国土交通省
III.21世紀初頭において早急に検討・実現すべき具体的施策の方向
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 前文にも記述したとおり、今回の答申では、最近の観光をめぐる状況がめまぐるしく変化しているため、21世紀初頭をにらんで早急に検討・対応しておく必要性が大きい以下に掲げる事項について、それぞれに具体的施策の方向を示すかたちで取りまとめることとする。
1.観光まちづくりの推進
2.観光分野でのITの積極的活用
3.高齢者等が旅行しやすい環境づくり
4.外国人旅行者訪日促進のための戦略的取組み
5.観光産業の高度化・多様化
6.連続休暇の拡大と長期滞在型旅行の普及
7.国民の意識喚起
 また、従来は、外国人旅行者訪日促進施策と国内観光振興施策とはそれぞれ分けて考えられることが多かったが、今回の答申においては、「人愉しむところ人集う」という観点から、1〜3、5、7の施策については、外国人旅行者訪日促進と国内観光振興の双方に資する施策として、一体的に捉えた上で推進していく必要があると考えている。
 このような施策を具体的に推進していくことにより、国民の深みのある豊かな生活の実現と国際相互理解の増進が図られ、それらが経済波及効果を生みながら、地域が活性化されることになる。そして、それらの結果として「触れあいと活力に満ちた観光交流大国日本」が実現していくと考えられる。

1. 観光まちづくりの推進(個性ある「まち」の表情へ)

 観光客が訪れてみたい「まち」は、地域の住民が住んでみたい「まち」であるとの認識のもと、従来は必ずしも観光地としては捉えられてこなかった地域も含め、当該地域の持つ自然、文化、歴史、産業等あらゆる資源を最大限に活用し、住民や来訪者の満足度の継続、資源の保全等の観点から持続的に発展できる「観光まちづくり」を、「観光産業中心」に偏ることなく、「地域住民中心」に軸足を置きながら推進する必要がある。

個性ある「観光まちづくり」理念の確立と普及
  「観光まちづくり」を推進する前提として、当該地域における自らの「観光まちづくり」理念の確立と普及に向けての計画的な取組みを推進する必要がある。

具体的施策の方向
  「観光まちづくり」理念の確立と普及に向けた施策の方向は以下のとおり。
行政、地域住民、事業者、ボランティア、NPO等による長期的な視点に立った自主的な「観光まちづくり」理念の確立
地方公共団体が中心となり計画的な「観光まちづくり」の推進
「観光まちづくり」の理念を実現するための観光振興条例の制定
都市計画等の計画への「観光まちづくり」理念の反映
調和のとれたまちなみを作るための住民の合意に基づく「景観条例」の制定等のルールづくり
宿泊施設等観光関連事業者を含めた地域住民のもてなしの意識向上のための取組み
観光まちづくりアドバイザーの活用
地域における「観光まちづくり」リーダーをはじめとする人材の育成
観光案内所や地域観光ガイド等へのボランティアやNPOの参加促進
   
そぞろ歩きのできる個性的な「観光まちづくり」の推進
  地域が中心となり、「観光まちづくり」の理念に則り、観光客が「気軽」にゆとりをもってそぞろ歩きのできる個性的なまちづくりを推進する必要がある。

具体的施策の方向
  そぞろ歩きのできる個性的なまちづくりを推進するため、「観光まちづくり」の理念に則り、実施する施策の方向は以下のとおり。
「観光まちづくり」と一体となった街路整備・水辺の整備等の実施
高齢者・障害者等も安心して訪れることのできるよう、トイレ、休憩施設、案内板等観光地のバリアフリー化の推進
調和のとれたまちなみを作るための住民の合意に基づく「景観条例」の制定等のルールづくり(再掲)
観光地におけるパークアンドライド等によるマイカーの利用の抑制をはじめとする交通需要マネジメント施策(観光地のTDM)、自然環境等の様々な観光資源を保護するための「観光地資源保護条例」の策定等、観光地のオーバーユース(過剰利用)の防止や自然環境保護を図るための仕組みづくりの検討
文化財・文化遺産の活用の推進
泊食分離と「まち」の飲食店振興等、全体として整合性のある「観光まちづくり」の推進
「まち」の個性や魅力についての情報収集や案内所の設置を含む発信の充実強化、リアルタイムな観光情報提供システムの構築
   
効果的な「観光まちづくり」のための市町村広域連携等の推進
  周遊する観光客への対応のため、周辺地域が一体となって広域的に地域の観光魅力を高める必要がある。また、地域の潜在的魅力を発掘し、観光開発するため、外部関係者の意見を反映させる仕組みづくりが必要である。

具体的施策の方向
  効果的な「観光まちづくり」のため、実施する施策の方向は以下のとおり。
各市町村における住民相互の交流による連携強化、祭りやイベントの実施等地域に共通するアイデンティティ(個性の基盤)の醸成
広域的な連携による観光関連情報等の共同発信
広域観光の推進を目的とした複数市町村による共通サインシステムの整備
地域と送客側の観光関連事業者との連携体制による観光素材の発掘、旅行商品の開発、観光客受入体制の整備等の取組み

2. 観光分野でのITの積極的活用

 観光分野でのITの積極的活用については、非常に社会的な期待が大きく、利用者ニーズの多様化、高度化に対応し、携帯端末、カーナビゲーションを含む様々な情報端末、GIS(地理情報システム)技術等を活用して利用者利便の向上に適切に役立てていく必要がある。他方で、現状においては、IT活用のための環境が十分に整っていないことから、環境整備に取り組んでいく必要がある。

IT活用のための環境整備(インフラ整備、利用者保護)

具体的施策の方向
観光分野でのITの積極的活用を推進するため、実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
国や通信事業者、旅行会社等観光関係者を中心とした、プライバシー保護やハッカー対策、国際的な枠組みづくりを含めた利用者保護対策の実施
桜の開花、イベント、紅葉等から宿泊、交通も含めた観光地に係る情報や災害情報のリアルタイムの提供
中小の事業者が電子商取引に参入するためのコンピューター等の整備に対する支援
電子商取引に関する「適」マークの消費者への認知度向上のためのPR

3. 高齢者等が旅行しやすい環境づくり

 我が国においては諸外国と比べても急速に高齢化が進展すると見込まれており、平均寿命の延びに伴い高齢者が生活を豊かに過ごすためにも余暇時間、特に旅行に対する期待は高い状況にある。今後は、高齢者や障害者、さらには、世界的な大交流時代の到来を踏まえ、訪日外国人旅行者が一人でも安心して「気軽」に旅行できる環境を整備していくことが極めて重要である。

観光バリアフリー化の推進等

具体的施策の方向
高齢者、障害者、子連れ家族や訪日外国人旅行者等、誰もが移動しやすい観光まちづくりを推進するため、国、地方公共団体、民間で連携して実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
公共交通機関のバリアフリー化の推進
宿泊施設や観光施設、観光のための案内表示システム・休憩施設のバリアフリー化等、ハード・ソフト両面における誰もが旅行しやすい環境をつくるための総合的かつ具体的な対策の推進
観光分野におけるボランティア等の取組みに対する支援や役割の明確化
観光施設等についてのバリアフリー情報の提供
心のバリアフリー化のための国民運動の展開

4. 外国人旅行者訪日促進のための戦略的取組み

 国際観光交流の促進、特に外国人旅行者の訪日の促進を図ることは、グローバル化が進む国際社会の中で、我が国についての国際理解を深める観点から極めて重要である。
 21世紀は世界的な大交流時代であると言われる中、我が国でも2001年の
WTO大阪総会、2002年のワールドカップ等国際的に注目される大型イベントが開催される機会があるが、これは、国際観光交流を促進する上での好機であり、その後のリピーター(再訪者)をできる限り多く増やすという観点から、国・地域等の各主体が連携して戦略的に対応していくべきである。
 こうしたことを踏まえ、現在約440万人に留まっている訪日外国人旅行者数を概ね2007年を目途に800万人とする「新ウェルカムプラン21」の速やかな達成を図るとともに、さらに2010年には訪日外国人旅行者数を概ね1000万人とすることを目標に据えてアジアをはじめとする多様な外国人旅行者の訪日の促進のための総合的な取組みを強力に進めていくべきである。

外客の多様なニーズへの対応
外国人はその国毎に国民性を反映した多様なニーズを有していることから、その訪日の促進を図るためには、それら外国人旅行者の多様なニーズに的確に対応していく必要がある。

具体的施策の方向
外国人旅行者の多様なニーズに対応するため、国、地方公共団体、旅行会社等が連携しながら、実施する施策の方向は以下のとおり。
個人客向け情報提供サービスの充実
市場調査に基づいて、対象とすべき顧客層に的を絞った訪日促進キャンペーンの積極的な展開
訴求力のある映像メディアやITの積極的活用等による効率的な情報の発信
我が国の旅行情報を外国人旅行者へ提供する役割を担う海外の旅行案内書等の情報の正確度の確認及び事実誤認等の是正のための体制の整備
地方空港における航空チャーターの運航促進等諸外国との航空ネットワークの充実と地方港湾における国際旅客船の就航促進
外国人の多様な関心に応える旅行商品やサービスの整備
   
様々な連携強化
外国人旅行者の訪日の促進を図るためには、国、地方公共団体を中心に、旅行会社、宿泊施設経営者、交通事業者等多様な主体が連携して戦略的に対応していく必要がある。

具体的施策の方向
外国人旅行者の訪日の促進を図るため、様々な連携を図り実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
韓国等近隣諸国と国境を越えて連携した「東アジア広域観光交流圏」の設定及び新たな観光魅力の醸成を踏まえた誘客活動による域内への来訪促進と域内の相互交流の促進
国による二国間観光協議による国別交流目標の設定と相互交流の枠組みの確立
コンベンションビューロー等によるコンベンションの積極的誘致
映画ロケ隊を誘致することにより、映像媒体を通してロケ対象地の観光振興を図ることを目指した、ロケ隊誘致のための支援組織(フィルムコミッション)の設立、組織化
入国手続の簡素化(ビザ発行の容易化やオリンピック、ワールドカップ等の国際的大型イベント開催時におけるプリクリアランスの導入の可能性の検討)、青少年交流の拡大等に向けての関係行政機関における連携及び国際機関・団体と在外公館との連携
   
外客受入れ体制整備
外国人旅行者が一人でも安心して旅行を楽しめるように、国、地方公共団体、民間が連携して、大都市をはじめとする各地域において外客受け入れ体制を整備する必要がある。また、安全な社会は観光客を受け入れる上での基盤であるということを再認識し、引き続き安全な社会の維持に努めていくことも重要である。

具体的施策の方向
外客受入れ体制を整備するために実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
通訳案内業務の見直し等による通訳案内体制の充実
善意通訳をはじめとするボランティアガイドの熱意を生かせるシステムの充実
広域的な連携にも配慮した外国語表示の案内板等の整備、携帯情報端末を活用した外国人向け案内サービスの拡充
ウェルカム・イン等外国人向けの低廉な宿泊施設の充実
滞在経費や移動経費の低廉化のための各種割引制度の充実及び積極的な情報の提供

5. 観光産業の高度化・多様化

 観光産業は、21世紀の基幹産業としてその成長が大いに期待されている。しかし、観光産業が真に基幹産業としての地位を確立、維持していくためには、国民の多様なニーズに応え、国民に対して魅力的な余暇の過ごし方を提案し、提供する高度なサービス産業として進化を遂げていく必要がある。

国民ニーズに適合した「企業改革」
観光産業が真の基幹産業として期待される社会的貢献を果たしていくため、旅行会社、宿泊施設経営者を中心として、業態をも念頭に入れ、より大胆な「企業改革」に取り組んでいく必要がある。

具体的施策の方向
実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
−旅行会社による取組み−
旅行取引のIT化に対応した情報提供機能の強化、そのための設備投資及びマーケティング、コンテンツの強化
情報提供機能強化のための旅行会社同士の連携、ホテル・旅館、公共交通機関等のサプライヤーやシステム事業者等異業種との連携、海外との連携
企画力、専門性等のある高度なコンサルティング機能の充実、きめ細かな顧客対応等による付加価値の高い旅行商品の提供
コンサルティング機能の強化のため、業界全体での研修の充実等の取組み、旅行アドバイザー又はカウンセラー資格制度の検討
新商品の開発、マーケティング等における提案力の強化、宿泊施設の在庫管理、送客管理等を外部委託する際の受け皿としての対応等、観光産業全体の「企業改革」の主導役としての取組み
   
−宿泊施設経営者等による取組み−
中小宿泊施設の空室在庫管理、イールドマネジメントの強化、コスト管理の徹底、サービス内容の充実等の経営改革
宿泊等の予約機能の充実や効率的情報検索システムの充実等、インターネットによる情報提供機能の向上による利用者利便の向上
均質化したサービスや割高感のある料金に係る改革の実施
泊食分離の導入やIT化への対応等多様なニーズに対応したサービスの改善
   
−旅行会社及び宿泊施設経営者等の連携−
経済社会の変化に対応した観光産業全体の意識改革、「企業改革」のための共同での取組み
高齢者、家族連れ等が旅行しやすい環境づくりのため、顧客層ごとに施設面、ソフト面からのきめ細かい市場調査、積極的な商品開発、移動経費を含めた価格の多様化
最新の経営技術ともてなしの心、思いやりの気持ちをともに基礎においた優秀な人材の確保・育成
   
観光産業の社会経済への貢献の大きさに関する積極的PRとその組織的推進
観光産業や観光産業従事者の果たしている役割の重要性を社会に浸透させる取組みを進めるとともに、観光振興に当たっては、観光産業の組織化を進め、積極的に連携し戦略的に取り組んでいく必要がある。

具体的施策の方向
実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
客観的な議論を行う上で必要とされる観光産業の市場規模、経済波及効果についての定量的分析
民間事業者等の積極的な連携と戦略的な取組み、組織化による一体的推進
関係企業、団体がまとまりを持って行う観光産業の重要性についての積極的なPR
関係団体が個々に開催しているトラベルトレードショー等の事業についての連携強化、効果的な事業として再構成することについての検討
   
優秀な人材の確保・育成のための総合的取組み
観光産業は高度なサービス産業であり、観光客がいかに快適に過ごせるかが重要であることから、優秀な人材の確保・育成が特に求められている。

具体的施策の方向
優秀な人材の確保・育成のため、実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
関係者が連携した観光学に関する研究の充実
総合的、効率的な人材育成をめざした産官学の連携ネットワークの構築
高等教育機関における、より実践的なカリキュラムの設定を通じた人材育成の促進
観光分野における高齢者の再教育システムの確立
高等学校等におけるサービス教育の質の向上
過疎、離島地域等における観光客の宿泊の手配、観光地の案内等を行う体制の整備、人材の育成
   
新しいツーリズムへの対応
旅行に対するニーズは多様化してきており、「エコツーリズム」、「グリーンツーリズム」、「産業観光」、「クルーズ」というような新しいツーリズムに対する期待も高まってきているが、こういった新しいツーリズムへ適切に対応していく必要がある。

具体的施策の方向
新しいツーリズムに対応するため、国や地方公共団体等において実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
多様な旅行ニーズに対応した地方自治体やNPO等の新しいツーリズムの創造・定着に対する取組みへの支援
新しいツーリズムについて適切かつ安全に案内できる人材の育成、組織化
新しいツーリズムについて、資源の選定や取組手法等に関する情報交換のためのネットワーク形成支援

6. 連続休暇の拡大・普及促進と長期滞在型旅行の普及

 我が国は労働時間の短縮が進んできているとはいえ、未だ一斉労働、一斉休暇の傾向が強く、この影響を受けて、観光活動においても季節・時期によるピーク集中度が高い状況にある。このため、我が国における観光は、短期滞在型の観光に特化していると言っても良い状況にあり、平均宿泊日数もここ数年間平均1.6泊から大きく変わっていない。
 このような状況から脱し、真にゆとりある観光を振興していくことが21世紀において豊かな生活を実現していく上で求められている。
 このため、今後は、連続休暇を拡大し、長期滞在型旅行の普及を推進していくことが必要である。

長期滞在型旅行環境の整備
長期滞在型旅行を普及していくため、労働時間の短縮及び休暇制度の改善を促進する。
また、家族旅行は家族の触れあいの機会を増やすという重要な意義を有するが、親が休暇を取れても子供が学校を休めないため家族で旅行に出かけられないという実情も踏まえた休暇取得のあり方を検討する。

具体的施策の方向
休暇制度の改善と長期滞在型旅行に適した環境を整備するため、以下に掲げる事項について国民運動を展開する。
祝日三連休化の拡大等連続休暇の普及・促進
週休二日の土曜日が祝日になった場合の月曜日又は金曜日への祝日の振替や職場における話し合いによる二週間程度の長期休暇制度の導入等、連続休暇の取得の容易化
家族と共に過ごす場合には職場の有給休暇に相当するような年間休暇枠を設定する等学校における児童の休暇取得の容易化
年次有給休暇の取得率向上の環境整備
   
長期滞在型旅行商品の開発等
長期滞在型旅行の普及を図るためには、地方公共団体及び旅行会社が中心となって、長期滞在型旅行商品の開発等を行う必要がある。

具体的施策の方向
長期滞在型旅行商品の開発のために実施する具体的施策の方向は以下のとおり。
連泊割引等の長期滞在型旅行向け料金システムの導入・普及
温泉保養、農業体験等観光地における長期滞在型の各種観光資源・メニューの開発
お祭り等によるテーマを設定した、地域の連携
家族単位での長期滞在型の旅行商品の開発及び普及のための国民運動の展開

7. 国民の意識喚起

 観光は、I.2.に記述したように、人々の生きがいや安らぎを生み出し、ゆとりとうるおいのある生活に寄与するのみならず、国際相互理解の増進等にも貢献するものであるが、このような観光の意義を一層充実させるため、以下のような国民の意識喚起が求められている。

国民全体の意識喚起
観光による交流を通じて、内外からの多様な観光客や住民がゆとりとうるおいを得るためには、あいさつ等の日常的、基本的マナーのあり様について、観光客と接するような事業に従事している者はもちろんのこと、国民全体が心がけ、観光による交流をより快適なものとすることが重要である。
このため、家庭や学校においてマナーやホスピタリティに関する教育の充実を図ることや日常からのあいさつを国民的運動としてもりあげていくこと等が必要である。
   
観光客の意識喚起
外国や国内各地を訪れる観光客にとって、観光による交流をより実りあるものにするためには、訪問先の地域のマナーを守る等とともに、地域の人々と積極的に触れあうことによって、その地域をより深く理解し地域住民との交流を深めることが重要である。
このため、観光客には、訪問先の文化、伝統、宗教や生活習慣に対する謙虚な気持ち、寛容な心や尊敬の念が求められる。
なお、日本人海外旅行者数が増大するに従って観光先も多様化し、事件や事故に巻き込まれる場合も増加していることを踏まえ、観光客として外国を訪れる際には事前に現地の治安や安全に関する情報を入手し、十分な心構えと準備をしていくことが重要である。
   
住民の意識喚起
観光による交流を通じて観光客や住民がゆとりとうるおいを得るためには、住民がその日常生活の中で観光客に対するもてなしの心や思いやりの気持ちをもって接することが重要である。
このため、例えば、観光客も観賞できるように植さいを整える等、自宅やその周囲を美しく清潔に保ったり、地域の歴史や文化についての知識を習得した上で観光客に接したりするような地道な努力が望まれる。
このような努力により、一層、地域固有の文化や伝統の保持・発展、アイデンティティ(個性の基盤)の確保や地域住民が誇りと生きがいをもって生活していく地盤がより固まることも期待される。

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