新首都の全体の人口等については、今後の地方分権・規制緩和をはじめとする国政全般の改革等の進捗状況により、移転すべき首都機能の規模やそれに随伴する官民の業務機能等の規模が変わり得ること、また、移転先の近くの既存都市の存在など地域の条件により都市として成熟するために必要となる人口規模も変わり得るものであるので、現時点で精緻な試算を行うことはできないが、現行の行政組織やシステムを支えるために必要な都市規模を最大規模と考え、約60万人程度になるものと想定されている。
これに対応して、首都機能等施設用地や住宅地などに充てるための新規開発面積は、移転先地の地形や、その近傍における既存都市の存在等の状況により変わり得るものであるが、平成4年6月に「首都機能移転問題に関する懇談会」が取りまとめた想定を引用すれば、9,000ヘクタール程度必要である。なお、この面積には、新首都と他の地域とを連絡する道路・鉄道・空港等に必要な用地を含んでいない。
大規模な新都市開発により形成される都市の形態は、一般に、
との二つの型に大別することができる。前者は、比較的狭い区域内にあらゆる都市機能が集中しているので、業務や生活上の利便性が高い反面、既存の地域社会等との調和や土地取得の容易さなどに課題があり、後者は、一つひとつの開発規模が比較的小さいため、人と自然とが近接し、自然環境等との調和が図りやすい反面、小都市間の相互の移動に不便を来し、広域的な都市機能も各都市へ分散されたときには効率性の低下が避けられないといった問題がある。
新首都の都市形態として、それぞれの特徴を比較検討すると、前者には「環境共生型の都市づくり」という基本理念との関係に課題が残り、後者には首都機能が複数の小都市に距離を置いて分散された場合には、首都機能の効率的な運営の確保などに支障を生じるおそれがあるなどの問題点が指摘される。
新首都の都市形態の目指すべき姿としては、両者の特徴をいかしたものとして、国会と中央官庁が集中的に立地している「中心都市」を有する小都市群とすることが適当であると考えた。この中心都市を「国会都市」と呼ぶこととする。
「中心都市を有する小都市群」を空間的にイメージすると、「国会都市」を中心に、人口3万〜10万程度の小都市が自然環境の豊かな数百km2(数万ヘクタール)の圏域に配置されている姿となる。この圏域の姿は、20世紀の首都東京とは全く異なる都市像となり、自然と都市が調和し、人と自然が近接しているという新しい形の都市像となる。この場合、「国会都市」については、都市の中心機能が十分に形成できる規模とする。
都市の間に展開する自然的景観は、このような都市像にとって、美観形成上の大切な要素であり、保全のための措置が十分に講じられる必要がある。
また、このような圏域の姿は、それぞれの新規に開発される都市の規模が比較的小さいため、既存の地域社会との共存・融合が図られやすいという利点がある。