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【<<前<<〇諸状況の転換と国土計画への要請

〇国土計画の目的、基本目標

国土は、我が国の陸域(地下空間を含む。)及び海域(排他的経済水域を含む。)を中心とした空間であり、国民が、生活、生産等の諸活動を展開する舞台である。これまでの経済発展の過程で形成された一極一軸の国土構造を是正し、南北約3,000キロメートルにわたって展開する四つの主島と約4,000の島嶼からなる多様な自然条件をもつ我が国の国土の全域を、各地域の特性が十全に発揮されるよりよい舞台とすることは、国土計画の最も基本的な使命である。すなわち、国土計画には、現在及び将来の国民にとって有限かつ貴重な資源であるこの国土を、それぞれの時代の要請に対応しつつ、適切に利用、開発及び保全することにより、国土全域での国民の福祉の向上を図ることが求められる。

もとより、我が国は、国民の自由な経済活動を基調とした市場経済の国であり、そのもとで戦後の飛躍的な経済的発展も実現した。しかし、その一方で、我が国の地勢、気候等の自然条件の地域的差異が大きいことも影響し、市場経済は、過密・過疎等、国土利用の不均衡や、公害、自然破壊、地域的な社会資本整備の格差等の問題をももたらした。国土計画は、市場経済がもたらすこれら諸問題に対処し、土地をはじめとする自然資源や、資本ストック、人材等、地域資源の適切な利用を促進することにより、国民全体の福祉向上を実現するものである。

戦後の経済復興から今日までの欧米へのキャッチアップの過程においては、国民生活の豊かさや利便性の向上のために国土を「開発」することに重点が置かれる傾向があった。これに対して、今後の国土計画では、人口減少・高齢化の進展や環境、資源の制約の高まり等が予想される中で、望ましい国土の姿を実現するため、これまでに蓄積されたストックの利活用、自然の回復や既存集積地の再開発等も含め、適切な利用、開発及び保全を行うことにより、国土をより良い状態で次世代に継承していく「国土管理」の考え方を重視する。

また、既述の国土計画に対する新たな要請を踏まえるならば、今後の国土計画には、@各地域の特性を生かした個性ある発展により、地域の活力を再生・伸長し、地域の自立を促進すること、A各地域の生活、文化、自然等を活かし、多様性に富み、かつ、安全で美しい国土を次世代に継承すること、B地球社会の持続可能な発展に資する国土の形成を目指すこと、が求められる。これら経済、社会及び環境の三面の目標が調和した国土の形成、すなわち、地域の自立の下で、地球社会の持続可能な発展を担う安全で美しい国土を実現し、継承することを国土計画の新たな基本目標とする。

【>>次>>2.新たな国土計画体系のあり方