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【<<前<<まえがき

1.21世紀における新たな国土計画の役割

〇国土計画の経緯、成果と問題点

我が国の戦後の国土計画は、昭和37年に策定された第1次全国総合開発計画以来、国土総合開発法に基づく全国総合開発計画(以下「全総計画」という。)を中心として展開されてきた。(参考資料2

昭和25年の国土総合開発法制定時の国土計画には、戦中における国土の荒廃を修復し、多発する自然災害から国民の生命、財産を守るとともに、食料増産により国民生活を安定させ、さらに電力供給の増大等により産業発展を促進し、我が国経済の復興と自立を実現することが要請され、この目的のために特定地域総合開発計画が全総計画に先立って推進された。その後、我が国の経済復興、高度成長の過程で三大都市圏に人口や経済諸活動が集中し、その生活環境が悪化する一方、地方圏の経済的な停滞が懸念された。このため、全総計画の中心的な課題は、大都市圏集中の弊害を是正し、地方圏の発展を促すことによって、国土全体で予想を上回る経済の拡大・発展を受け止め、我が国の発展力を高めながら「国土の均衡ある発展」を実現することに求められた。戦後50年余を経た今日、人口や経済諸活動の分布が東京と太平洋ベルト地帯に偏った一極一軸構造はなお是正されていないが、全総計画は地域間所得格差、生活格差の是正等に関しては相当の成果をあげてきた。(参考資料3

「国土の均衡ある発展」の実現は、5次にわたる全総計画を貫く基本課題であり続けたが、我が国の戦後の急速な発展とそれに伴う経済社会情勢の変化に対応して、全総計画の課題も、総合的な生活環境の整備のように次第に広範なものとなり、地域の発展のあり方についても、地域格差是正を重視したものから、地域の自主・自立、個性の発揮等を重視する方向へと移ってきた。また、公害や自然破壊等の開発に伴う弊害に対処し、自然環境を保全することも、第2次全国総合開発計画(昭和44年)以降重要視されてきたが、国民の自然享受指向の高まりに加え、地球環境問題への対応が要請される今日、資源循環型で環境共生的な国土形成を図ることが国土計画の重要な課題となっており、「21世紀の国土のグランドデザイン」(平成10年)は、こうした考え方を重視したものとなっている。(参考資料4

国土基盤整備については、全総計画が、各地域の要望を踏まえつつ、必要性の高い事業等を全国的な構想の中に位置付ける場となったが、厳しい財政事情の中、計画内容が広範になる傾向があることに対し、重点的かつ効率的な国土基盤整備に向けた指針となり得ていないとの批判もある。

一方、昭和40年代後半には、開発に伴う地価高騰、乱開発による土地利用の混乱等に対処し、計画的な開発を進めるため、特定総合開発地域制度や土地取引規制制度を備えた新たな国土総合開発法案が策定された。しかし、折からの地価高騰への対処を特に重視する観点から、昭和49年に、国土利用の基本方針を示す国土利用計画、土地利用基本計画制度や土地取引規制制度等を定めた国土利用計画法が制定され、国土総合開発法は従来通り存置することとされた。こうした経緯から、我が国の国土計画は、国土の総合的な利用、開発及び保全によって望ましい国土の実現を構想する全総計画と、実体的な土地利用調整等の運用の指針として国土利用の基本方針を示す国土利用計画が並立する体制となっている。

国土利用計画法には、その制定の経緯から、地価高騰や乱開発による土地利用の混乱等の防止、是正に資することにより、望ましい国土利用の実現を図ることが期待された。同法制定以降、我が国経済の高度成長期が終焉したこともあり、概して開発需要は沈静化したが、昭和60年代のバブル期には地価高騰が再燃し、同法に基づく監視区域制度等がその対処方策の一環として活用された。また、平成元年には土地基本法が制定され、公共の福祉を優先した適正かつ計画的な利用等の土地に関する基本理念が定められ、国土利用計画はこの基本理念実現の役割を担うものと位置付けられた。(参考資料5

さらに、国土計画をめぐっては、大都市圏計画、地方開発促進計画や地域振興諸法に基づく計画等の関連した計画が多数にのぼるとともに、国土総合開発法に基づく地方総合開発計画等の実際には使われていない計画制度が存置しているなど、国土計画制度が国民にとってわかりにくいものとなっているとの指摘がある。国の行政評価の観点からは、各種計画とそれに基づく施策による地域への総合的な効果をわかりやすいものとすることが必要である。こうした観点から、わかりやすく簡素な国土計画のあり方が求められている。(参考資料6

【>>次>>○諸状況の転換と国土計画への要請