。 |
○ | 人々にとって |
・ | 観光は、単なる余暇活動の一環としてのみ捉えられるものではなく、人々の生きがいや安らぎを生み出し、ゆとりとうるおいのある生活に寄与し、また、日常生活圏を離れて多元的な交流・触れ合いの機会をもたらし、人と人の絆を強めるものであること |
・ | 人々が地域の歴史や文化に触れ、学んでいく機会を得ることにより、各個人レベルにおいて、多様な価値に視野が拡がること |
○ | 地域にとって |
・ | 地域にとっても観光振興のために地域固有の文化や伝統の保持・発展を図り、魅力ある地域づくりを行うことは、アイデンティティ(個性の基盤)を確保し、地域の連帯を強め、地域住民が誇りと生きがいをもって生活していくための基盤ともなること |
・ | 観光によるまちづくりが地域活性化に大きく寄与すること |
○ | 国民経済にとって |
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観光産業は、旅行業、交通産業、宿泊業、飲食産業、アミューズメント産業、土産品産業、旅行関連産業等幅広い分野を包含した産業であり、その我が国経済に与えている影響についてみると、直接消費は約20兆円にのぼり、さらに波及効果を含めると、我が国経済全体に対する効果は約50兆円と算定されている等、経済効果は乗数的に極めて大きいものとなっていること |
○ | 国際社会にとって |
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国という単位で捉えた場合、外国人との直接的な交流・出会いは、メディアを通じての見聞とは異なり、実際の人間像と生活をよりよく理解できる機会をもたらすものであることから、国民各個人レベルの国際観光交流は、国際相互理解の増進、国際親善、ひいては国際平和に貢献するものであること |
○ | 「まち」の再活性化ニーズの増大(均一化した「まち」の表情への反省) | ||||||||||||
・ | 現在、観光振興を図ることにより、交流人口を増加させるという新たなまちづくりの手法が地域の活性化の切り札として期待されているが、我が国においては、「まち」の表情はややもすると均一化する傾向にあり、国民ニーズの多様化、高質化に十分に応えられていない状況にある。 | ||||||||||||
・ | このため、個性を表出し、均一化した「まち」の表情を改めることにより、国民ニーズの多様化、高質化に応えるような観光によるまちづくりを推進していくことが求められている。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、観光によるまちづくり推進に当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 観光分野におけるIT化ニーズの増大 | ||||||||||||
・ | カーナビゲーションや携帯端末等の普及に伴い、公共交通機関関連情報を含めた観光情報を電子地図と組み合わせた形で観光客に提供していくことは、全ての人々にとって、旅行の計画を立てる際や実際に周遊をする際の支援システムとして極めて利便性の高いサービスとなっていく。 | ||||||||||||
・ | また、交通機関や宿泊施設の予約や決済等の手段としてもインターネットの担う機能への期待は高く、今後コンビニエンスストア等が進出を企図している電子商取引の分野においても旅行商品の提供が事業展開の対象の一つにされているところである。 | ||||||||||||
・ | このようにネット社会の進展に伴う旅行手続き等の簡便性や旅行の容易化等の利便性の向上については社会的な期待が非常に大きい。また、外国人の訪日促進を進めていく上でも、このようなITの活用を促進していくことは非常に重要な課題である。このため、今後はIT化ニーズに対応していくことが観光産業全体にとって必要不可欠となっていくと思われる。 | ||||||||||||
・ | 特に、旅行会社にとっては、IT技術に遅れないように、迅速な対応が求められている。即ち、従来、旅行に関する情報は圧倒的に旅行会社側にあり、それを基に旅行サービスを提供する事業が成り立ってきたが、これからはITの進展により、旅行者も十分に情報を得ている中での事業を展開しなければならない状況が生じている。そのため、十分な情報を得ている旅行者を相手にした旅行のプロの相談相手としての役割が求められることになる。 他方、ITを利用していない旅行者や安心感から相対取引を行う旅行者が圧倒的に多数存在していることも事実であり、このような旅行者に対して、ITを利用した旅行者に劣らない旅行サービスを提供していくことが旅行会社の社会的信用、役割を確立することになり、ひいては旅行の振興のためにも重要である。 |
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・ | このような状況下、観光分野でのITの積極的活用に当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 高齢者等が「気軽」に旅行できる環境整備ニーズの高まり | ||||||||||||
・ | 高齢者や障害者等は日常生活の行動範囲が限られているが、高齢化が急速に進展していく中で、観光分野においても、高齢者や障害者等の人々が安心して「気軽」に旅行できる環境を整備していくことが極めて重要である。 | ||||||||||||
・ | また、今後、これまで以上にグローバル化が進み、人々が国境を越えて日常的に移動する世界的な大交流時代が到来することを鑑みると、訪日外国人旅行者についても言語の障壁を越えて一人でも旅行ができるような環境整備に取り組んでいくことが重要である。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、高齢者等の旅行環境整備ニーズへの対応に当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 環境保全・向上の必要性の増大 | ||||||||||||
・ | 観光ニーズの多様化に伴う観光活動の増大により、ともすると経済的な視点からの開発が先行し、貴重な資源を傷めたり、定住環境を悪化させる等の事象が生じかねない。 | ||||||||||||
・ | 国民の環境意識が高まってきている中、自然環境や文化財・文化遺産を良く保存していくことは、住民と観光客のいずれにとっても極めて重要である。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、観光分野での環境保全・向上を図っていくに当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 訪日外国人旅行者数の伸び悩み | ||||||||||||
・ | 21世紀には、これまで以上にグローバル化が進み、世界的な大交流時代が到来する。外国人旅行者の訪日を促進し、内外の交流を活発化することは、日本及び日本国民に対する国際的理解と評価の獲得を図る上で極めて重要であるばかりでなく、地域におけるそのアイデンティティ(個性の基盤)でもある伝統文化を活性化させることも含めて土地の様々な魅力の創出に繋がるほか、消費支出や雇用の面でも高い効果を生み出すこととなる。 | ||||||||||||
・ | しかしながら、平成11年においては、日本は海外旅行者数が約1640万人であるのに対し、訪日外国人旅行者数はその約4分の1の約440万人程度に留まっている。その結果、訪日外国人旅行者数はWTO(世界観光機関)がとりまとめた統計によると、世界的に見ても36位、先進8ヶ国では最下位となっており、日本人海外旅行者数や国勢規模から見て、訪日外国人旅行者数が極めて少ない状況にある。このため、今後は、訪日外国人旅行者数を増加させるような積極的な取組みを展開していくことが重要である。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、外国人旅行者の訪日の促進を図るに当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 観光のもつ魅力の相対的低下 | ||||||||||||
・ | 余暇時間の過ごし方や消費行動が多様化する中で、例えば、インターネットやゲーム機器等の急速な発達・普及等に見られるように観光以外の多様な楽しみ方のメニューが増えるとともに携帯電話等の発達による消費性向における変化もあり、観光が有していた魅力、特に国内観光の地位が相対的に低下してきている。 | ||||||||||||
・ | 今後、他の活動と比較しても観光がより国民にとって魅力あるものであるためには、本物志向を観光振興の基本に据えて息長く継続的取組みを行っていくことが重要である。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、観光をより魅力あるものにしていくためには、以下のような点が課題となっている。
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○ | 国民生活の変化に対応した観光産業の変革の遅れ | ||||||||||||
・ | 国民の価値観・ライフスタイルの変化とともに、団体・法人の旅行需要が低迷する一方、個人・グループ旅行が好調となっており、旅行費用の低廉化、旅行の日常化、リピーター(再訪者)比率の増大、体験型レクリエーション等旅行ニーズの多様化・個性化の傾向が顕著になってきている。 | ||||||||||||
・ | また、近年、旅行ニーズの多様化・個性化の傾向に対応して、少人数で自然や野生生物の観察等を通じて自然保護に対する理解・認識を深めていく「エコツーリズム」、農山漁村地域を中心に自然、文化、人々との交流等を目的とした滞在型の余暇活動である「グリーンツーリズム」、産業遺産(歴史的意味をもつ工場遺構、機械器具等)や生産現場そのものを観光資源とし、それらを介して物づくりの心に触れることによって人的交流を促進する「産業観光」というような新しいツーリズムの展開に対する期待も高まっている。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、観光産業が国民ニーズに対応していくに当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 長期滞在型旅行の伸び悩み | ||||||||||||
・ | ゆとりや快適さというような価値がより一層重要視されるようになってきている中で、改正祝日法の施行により、一部の祝日の三連休化が図られた。この結果、旅行需要が大きく増加していることからも、連続休暇を拡大することへのニーズは高い。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、今後長期滞在型旅行の一層の普及を図るに当たっては、以下のような点が課題となっている。
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○ | 国民の日常的、基本的マナーやホスピタリティ意識の不十分さ | ||||||||||||
・ | 観光交流においては接する人同士のマナーは極めて大きな意味・役割がある。しかし我が国においてはこれまでの経済優先の中、日常の挨拶も含めた基本的マナーがともすると後回しにされてきたところがあることから、そうしたマナーの回復にも視点を向けることが重要となっている。 | ||||||||||||
・ | このような状況下、観光による交流をより意義あるものとする観点も含めてマナー、ホスピタリティ意識を高めるためには、以下のような点が課題となっている。
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