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【<<前<<1.21世紀における新たな国土計画の役割

〇諸状況の転換と国土計画への要請

21世紀の入り口にたった今日、来たるべき新世紀を展望すると、グローバル化、IT革命の進展、人口減少・高齢化、地球環境問題の深刻化を始め、国土を取り巻く諸状況が大きく転換しつつあり、国土計画においても、それらの変化への対応が必要となっている。

第一に、IT革命を伴ったグローバル化の急速な進展、地球規模での競争激化の下で、経済社会の発展のあり方、すなわち、地域の発展のあり方が大きな変化を迫られている。欧米先進国へのキャッチアップを中心としたこれまでの経済発展過程においては、地域の発展方向の重点は、成長産業の地方への誘導や配置と、そのための基盤整備に置かれてきた。しかし、多様な知恵が作り出す新しい価値が発展を支え、国際競争力ともなる今後の経済社会にあって各地域の活力を高めていくためには、地域住民が創造的な力を発揮し、国内のみならず世界の企業や人々にとって地域を魅力あるものとすることが必要である。このためには、地域発展の戦略を国が主導し、全国一律的に示すのではなく、新たな価値を生み出す個性ある地域が、そこに住む多様な人々の創意工夫によって形成されなければならない。国境を越えた人、モノ、資金、情報等の移動が拡大する中で、各国との分業と相互協力を深め、国際社会とともに繁栄し得る活力に満ちた国土の有り様を内外に示すとともに、急速に進展するIT革命が拓く発展可能性を各地域の個性的で多様な発展に結び付け、日本型IT社会を実現し、我が国全体の発展力を高めていくことが、国土計画に求められている。

第二に、我が国人口の急速な減少と高齢化の進展が見込まれる中で、中山間地域等の一部では、すでに地域社会の維持継続が困難となりつつある。今後、こうした事態がさらに深刻化すれば、各地域の誇りとして人々の心の絆ともなってきた地域固有の生活、文化、景観等が失われ、国土を形成する地域の多様性が損なわれることとなる。また、都市の人々に憩いの場を提供するとともに生態系の維持にも不可欠である森林、農地等の自然環境の維持が困難となり、ひいては自然災害等に対する国土の脆弱性が増すことともなる。一方、大都市部においても人口減少が見通されることに加え、産業構造変化により生ずる低未利用地の拡大等の中で、活力に富み、ゆとりと潤いのある大都市を再生することが求められている。こうした状況に対処するため、国土全体を各地の特性に応じて適切に利用し、それぞれの地域に固有な生活、文化、自然等を次の世代へと継承することにより、多様性に富み、安全で美しい国土を維持、発展させることが、国土計画に求められている。

第三に、地球規模での環境問題への対応が迫られている。地球温暖化や、地球規模での食料、資源、エネルギーの供給制約の高まりが懸念される中で、今後の国土計画は、近隣諸国との協力・連携をも図りつつ、地球全体の持続的な発展と調和した国土のあり方を構想するものでなければならない。同時に、自然の保全と享受に対する国民意識も高まっており、これまでの全総計画及び国土利用計画も、自然環境の保全と調和した地域の発展による良好な居住環境の創造を目指してきた。今後はこれにとどまらず、地球規模での物質循環等も視野におき、食料、資源、エネルギーの確保に努めつつ、それらの消費や廃棄において環境負荷の少ない循環型の地域発展を目指すとともに、生態系の多様性を維持しつつ人間の諸活動と生態系が共生し得る、環境共生型の国土形成を図ることが、国土計画に求められている。

【>>次>>○国土計画の目的、基本目標