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福島県現地調査意見聴取議事要旨

1.日時

平成10年9月21日(水曜日)16時10分〜18時10分

2.場所

ホテルハマツ2階「開成の間」

3.出席者

(審議会委員)

森会長、石原会長代理・部会長、野崎部会長代理、新井、石井(進)、石井(幹子)、宇野、中村(桂子)、濱中、牧野各委員(10名)

(専門委員)

池淵、井手、鈴木、戸所、森地各委員(5名)

板倉大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

地域の概況について、首都機能移転に関する対応方針について、事前質問事項に対する回答について、意見交換等

5.議事の要旨

今回は、福島県内の首都機能移転先候補地の現地調査を行った後、地域の概況、首都機能移転に関する対応方針、事前質問事項に対する回答について福島県より説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。

(1)地域の概況について

福島県知事より以下の説明が行われた。

首都機能移転の前に、集中豪雨について簡単に説明したいと思う。1週間の間に1,267mmの集中豪雨があった。福島県では、200mmを越える雨量というのはほとんどない。まさに未曾有の集中豪雨であった。

今回の集中豪雨は東北新幹線の西側の地域に集中しており、新幹線の東側、阿武隈地域等においては、大きな被害はない。本県の表明地域の自然災害に対する安全性という点からみても、新都市の立地条件を十分満たしている。災害を通じて感じたことは、自然を無視して新しい都市づくりは行い得ない。本県の新都市の基本理念として自然との共生などを提唱した「森にしずむ都市」を提案している。

福島県の地域の特性であるが、東京から150kmから200kmという近接性があり、開発ポテンシャルの高い東北地方と関東地方の結節点であることから、北東国土軸を形成していく先導的拠点としての役割を担っている。もう一つは太平洋地域と日本海地域を結ぶ横断軸の展開を通じて、日本海国土軸との相乗的な発展が図られる。

高速交通体系の整備発展として、常磐、磐越、関越自動車道を通して、東京との循環ルートが完成している。磐越、北陸、名神自動車道を通ると、仙台から関西へは東京を通るよりも50kmくらい近い利便性の高いルートが完成している。小名浜、相馬という重要港湾の整備も図られている。トライアングル・ハイウェーの整備も進んでおり、2,000年までに空港が完成する予定である。

阿武隈地域は42万ヘクタールあり、東京都と神奈川県を合わせたより若干大きな面積を有している。標高200から700メートルの森林を中心にした一部平坦地を含む中小の丘陵地が広がっており、開発可能地が多く存在する。

この地域は安全で堅固な地盤を有しており、表明地域には活断層も通っていない。地震に非常に強い地域であるため、地震の保険料率も全国で最も安い。

本県の表明地域の選定は、調査対象地域である中通り地域全域から、阿武隈新高原都市構想、FIT構想、南東北中枢都市圏構想等を対象とし、標高500m以下、傾斜度15度未満、建物ドット数20未満の3条件を満たした2,000ha以上のまとまりのある移転適地を選定した。その中から500haから2000haの面積を持つ9つのクラスターを有する12,000haの移転先候補地を選定した。

県の基本構想で示された新首都像としては、豊かな自然環境と共生した都市空間の中で充実したライフスタイルが実現されていくと考えられる。

新都市の整備イメージであるが、広大な緑の中に地形や動植物等の生育環境を最大限尊重し、景観等にも配慮した中小のクラスターから構成されたものである。広域・多核・連携都市として整備されているものとなる。30万から50万都市群が連携する県土づくりを考えているので、8つ目の生活圏ができると考えている。

7つの地域ごとに説明会等も開催してきたが、これからも広報PR活動を展開していきたいと思う。

続いて福島県議会議長より説明があった。

福島県議会においては、平成4年3月に首都機能移転に関する要望を決議し、本県への移転に取り組む決意を表明した。平成7年12月に阿武隈地域への移転を内容とする首都機能移転に関する決議を行っている。平成7年からは県議会に特別委員会を設置し、本県選出国会議員との意見交換や隣接4県の議会と協力して連絡協議会を設立するなど積極的に取り組んでいる。

首都機能移転は、活力に満ちた新しい時代の日本を構築していくための歴史的大事業であり、地震等の大規模災害への対応力の強化を図るためにも、是非とも実施すべき国家的プロジェクトである。その実施のためのは、乗り越えるべき様々なハードルがあるが、国民に意義を訴えるとともに自然との共生など新しい首都機能像を示しながら北東地域、本県阿武隈地域への優位性への理解を得ていくこと肝要であり、県議会の果たす役割は大きいと考えている。本県議会においては、県民合意の促進に努め、調査、要望活動を推進するとともに、北東地域等の県議会と連携を更に強化する考えである。

続いて郡山市長より説明があった。

市長であると同時に、郡山広域市町村圏の首都機能移転推進協議会の会長としての立場から発言したい。9つの県の表明クラスターのうち、郡山地域が多くを占めている。郡山地方の圏域は、人口が約60万人に近く、交通の要衝である。具体的には、新幹線で東京から1時間15分ないし20分で郡山駅に到着できる。郡山から太平洋まで71km、日本海まで142kmで太平洋と日本海を結ぶ道路が地域連携軸として整備され「サザンクロス・テクノポリス」と表現しているが、この地域の中に表明地域が含まれている。

東北は「寒い、暗い、遠い」と言う印象が強いが、郡山市では、年間の平均気温が13.2℃、東京が15.6℃、1月の気温が1.7℃、東京が3.8℃、年間降水量が1,102mm、東京が1,302mm、先進7カ国の首都ではワシントン、ベルリン、オタワは郡山市より寒く、ロンドン、パリ、ローマは若干暖かいという状況である。積雪は平成9年度では、10cm以上積もったときは4回だけである。東京より少なかったのではないか。

市町村としての住民に対してどのように働きかけてきたかというと、推進協議会を設立し、地域住民の理解とPR等を図ってきた。協議会の事業としてはシンポジウムの開催、圏域内の全世帯にPRのパンフレット等の配布、民間団体のイベントの支援、市町村の職員の研修等を行っている。10月31日には「首都機能移転フォーラム」を開催する予定である。また首都機能移転の民間連絡協議会、青年会議所等によるイベントに対する支援等を行い、地域住民の理解を深めていきたいと考えている。

阿武隈地域は選定基準を全てクリアしていると自負している。分権型社会を実現しようと意気込みに燃えている状況である。

次に首都機能移転促進協議会長より説明があった。

平成7年5月に東北経済連合会が首都機能移転にあたって、東北の適地は宮城県南部と福島県阿武隈地域であると緊急提言した。その後、移転を促進すべきということから、誘致運動とは違うかたちのプレゼンテーションをしていくための促進協議会をつくった。

クラスター方式の表明地域になる前に、福島県商工会議所が「あぶくまベルトシティー構想」というのを出した。これは阿武隈地域を道路で結んで首都機能を配置していくという構想であった。これは後にクラスター方式になって、なくなったがこのような形で利用するには阿武隈地域は非常に便利である。そのほかに県の商工会連合会が首都機能移転の決議をし、田沼青年会議所が「セイフティグリーンランド構想」というものを出している。いろいろな盛り上がりがあるので、国会等の移転には、この地域が一番であるということを県内外にアピールする団体をつくろうということで、経済団体を中心に56団体が集まって、平成8年3月に福島県首都機能移転促進協議会をつくった。56団体の中は、経済団体、農林団体、漁業団体、医師会、薬剤師会、歯科医師会、社会福祉協議会、私学団体総連合、婦人団体総連合、2つの地方紙、4つの民間放送、ラジオ2社である。活動の内容は、国会等が移転してきたときに、メリット・デメリットがあるということを含めて、深く理解する必要があることから、シンポジウム、講演会を開いてPRを進めてきた。しかし対象地域になっているところは関心が高いが、その他の地域は関心が薄い。九州地域とか北陸地域とか、また関西地域等に出向き、首都機能移転の必要性、阿武隈地域は非常に便利な地域であるというプレゼンテーションをしている。福島県内5ヶ所でアンケート調査をしたところ、50.2%の回収率で福島県への移転に89.4%の方が賛成、不必要という方が1.5%、どちらとも言えないが9.1%ということであり、県内の世論形成もしくは理解度は深まってきていると感じている。これからの活動の目標として、今年は石川県、福井県にPRにあがりたい。シンポジウムは「森のコンサート」という形で10月18日に石川町で行う。講演会の開催、パンフレットの作成、ホームページ等の作成によって、PRに努めていく。

最後に会員の中には、促進協議会ではなく、誘致協議会にした方がよいという強い発言もある。しかし、誘致で決まるものではないと私は思っている。国家百年、二百年、三百年の計であり、誘致という言葉は入れていない。

(2)事前質問への回答

福島県企画調整部長より事前質問事項に関する回答が行われた

国土軸への影響であるが、各国土軸に相乗的発展が図られること、大きなインパクトをもたらすことなど先導的役割を果たすと考えている。

西日本への影響については、西日本国土軸以外への首都機能の移転は21世紀の日本の進路を明確に象徴するものとして西日本地域にも好感を持って受け止められると考えている。西日本へのアクセスについても福島空港の活用などから利便性は確保できると考えている。

全国的な交通ネットワークについては、海外との直接的なアクセスルートを含む自立的な交通圏域を形成することができ、全国の主要拠点間を多様な交通手段でネットワーク化していく重層的複合的な交通ネットワークが形成されると考えている。

本県の新都市像として、自然と共生したヒューマンスケールの小都市郡が、広大な地域の中心にゆとりを持って展開し、その中で営まれる多様なライフスタイルを通じて、地域に根差し、かつ国内外の発展をリードする、新しい情報を発信していく、こういうことが可能な都市を提案している。都市づくりのイメージについては、いくつかのクラスターに3権を分けて導入し、各クラスターの特性を十分に活用することを考えている。

東北新幹線へのアクセスについては、郡山−新白河間は30〜40分で結ぶことが出来る。新都市の整備には、クラスター間を結ぶ新しい軌道系交通システムを導入することによって、さらにアクセス時間を短縮できる。

土地取得の容易性については、本県に開発プロジェクトがいくつかあるが、地元の合意の形成を第一に進めてきている。今後ともこうした考えで取り組んでいくと考えている。

地震災害の恐れについては、本県の表明地域は、花崗岩質で非常に地盤が堅固である。全国的に見ても地震に対する安全性が極めて高く、過去に発生した大規模な地震や同程度の地震発生の想定から見ても安全性は十分確保されると考えている。東京と新都市は複数のルートで結ばれているので、ネットワーク上で被害が生じても機能分担や連携を十分に確保できる。

東京の災害対応能力の強化等については、東京と同時被災の可能性は極めて低い地域である。更に東京との近接性等の立地的適性を活かして、緊急災害対応の司令塔としての機能、もちろん、国等が管理する各種データの情報バックアップ機能、災害時の人的、物的支援をしていく拠点としての機能、企業の情報・データ等をバックアップする機能などを新都市に整備することは有効であると考えている。

次に那須岳の噴火については、表明地域に過去のデータから灰が降ることはほとんどあり得ないと考えている。

福島地方の気象台白河測候所のデータ及び福島空港、東北・磐越自動車道東北新幹線の実績から、雪については影響はほとんどないと考えている。

水供給の安定性については、県の基本計画で、中通り地域は2010年で均衡安定しているが、計画策定後の情勢を踏まえ、中・長期的観点から水需給の調整を図ることによって、新都市の成長段階に見合った水需要に十分対応可能であると考えている。

既存都市との関係については、本県は広域多核連携都市として整備されており、新都市は県中、県南、磐城地方の3つの生活圏を頂点とする、三角形の中央に位置することになる。郡山市をはじめ、近隣の母都市との円滑で効率的な連携や機能分担が可能であると考えている。

新都市づくりに当たっては、自然的環境と都市活動がバランスを保ちながら展開される必要があり、里山などの身近な自然空間を生活の中に取り組んだ地域資源管理、あるいは活用システムを確立して行くべきと考える。そのためにもクラスターの設定、配置、開発、都市構造の形成、自然の保全に当たって、都市活動との関係を総合的に位置づけるなど、地域全体として「森に沈む都市」の理念に沿った共生策を展開する必要がある。

環境負荷量については、大気汚染、動植物、ゴミ、廃棄物などについて整理を行っているが、詳細な検討については、事業の熟度等を踏まえながら進めていく必要がある。環境負荷の軽減に向けて、クラスター型のヒューマンスケールの都市配置、地域資源の管理、自動車交通から軌道系交通への転換、リサイクルと圏域内の資源循環など、新しい都市運営、管理及び住民参加のシステムの確立が必要である。

環境面における地域の合意については、新都市の環境への影響について、地域住民との情報の共有が必要であり、計画の熟度に応じ環境影響評価などを行い、その結果を計画にフィードバックできるような取組が有効であると思う。

隣接する県との連携についてであるが、FIT構想や南東北中枢広域都市圏構想、知事との意見交換などがなされている。現時点では、阿武隈地域単独での移転を想定しているが、今後の審議会等の動向によっては、隣接県との連携と機能の分担についても検討する必要があると考えている。

首都機能を有する自治体については、住民自治あるいは団体自治を原則に、地域住民に格差のない行政サービスの提供、首都機能都市としての特別な行政需要に応えていくことが必要であると考えている。特に本県は多くの市町村を含むクラスター型を想定しており、地域の意向を十分に踏まえて、既存の市町村を基礎としながら、広域的、一体的な行財政運営をしていくことが必要であると考えている。

地域住民の受け取り方や受け入れ意向については、県民の理解が最も重要であるとの認識のもと、様々な形での県民の理解促進と合意の形成に努めている。県民アンケートの調査結果などを見ると、自然環境への影響なども懸念されており、自然と共生した新都市の具体的なイメージ等について、明らかにしていく必要がある。

新都市の立地についてであるが、新都市づくりに当たっては、生活者の視点に立ったコンパクトなヒューマンスケールの都市づくり、資源循環型の都市づくり、地域住民が積極的に都市の運営に参加する都市づくりが必要であると考えている。こうした都市づくりを進めるに当たって、豊かな自然環境やネットワーク型の県土構造など、優れた特性を生かしていくことを考えている。都市の建設、運営コストについては、生活のゆとりの創出、環境への負荷の軽減など、21世紀を代表する都市の姿を実現すべきという観点から重要であると考えている。

(3)学識経験者による説明

福島大学教授より以下の説明があった。

私は大阪生まれの大阪育ちであり、九州の佐賀大学を経て、福島に来た。実際に来てみると素晴らしい地域であり、大阪に帰る話が何度もあったが拒否を続けている。どこが良いというと自然環境が抜群である。昨日も南会津の下郷町へ行って来たが、見事な自然環境である。

首都機能移転は大都市の抱える問題と地方の抱える問題を新しいプロジェクトを提起する中で解決していくことと考えている。

1番目の問題として、東京、神奈川、千葉、埼玉合わせて面積で言うと13,000km2強である。福島より狭いところに人口3,200万人、我が国の人口の26%が集まっている。銀行の貸出残高の45%、情報関係の売上高の60%、4年制大学の42%、115万人の大学生が首都圏に集まっている。大学生の数は石川県や富山県の人口と同じであり、非常に過密である。戦時体制から戦後今日まで集中させることによって国際競争力を強化してきたが、それが非常に問題になっている。地方分権は権限の問題と財源、人、情報を一緒に取り組まないと現実は難しい。このようなことから首都機能移転の論議は、首都としての東京、国際都市としての東京という2つの問題を東京都が抱えることから発生していると思う。首都機能移転を通じて東京を国際的な中心都市にしていかないと国際競争に負けるのではないか。地方は非常に弱体化しており、県庁所在地でも人口が減っているところがある。東北、北海道、北陸、九州、四国という所の持っている潜在能力を高めていくことが21世紀の国土計画の基本になると思う。とりわけ福島県は、東北・北海道と東京との接点という地域であり、日本海側と結びついている。新幹線を高崎から宇都宮までと新白河から新都市まで持っていくと、富山、石川からもすぐにつながる。九州の方は飛行機で結ぶしかない。福岡から羽田空港へ来る飛行機の時間と福島へ来る時間では福島の方が5分だけ遠くなっている。降りてから中央官庁まで行く時間をプラスすると東京が近いとは限らないと思う。ヘリコプターで、阿武隈山系から栃木、そして宮城県の南部を飛んだが、宮城県南部は素晴らしい田園地帯で人が住んでいる。那須は自然環境が豊かな地域である。阿武隈山系は谷筋に人が住んでいる。どこに行っても人が住んでいるが、考え方によっては、その地域を膨らませばクラスターになる。

2番目として、都市として人を集めていくことと自然環境を残して調和させることが、今後の都市計画の基本になる。出てきた一つの考え方は衛星都市構想である。新都市の地域と周辺の衛星都市をそれぞれ独立させて相互関係に持たせていく。それから、クラスターという新しい考え方を入れて、自然環境を残し、ある程度人を集めていくという新しい都市計画が提起されてきたと思っている。クラスターはある程度、人が住んでいることが大切で、そこには昔ながらの藁葺きの家があり、木の橋が架かり、ニワトリ、ブタがいて、新都市圏から20分行けば、田園風景が残っている。日本の歴史を縦に見られるような新都市をつくらないと、農業も林業も理解されず、日本を背負っていく都市になることは難しい。かつて、ほとんどが農村地域で、中央で活躍している多くの方々は農村、農家の出身であるから、計画を立てるにしても、ふる里というのが念頭にあった。しかし、東京生まれの東京育ちの人ばかりなると、これからの農村計画、地方計画については、非常に大きな問題を残すと思う。そういう意味で昔からの牛小屋、豚小屋などが残っているところが、新都市を考える上で重要ではないかと思う。

3番目の問題は財源である。政府には金がなくて、首都機能移転にブレーキがかかる時代である。福島空港の滑走路の延長で203haの土地を買った。農地40ha、山林163haである。地権者が238人おり、誰一人反対するものはいなかった。土地の値段もまだバブルの尾を引いている時期に60億円で買った。これを9,000haに広げると2,700億円で済む。4兆円という用地費はバブルの絶頂期を考えたものである。阿武隈山系は4,200km2という広い土地があるため、民間企業が買い占めるにも非常にリスクが伴う。地価の高騰を抑えるためにいろいろなことを行う必要がないと思う。次に集中的投資を行っていく特別地域地域をつくる上でも、人がたくさん住んでいないので有望ではないかと思っている。

最後に新都市は国土の真ん中でなければいけない、あるいは東京から出ていくのは困るという意見があるが、新都市は普通の人はめったに行かない国の中枢機関がある都市である。最高裁判所に行くためには、相当悪いことをしなければならない。市町村と国の中央機関は区別すべきではないかと思う。外国の事例でも国の真ん中に首都があるのは少ないと思う。1,200万人の東京都民を放置して、新都市をつくって出ていくのはいかがなものか、という意見もあるが、首都機能は東京都民のための施設でなく、国全体を総括する機関であるから、これからの21世紀の国土をどのように考えていくかという理念に立って適地選定を行ってほしい。

次に日本大学教授より以下の説明があった。

地震についてであるが、福島県沖に震源を持つ地震が、阿武隈地域が影響を受ける震源として一番可能性が高い。過去にマグニチュード7.5の地震が2回発生している。太平洋に面した地域では少し被害が出ているが、阿武隈地域では被害が発生していない。マグニチュード7.5の2倍のエネルギーを持つマグニチュード7.7という地震を想定して、地表面加速度を計算しているが、阿武隈地域の大部分が200ガル以下であり、大きな被害は発生しないと考えられる。郡山では100ガル程度であって、新幹線、高速道路あるいは空港等には被害は出ないと考えられる。

活断層については、阿武隈地域に明瞭なものはない。双葉断層と福島盆地の西縁断層帯という2つの断層が隣接している。この2つの断層に対して、県では活断層調査委員会を設け調査している。双葉断層は活動間隔がだいたい7,500年から1万年程度で、最新活動は2,000年前であるので、この間隔活動がそのままいくと、だいたい5,500年程度大丈夫である。福島盆地西縁断層帯は、間隔期間が大体6,300年から8,200年程度と見ており、最近の活動時期は1,000年から2,000年で、これから4,000年程度は大丈夫でないかということになる。双葉断層あるいは福島盆地の西緑断層帯でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合、地表面加速度は200ガル以下となっている。いずれにしても、阿武隈地域は地震に対してあまり心配することはないと考えている。

次に福島大学名誉教授より以下の説明があった。

阿武隈地域の自然的概況であるが、山地を構成する主な岩石は、中生代の花崗岩であり、中生代の末期には、既に山地の原型は出来上がっていたと考えられる。それから1億年、安定して陸地のままで、侵食作用が静かに進行し、現在見るような穏やかな山地となっている。地形的特徴は3つほど上げられる。1つは細かく枝分かれした谷とその間の小さな丘に代表される細かい起伏である。2つ目は、所々、硬い岩のある所が残丘となって残っているが、長い間の侵食で、穏やかな山容となっている。3つ目は、山地の主要排水系である阿武隈川と久慈川が低いところを流れており、それに注ぐ支流の一部がしばしば深い渓谷を形成している

全体には緩やかな地形で、古くから人間による利用が隅々まで行き渡っていた。谷は水田に、傾斜の緩やかな斜面は畑に変えられ、丘の上部は山林として利用されていた。いわゆる二次林であるが、花崗岩の風化したマサ土は条件があまり良くなくアカマツが目立つ。また気候も冬寒い割に雪が少なく、霜が強いという内陸性の気候で、極相もナラ林止まりであると考えられる。ただし峡谷の部分は、地形的な極相に近い自然度の、生物多様性の高い植生が見られる。地下水は深いマサ土の下にあって、豊かであると思われるが、細かい地形にしたがって分かれており、人間が利用できる水源としては小規模なものが多い。

主要な排水系は阿武隈川であるが、県の北部付近に顕著なディスチャージポイントがあり、度々、大きな水害を起こしている。また内水被害もしばしば見られる。水質も決して良好ではない。

こうした阿武隈山地での都市開発の留意点は2つほどあげられる。1つは阿武隈川の水源地帯の開発である。保水機能を低めないで、むしろ高めるようにすべきである。都市というものは雨水を嫌って、ストレートに川に流してしまうため、下流で水害を引き起こすことのないように留意が必要である。調整池を造るのも1つの方法であるが、余り荒っぽい排水管理をすると自然を荒廃させて、保水機能の低下が懸念される。降雨時の表面流出も含めて、周りの自然に影響しないようなきめ細かい排水系の保全管理ができる都市を望んでいる。

森林ビオトープも望まれるが、土壌、気候の特性に十分配慮する必要があると思う。阿武隈川は水質の上でも厳しい状況にあり、排水処理も徹底して欲しい。

第2点は新都市のための水源開発である。地形的に見てダムの建設は困難ではないかと思う。ダムを造ると下流域の湧き水が枯れて植生に影響することにも注意を払って欲しい。流域外導水の考えもあると聞いているが水は地域の基幹要素であり、給水する側、される側の両方の地域の自然と住民生活にどのような影響があるか、よく見極めて欲しいと思う。

自然との共生のためには、自然のシステムがよくわかってなければならないが、必ずしもそうと言えない現状がある。「自然との共生」が言葉だけに終わらないために、既存の技術の積み上げだけでなく、積極的な調査と研究に基づいた、新しい対応が必要と思う。

(4)質疑応答

以下のとおり、質疑応答が行われた。

・候補地が5つも6つもあるが、その中のどれを中心に考えているのか。クラスター方式といっても、行政、立法の中心はこの辺であるとか、そういうことがないといけないのではないか。それから、西の方は「東京より北は未開の土地」と言っている。宮城県南部、福島県、茨城県、栃木県は「利根川より北でなければいかん」と言っている。このあたりの問題を福島県はどのように考えているのか。

→連担する都市というのは、コストが高い。100万都市、200万都市を見ても非常にコストが高い。新しい県土づくりの基本的な考え方は、東西南北に3本ずつの交通網である。一番南はいわきから新潟に抜ける289号である。2番目は磐越自動車道、一番北は相馬から米沢に抜ける道路である。縦は東北自動車道、常磐自動車道、また米沢から鬼怒川に抜ける道路も高速化、自動車専用道路として計画しつつある。この3本の結節点を、30万から50万都市、ヒューマンスケールというか人間サイズの都市にしていくのが、県土づくりの理念であり、それ以上の都市にすると非常に住みにくい。この計画をつくるときも、新宿みたいな所がないと都市でないという意見もあったが、これから若い人は家庭を大事にし、あるいははっきりした目的をもって遊びをする等、ライフスタイルそのものが変わってくると考えている。2,000haというのは大きいが、そう大きくない都市群を造っていくのが、大切ではないかと思っている。
利根川以北の問題に関しては、それぞれ候補地があるので、コメントしない方がいいと思う。私どもは、この地域が一番いいと思っている。ただ1つの逸話を述べると、平成3年に栃木県知事と会ったとき、東北、北海道は未利用地が多く、新しい時代のライフスタイルなり、理想を求めて都市づくりを進める場合、北東国土軸が理想を求めやすいということを話した。その一つのシンボルが「利根川以北」という言葉に象徴されている。それぞれの県が、自分の所が一番いいと思って、条件を示していくことが大切ではないかと思っている。

・西白河の東部地区に、クラスター別に機能を考えているのがよくわかったが、気になるのは移転の条件の中に土地取得の容易性という問題がある。ここは土地が安いということもあるし、非常に同意されているということがあるが、ほとんどが民有地であるので、容易に確保できるのか気にかかる。
もう一つ、首都圏で水の確保が非常に問題になった。先ほど、水質、水の確保というのは必ずしも容易ではないという御意見をうかがった。その辺について、もう少し突っ込んだ話を伺いたい。

→土地取得の容易性という点では、ほとんどが民有地であり、国有地は予定していない。この地域は山林が多く、農業が中心である。土地がまとまっていないが、非常に協力的な土地である。土地所有者は多くなるが大きな土地を持っている人はほとんどいない。最近の農林業の事情を考えていただければ、3割は減反という中で、農業に対する不安がある。売れない林業も課題になっている。この地域にこういう機能を持たせることについては大きな不安と期待を持っていると思うが、協力はいただけると考えている。

水の確保については、2010年までは計画上拮抗しているが、水田は3割が休耕田、水を多く使う企業は国外へ出て行く環境下で工業用水の需要はそれほど大きくはならない。水需要を見直していけば、賦存量はあると理解している。

→水の問題に付け加えると、水資源の賦存量は、関東圏を1とした場合、福島県では1人あたり、13.4、渇水年でも13.5、この内訳は、中通りが8.3、浜通りが11.8、会津が35.5、渇水年で、中通りが8.4、浜通りが11.6、会津が35.5である。水の場合、権利の問題であり、他人の財産の話をしなければならない。全体的にみると他人の財産でも使ってないものがある。また、これから水資源開発をするダム等もあることを考えると、全体的に十分水はある。

(5)追加説明

続いて福島県議会首都機能移転対策特別委員会委員長より以下の説明が行われた。

本県は戦後長く、首都圏への人と資源の供給県として経済成長を支えてきたが、今日では、新幹線、高速道路、空港などの高速交通体系や情報ネットワークの整備など、開発ポテンシャルは高まっている。本特別委員会は、首都機能移転の国家的な意義を踏まえ、実現を目指して政治活動を展開するとともに、積極的に調査を進めてきた。太平洋ベルト地帯や東京との連携を図るために、新たな大規模プロジェクトを必要としなければならない地域と異なり、阿武隈地域を中心とする北東地域こそが現実的に移転が可能な唯一の候補地であると確信を深めた。

阪神・淡路大震災から3年半が経過したが、南関東大地震に対して、首都機能の確保に関する議論が深められていないのは残念である。阿武隈地域は、昔から「岩代の国」と言われたように地盤は地震に強く、活断層がないことから、最大の条件を満たす地域であると考えている。

最近の深刻な不況から、首都機能移転を取り巻く環境は厳しいが、本特別委員会は、このような状況を打開すべく全力で取り組んでいる。

続いて福島県農業協同組合中央会専務理事より説明が行われた。

農業者の立場から首都機能移転についての意見を述べたい。

福島県は、全国有数の農業県であると自負している。福島県の首都機能移転対象圏域内の総生産額は、1,000億円、県内総生産の3分の1を占める。

私どもが直接うける影響は生産基盤である農地、林地の提供である。環境変化に伴う水資源の競合という課題も想定される。メリットとしては約60万人と見込まれる新たな消費地が身近に誕生する。特に生鮮野菜等を中心に首都圏に向けて販売活動を展開しているが、就業の機会が増えることなどが期待されている。

土地の提供については、予定地域内の主力農産物であった養蚕は、最盛時の1%台まで低下をしており、桑畑が荒れた状況になっている。代表的な作物の1つである葉たばこ栽培も急激に減少している。米の生産調整も、30年近い取り組みがされており、3分の1程度が休耕という状態になっている。したがって地域全体で効率的な利用調整方策をとると、受ける負の影響を最小限に食い止めることが出来ると見ている。

生活用水を含めた水田用水等、水資源の利用調整については、水田の基盤整備や良質な地下水の活用、さらには、水の利用そのものを基本的に考え直し、創意工夫をしていく必要があるのではないか。水田の基盤整備や良質な地下水の利用を含めれば、十分水利用の調整は活用可能であると思っている。

特に強調したいことは、那須山系を中心とした記録的な豪雨によって、農産物、住居等に被害が発生したが、阿武隈川の冠水した被害を除くと、ほとんどが崖崩れという、自然の開発のあり方、自然を造り替えたことのしっぺ返しという受け止め方をした。福島県の首都機能移転に対する考え方は、自然条件を最大に生かして、それに沿った施設整備を図ることを基本としており、土地所有の大宗を占める農民の立場に立っても、十分配慮された考え方ではないかと考えている。

60万人の消費人口という、県内にはない最大の需要が出現することは、生鮮野菜、果物等の生産振興上、県下全域の農業振興に大きな影響を与えると期待している。

続いて首都機能移転問題を考える県民の会代表より説明が行われた。

当会は、昨年4月、県民に議論の場を提供することを目的に発足した。現在進められているような首都機能移転には、反対の立場を先日表明した。当会は県民世論の過半数を占めるに至った慎重派並びに反対派の声を代弁するとともに、問題提起派であると自認している。反対の理由は2つある。

1つは、首都機能移転の前提3条件が欠落している。3条件の1つは、必要性について国民的議論を経て、合意があること。2つ目の条件は、小さな政府、地方分権体制がほぼ出来上がり、その集大成と仕上げとして首都機能移転が位置づけられること、3つ目の条件は公共事業、開発最優先、経済最優先主義から環境、農業最優先主義への政策展開が既に出来ていること、そこで初めて、自然環境との共生が担保されると考えている。

反対理由の2は、県民議論が不十分であり、県民合意はまだない。知事の号令一過、県内90市町村がこれに従い、県内の名士たちがきっちりガードする。万博やオリンピックの誘致と同じである。21世紀の日本という高邁な理想は、どこかへ置き忘れていないか。賛成理由が「過疎からの脱却」、「地域活性化の最後の賭け」だけではあまりに寂しい。県が策定した基本構想も、県政の谷間として冷遇されてきた阿武隈が、移転地域に祭り上げられ、バラ色の描かれる一方、今住んでいる人たちの一大変化については具体性を欠く。福島県全体の発展と引き替えに阿武隈を国に白紙委任するという懸念がある。基本構想の内容の問題点として、会津地方の森をどんどん伐採している現状を見る限り、「森に沈む都市」は信用できない。首都機能移転が首都圏廃棄物の呼び水となり、県内全域に処分場が造られる懸念もある。猪苗代湖の水に手をつけざるを得ない最終状況が訪れることも予想できるが、その影響も明らかでない。全体費用及び県、市町村の負担についても触れていない等、不安な点がある。

審議会に対して要望が2つある。

以下の点について、審議会の見解を示していただくことで、県内議論のより深化を希望する。

第1、クラスターの行政制度の明確化。阿武隈首都圏域との関係である。2つ、国家的プロジェクトである以上、県及び関係市町村の負担のゼロの明言、及びゼロの範囲・内容の明確化。3つ、阿武隈に移転したときの阿武隈地域、住民並びに福島県、福島県民へ及ぼす影響変化を、考えられる全ての想定の下、国の責任において明らかにすること。

要望の2であるが、現在の県を中心とした誘致運動が、必ずしも県民の合意とは言えない以上、阿武隈が最終候補地に残ったと仮定したとき、受入の是非ついては、福島県民自身が直接かかわって決める最良の方法が担保されることを望む。

続いてインテリアコーディネーターより以下の説明が行われた。

移転先を選ぶことに関しては、地域のエゴを一番避けたいと思っている。日本全体を考えたときに、あるべき所に決めて欲しい。

移転に関しては多くの人が考えることが大切であると言われているが、大人だけの問題ではなく、子供たちにも大きく関係すると考えている。彼らの立場からすれば、新しい国会が出来たときに、中心になっているのは自分たちなわけで、人ごとではないと思える。移転というのは、生きた社会を学ぶにいいチャンスである。子供たちについて、生きる力、考える力が大事だというが、知識だけでなく現実のこういう問題について考えることから、身につくことはたくさんあると思う。首都機能移転に対して子供たちにも考えられるチャンスがあればいいと思う。

新しい都市のライフスタイルについてであるが、福島県の提案している「森に沈む都市」のコンセプトは5つぐらいあるが、目指すところは社会問題を解決したいという点でとても良い。もう一歩具体的進めるために、人間重視の国造りをしてきた北欧のスウェーデン、デンマーク等の生活哲学、ライフスタイル、政策などについても研究すべきではないかと思っている。

続いて青年会議所顧問より以下の説明があった。

我々は21世紀に我が国が世界に誇れる首都をつくり、世界に示す、そんな気概をもって、若者としての視点から首都機能移転という問題に取り組んでいる。首都機能移転というのは、経済などの問題よりも日本人の心に対するアピールが非常に強いと感じている。だから、ハードでなく、国家の首都を担うという地域、ソフトをつくっているという気持ちで取り組んでいる。

取り組みについてであるが、意識の醸成、アピール事業、ビジョンづくりなどを行っている。最も大切なのは、国民に対して夢を与えるような首都をつくることである。全ての国民がやりがい、安心感、夢を提供できる国家づくりを目指したいと考えている。

どのようにしていくかというと、国民参加、国民が首都をつくるという気持ちで、市民、行政、企業が互いにパートナーシップ、対等性を保ちながら、つくっていく時代になっていくのではないかと思っている。そんな意味からも、真の地方・地域分権国家が望ましいと考えている。

21世紀の規範となる首都像であるが、自然、環境、人間を含む動植物がサスティナブルな社会をつくっていくということである。首都とは建物や設備ではなく、働き生活している人々が、首都機能を担っていくと考えている。自然環境と人間の文明社会というのは相反するようにも思うが、人間の英知によって解決していきたいと考えている。

最後に、ゼネラル・エレクトリックの社長室に書いてある言葉であるが「クマンバチは、航空力学上飛べない。でも飛んでいる。アヒルは飛べるのに飛べない」。首都機能移転は自然との共生という非常に難しい問題がある。クマンバチになるつもりで、21世紀に誇れる首都をつくりたいとがんばっている。

(6)質疑応答

・多くの方から自然の大事さ、環境が豊かであるという話があったが、現地を視察した印象から、率直に申し上げると、マサ土という貧化した土壌で恵まれていない。植生を見れば貧相なところであるのがわかる。だから大面積で残っていたのだろうと思う。この所がもし造成された場合、アカマツしか育たないような状態にしか復元できない気がする。そういう意味の生物多様性が低くなっていくことに対して、どう考えるのか。もう一つは、森林の面積が6割ぐらいあるが、集中豪雨、水に対しての保水機能をかなり持っているのではないかと思う。新都市をつくることによって、そういうことが機能的に貧化していく恐れはないか。森林がこの地域の自然のバランスをつくっているわけであるが、造成等の結果によってどのように変わるか。調整池をつくるということだけで十分なのか、森に沈めるということで十分可能と判断しているのか、確認したい。

これと関連するが、花崗岩風化土壌であるから土壌侵食が起こりやすく、かなり土壌が流出する。先ほど崖崩れの話もあったが、問題が起きるのではないか。

最後になるが、森林が大面積残っているということで、連続した自然環境が維持されている。もし分断されると、動物にとっても、生育環境、あるいは移動ということを考える上で問題が起こってくる。もし分断されると動物が里に出てきて農作物に被害が出るなど、いろいろな問題が出る。先ほど国土軸とか交通のネットワークの話があったが、環境の上での環境軸、環境ネットワークについて伺いたい。

→専門的なことは別として、キャンベラを訪問したとき、非常に感心したのは、完全な荒れ地であったのが、都市づくり始まって10年後に木が生えて、20年、30年後に非常に森らしいものが出来てきている写真を見たことがある。「森に沈む都市」というのは、森のあるなしに関わらず、長年かかって都市づくりをしていくということである。キャンベラの場合は小さい灌木くらいしかないところに森ができていった。植生としてどういうものが良くて、どういうものが可能か、専門家でないのでわからないが、森を造っていくという考え方で都市づくりを進める必要があると、キャンベラに行ったときに感じた。

→造成によって自然の多様性が低くなるのではないかという点に関しては、自然の実態がよくわかっていないので、しっかり研究し、自然に最もマッチした極相を考えて復元していくことで、かなり多様性が高くなると考えられる。福島県では、自然度の高いところほど、多様性が高いので、森林ビオトープを形成するのが、「森に沈む都市」の1つの理念だろうと考えている。動物たちの移動に関して、移動の回廊を確保するという意味でのビオトープをつくっていく。今の技術ではちょっと難しいが、夢を追うということで、技術的には対応可能であると思う。保水機能であるが、今までのような造成をすると、保水機能は低下する。問題は都市の基底構造であり、今までのように下水だけを造り、都市の下の1、2ヶ所の貯水池に集めて川に注いでしまうというのではなく、もう少しきめの細かい基底構造を考えれば、自然に害のない、保水機能も低くならないようなものができるのではないか。最近、都市工学の方で大分考えられているので、技術的には不可能ではないと思っている。

後日補足説明

林相について

本県表明地域等の現存植生の大部分はコナラ・アカマツに代表されるコナラ・クヌギ群落となっておりますが、阿武隈地域の自然植生は、イヌブナであると考えられております。

また、マサ土は、透水性が高く、養分が貯まりにくいため、一般的に土壌が貧相だと言われておりますが、肥料散布、表土入れ替えにより、生物多様性を十分確保できるものと考えております。

防災について

マサ土層については、水はけが良く、地滑りの原因となる帯水層が少ないため、地滑りを起こしにくいと考えております。また、土地利用上は、土地改変や土地造成が容易であるという側面を有しており、マサ土層の下は堅固な花崗岩であるため、非常に安定した支持基盤が得られるものと考えております。

なお、マサ土の斜面については、一般的な豪雨時などには崩れやすいという特性がありますが、防災上は、マサ土の深浅や地形条件に応じ、建築基準を遵守することにより十分に安全が確保できると考えております。

・地形や地質の話の説明はあったが、新幹線の西側の地域の地質について説明はなかった。新幹線の西側の地域の自然環境と阿武隈とは決して同じでないと思うが、いかがか。

→地質学的にいうと、新幹線の西側と東側は全然違う。新幹線より東側は花崗岩地帯であり、西側はグリーンタフという凝灰岩系統のものが主となる。土壌侵食の話があったが、花崗岩地帯であるので表土はマサ土で覆われているが、マサ土の風化層厚の浅いところが多くあり、林相が貧相だということにつながっているのではと思う。マサ土というのは、一般に浸食されやすいと言われているが、近畿・中国地方のマサ土と比較すると細粒土が多く、侵食されにくい土壌だということ調査されている。

・資料の中に「自動車交通から軌道系交通への転換」と書いてあるが、大都市は人口も密で軌道系交通が盛んになっているが、地方の都市に行くと自動車交通が基本となっている。自然環境の面から、これからは軌道系交通というのが大きな考え方だと思うが、具体的な計画があるのか。

→1つは軌道系交通を新白河から空港まで、空港から郡山まで新しく立ち上げたい。2つ目はクラスターを結ぶ軌道を考えたい。できるだけクラスターの中へは自動車を持ち込まないという配慮をしたらどうかと考えている。クラスター間の移動は、多少、車を使っても、1つのクラスターの中に、いくつかの小クラスターをつくって、できるだけ軌道と連動して、車は通らないような環境配慮をしてはどうかと考えている。

→郡山から白河まで1つの軌道である。クラスター間を結んでいるのが、もう一つの軌道である。福島県の2〜3万人の都市であると、徒歩か自転車で動けるので、自動車は必要ない。5万の都市になるか、10万の都市になるかは、これからの計画によるものであるが、自転車で国会まで通勤できるようなことを基本的な理念にしたいと思っている。

後日補足説明

新都市においては、自動車交通を主要因とする騒音、渋滞、排気ガス等の身近な生活環境への影響を排除するため、基本的に自動車利用を物流輸送手段に限定し、クラスター内、クラスター間の交通手段として、徒歩や自動車、電気バス、新しい交通システム、軌道系の公共交通機関を利用するなど、生活空間において極力非化石燃料化を進め、良好な生活環境の維持に取り組むこととしております。

また、クラスター内においては、電気バスや小規模な軌道系の公共交通機関が運行するトランジットモールの整備を図るとともに、自動車利用抑制等のための交通需要管理のひとつとして、パークアンドライドやサイクルアンドライドの環境整備を図ることとしております。

さらに徒歩や自転車(電気自動車)の利用を促進するために、質の高いネットワーク化された歩道自転車道の整備を図ることとしております。

なお、新都市の整備にあたっては、東北新幹線と並行し、圏域を南北に縦断する水郡線の軌道敷をも活用しながら、新白河駅からNo.6、9クラスターや福島空港を経由し郡山駅に連絡するLRT等の新しい交通クラスターの整備を行うことにより、郡山駅−No.6クラスター間、新白河駅−No.9クラスター間のアクセスをより向上させ、さらに利便性の高い都市空間を形成することとしております。

・クラスターの中で都市基盤は完全に整備され、公共下水道は完備されるだろうと思う。東京で多摩ニュータウンという3,000ha、人口30万人の都市を造っている。あの地域は4市町であるが、多摩ニュータウンの周りの住民は、同じ社会資本を投下して欲しい、都市基盤を整備して欲しい、下水道は公共下水道で完備して欲しい、という気持ちがある。このため、東京都、市町村は大変負担が大きくなっている。先ほど聞いたデータによると須賀川市では9年度末で18.7%、石川町は0.2%、県全体で33%の下水道普及率である。こういう状況を考えると、かなりの市町村の負担が出る。このようなことまで考えた上で誘致を進めていると理解してよいか。

もう一点は、地方自治体の見直しについても回答があったが、外交、国際交流、治安等の特別な行政需要に応えていくためにも、地域の意向を十分に踏まえながら検討していくという話であった。審議会の前身である、国会等移転調査会の新都市部会というところで、直轄市あるいは、この圏域を独立して、現在の県と同格の地方自治体をつくるということも検討されている。住民の意向調査の場合にも、このようなことを明示した上で、それでも合意が得られるかどうかという視点で住民意向を調べておくことが必要ではないかと思う。

後日回答

新都市建設に当たって想定される自治体の財政負担については、過度な地元負担が生じないよう、かつ新たな財政需要に対応できるよう、国において新都市建設等の基本方針の中で明確に位置づけるべきであると考えております。
例えば、下水道等、新都市の建設に伴って前倒しの財政負担が生じるもの、あるいは、民生及び教育関連等、人口増加に伴う財政負担が生じるもの等、その様態に応じた財源措置のあり方を位置づけるべきと考えています。

首都機能都市としての特別な行政需要に対応するため、広域的、統一的な行政運営を担保する新たな枠組みが必要であると考えますが、その検討に当たっては、首都機能移転の意義、さらには、現在の地方分権の大きな流れから見ても県及び市町村からなる二層制の地方行政制度を基本とすべきであると考えます。

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