平成9年6月20日(金曜日)9時30分〜11時30分
全国都市会館2FホールB
平岩会長、有馬会長代理、石井(威望)、石井(幹子)、石原、宇野、海老沢、堺屋、下河辺、中村(英夫)、野崎、牧野、鷲尾各委員(13名)
森地専門委員(1名)
伊藤国土庁長官、井奥国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、田波内閣内政審議室長、竹内国土事務次官、近藤国土庁長官官房長、五十嵐大都市圏整備局長(事務局次長)他
今後の審議会運営について、交通計画について、世論調査結果について等
今回は、まず、財政構造改革をめぐる経過、議論について国土庁長官から説明が行われ、今後の審議会の運営について意見交換が行われた。次に、交通計画についての森地専門委員からの説明、広域交通インフラの現状等の事務局説明が行われ、引き続き意見交換が行われた。最後に平成9年1月に実施された首都機能移転に関する世論調査結果について報告が行われた。
現在の厳しい財政事情の下で、財政構造を改革し財政再建を果たすことを目指して、去る6月3日、政府・与党の財政構造改革会議のとりまとめが行われ、この内容に沿って「財政構造改革の推進について」の閣議決定が行われました。
この閣議決定では、財政構造改革を推進する観点から、「首都機能移転の問題については、その経緯及び財政構造改革においてあらゆる分野において痛みを伴う改革が進められている状況を総合的に勘案して慎重な検討を行うことを提起する」と言及されております。
首都機能移転に関しては、平成2年の国会決議以来、国会主導で6年半にわたり検討されてきたものであり、また、国土の災害対応力の強化、東京一極集中の是正、さらには東京の生活空間の再整備といった課題に寄与するとともに、国政全般の改革と深くかかわる、大変意義深いものであります。
このような経緯等を踏まえますとともに、現下の厳しい財政事情の下で、あらゆる分野で痛みを伴う改革が進められている状況に鑑みますと、先にご紹介いたしました閣議決定の趣旨を踏まえて、財政構造改革の目標期間であります2003年度までの間は、原則として新都市の建設事業に対する財政資金の投入は行わないことといたしますが、今後とも、審議会に移転候補地の選定作業を継続していただくなど、必要な検討を引き続き進めることとし、この旨を6月6日の閣議において私から報告したところであります。
委員の皆様方におかれましては、以上の諸事情をご賢察いただきますとともに、併せてこれまでの審議状況、今後の見通し等を踏まえつつ、本日、今後の審議会運営について御議論をいただきますよう、お願いを申し上げたく存じます。
スケジュールについては申し上げるまでもありませんが、移転先の候補地が決定しますと、その後東京都と比較検討するという作業がございます。さらに国会が移転先地を法律で決定するという段取りになりますし、それに引き続いて事業主体の決定、あるいはマスタープランの作成、環境アセスメント、地元の関係調整等々、かなりの時間と労力を要するものと考えております。
したがいまして、様々な調査検討が必要となりますので、むしろ結果として良かったということになるのではないかということを私自身考えています。
国家の財政構造は極めて重要なテーマではありますが、国の将来、我々民族の将来の新しい国土政策に関する夢やロマンが実を結んでいくような国家的なプロジェクトに対しまして、それぞれの専門的な立場からご協力を頂いております委員の先生方に、なお一層の高い見地からご協力とお力添えを頂きますようお願い申し上げる次第です。
国土庁長官からの説明後、以下のとおり意見交換が行われた。
1) 森地専門委員からの新都市づくりにおける交通システムの構築についての説明
1番目の話題は、東京の交通問題の深刻さについてであり、「解決できない」という表現をさせてもらう。具体的には、羽田空港の容量制約の問題、成田空港のアクセスの問題があり、第二東名は暫定で湾岸に出すというルートを企画中であるが大変難航し、本格的な都市へのアクセスはまだ計画もないという状況であり、新幹線の容量制約も大変厳しい。
鉄道についても、混雑率はインターナショナルに見ると大変ひどい状況である。色々な努力がなされて混雑率は下がってきたが、まだ大変厳しい状態がある。ピーク時とオフピーク時にそれぞれの方向で所要時間がどのように違うかというデータによると、朝の所要時間がオフピークの20〜40%余計にかかっている。これは、線路上の混雑、すなわち列車の本数が多すぎる問題である。このほかにもターミナルの問題や1時間のうち50数分閉まっている踏切などたくさんの問題がある。
毎朝23区の都境をわたって都心に入ってくる人は350万人いる。前回の運輸政策審議会の答申の時に、15年間に伸びる量を約50万人くらい見込んでいた。そうすると、1本の鉄道200%で運んでも1時間に10万人位なので、さらに数本の鉄道が必要ではないかという議論をしていた。このような問題を解決するために、都心居住をすればよいとか、郊外に職場を移転すればよいとか、あるいはオフピーク通勤すればいいとかいうことが言われるが、それぞれ単発でやっても解決できない。このような非常に深刻な状況を解決するために、首都機能移転が持っている意味は大変大きいと認識している。
そのほかに、大地震の被害が想定される密集市街地のようなところをどのように改造していくのかが問題である。
第2は、新都市をどこにするかについての交通面からの話であるが、すでに調査会で9つの条件が出されている。このことについて、2つ強調しておきたい。
第1点は、国民の素朴な感覚からいうと、新都市はなるべく自分達に近い方がいいということがある。あるいは、その近さも、本来の利便性よりも何が何でも近い方がいいという話になる。1つの例として、かつて1県1空港と言われたときに、必ずしも最も良い位置に空港が立地しないで、県の真ん中に行く傾向があった。空港だから近い方がいいに決まっているのでそう大きな問題はなかったが、首都機能については、なるべく近い方が良いという呪縛をなるべくノーマルな状態に戻すというのが大変重要であると思う。
もう1点は、移転先選定条件の9項目があるが、これで十分かどうかと思っている。特に、200年経っても風格のある都市が日本人に造れるかという心配がある。神戸の復興の時にあるシンポジウムを行った経験から、日本人に限らず今の世界では、そのようなスケールの大きなプランを行っていくことが不得手になっていると感じている。そのときに日本人は長期のことが不得手でも小規模な、あるいは短期的なスケールの話は得意であるという議論があった。
日本人は、小さな区域とか小さな集落については伝統的にデザイン力を持っていると認識している。そのことから考えると、クラスターも、いわゆる関西学園都市的クラスターではなくて、それぞれの街がある特色を持って、これは湖畔で和風でとか、ここは高層ビル系でとか、いろいろなコンセプトをもって小さな集落ごと設計していって、それを空から見るとシンボリックな格好をしているというやり方もあるかもしれない。
そういう意味で申し上げたいことは、場所を選ぶときに、どんな街がデザインできるだろうかという問題で、それはかなり微地形に関わることである。新宿の副都心とか、臨海部の開発みたいなものが日本の首都だといわれると、個人的には寂しい思いをする。そういう意味で、どんな街を空間的・機能的にデザインするのかという観点から移転先候補地の選定をしていただきたい。
また、新都市と母都市との関連性であるが、新しい街をつくるときに、あらゆるサービスを人為的に配置することは不可能であるから、ある一定期間どうしても母都市に依存することになる。その母都市がどれくらいのウェートを持つかということは、母都市と新都市の空間的な距離に関係する。調査会報告の基準では、東京から60km以上ということになっているが、東京以外の、例えば県庁所在地から何キロメートルくらい離れなければならないかという話や住民がどこに住むか(新都市、新都市周辺の計画外開発地域外、母都市、東京など)ということを考えつつ、それが時間軸上でどうなるかということが大変重要かと思う。
3番目に、都市間交通施設との関係で、もしそのコストを一番小さくしたい場合は、例えば、遠隔地の小規模な空港の滑走路をあと1,000m延ばせば、誰もそこに新幹線を敷こうとか、高速道路を敷こうとかいう人はいないはずであり、コストは最小になる。これは一例としてあげているが、このような極端な話がコスト最小ということには含まれているということである。
そこで、既存の都市観光通施設へのアクセス整備で対応したらどうかとか、あるいは便利なところはどうしても集積が生じるので、そこの過当集中の問題を50年、100年のスケールでどう考えるかとか、あるいは全く新しくつくると、10万人にしろ60万人にしろそこから出てくる交通ニーズは極めて少ないため、新しくつくる施設の採算が成り立つかということが気がかりになる。
最後に、都市内の交通システムであるが、10万人なら大体感覚的にはつくばと同様で、つまり自動車以外はほとんど公共交通はないという状況にある。60万都市では、ちょっと集積度の高い県庁所在地のイメージの公共交通となる。50万人くらいの都市では平均的な通勤距離は4〜5kmで、これでは車をやめて鉄道駅まで行ってから都心へ行くとなるとメリットがあまり出てこない。相当高密度に路面電車でも入れておけば別であるが、1本や2本の鉄道しかない状態ではメリットはない。
したがって、現行制度下ではなかなか難しいということになるが、世界の常識は日本とは違っている。とりあえず日本の常識をはずして考える必要がある。すばらしい交通システムを作るには、新都市は限られた人口規模であるが、公共交通が使いやすいようなプランにするということはもちろん可能である。
我々が日本で考えている常識と異なるものを世界の中から紹介する。
シドニーでは1両8人乗り、5両編成のミニモノレールが公共交通として利用されている。また、高速艇による通勤が行われている。ここでは、高速艇優先のルールとなっており、大変珍しい例である。同様の例がバンクーバーや香港にもある。
バンクーバーのバラードという地下鉄駅は都心の一番中央の駅である。日本の地下鉄駅は、常識的に歩道に階段で出てくるものと思っているが、この駅は1ブロックが公園になっており、公園の中を歩いていけば地下鉄の駅にたどり着くというデザインになっている。
ミネアポリスのトランジットモールは、もともと4車線の道路であったが、公共交通のみ走らせ、それ以外は歩道となっている。これは1967年にできたもので、現在世界中に同様のものが60〜70ある。デンバーの場合は、都心の目抜き通り、東京でいえば銀座通りの1丁目と8丁目に大きなバスターミナルをつくって、その間をバスを走らせている。ドアがたくさんある低床式である。
イスタンブールでは、道路の中央にバスだけを走らせることにより、鉄道に匹敵する輸送容量を持たせている。同様のことがブラジルのクリティーバでもなされている。
グルノーブルのトランジットモールでは、バスに替わって、過去に一旦撤去した路面電車をつくり直した。超低床式のLRTで、ここ15年くらい、日本以外の先進国では路面電車の建設ブームであった。
日本では、道路が狭いためいろいろな使い分けができないといわれているが、オランダの小さな町では狭い道路ながら、自転車、バス、右折などのレーンを使い分けている。
リスボンでは前世紀から路面電車が歩道側を走っている。最近名古屋で中央にバスを走らせているが、似たようなことが考えられている例である。
ウィーンでは都心から自動車を排除した。特に、都心の反対側へ行くためには一旦郊外へ出て環状道路を回っていくというルールになっている。都心の道路は歩行者だけが使っているが、それでは余りにも不便なので小さなバスを歩行者の中に混ぜて走らせている。これでも、何の危険も不便もないようだ。
従来は、住宅地の中で歩行者と車やパーキングをなるべく離し、歩行者に快適に歩いてもらうという思想であったが、1976年か1977年に両者を混ぜた方が便利ではないかということでボンネルフというものができた。これはオランダのデルフトの例だが、同様の事例が日本でもたくさんある。
デトロイトでは、自動車工場街をつぶして再開発を行った。真ん中を小さな電車が走っており、ちょうどエレベータを横にしたようなものである。軌道の一端がビルの中に入っていてエレベータの乗り場のようになっている。
セントポールやミネアポリスでは街中のビルの2階をつないでしまって、公共の空間に変えてしまっている。ちょうど、日本の地下街のような空間が2階レベルにできるという状態である。
パリのレアールでは、大きな四角い穴を掘り、中央部が地下4階となっている。ガラスの建物の一番上が地表レベルである。地下4階の広場の下にコンコースがあって、地下6階に鉄道が走っている。
ニューヨークではロープウェーを通勤に使っているという珍しい例がある。ルーズベルト・アイランドという島をニュータウンに開発したが、その中に車で行くにはブロンクスの方に一旦出て、それから回っていかなければならないが、ロープウェーを使えば直接行くことができる。なお、そのニュータウンの中には20分間しか車を置けないので、長時間滞在したい人は車を町の入り口のパーキングに入れ、公共交通で中に入るというシステムになっている。これは20年前にできて、ロープウェーは150人乗りである。
ボルチモアは一時期アメリカで一番危険な都市と言われていたが、都市全体を再開発し、コンベンション・シティーとして再生した。
ボストンのハーバード・スクエアーでは、バスが地下に入ってきて地下鉄と乗り継ぐようになっている。
グラスゴーではミニ地下鉄が利用されている。
チューリッヒの前のトランジットモールでは、道路も公園的な使い方がなされている。
ストックホルムの中央駅では線路の上空を縦断占用する格好で構造物が建てられており、バスターミナルや国際コンベンション・センターになっている。
ストックホルムの南側の再開発では、全くのニュータウンであるにもかかわらず、新しさを感じさせないような都市をつくるというコンセプトで建設されている。
ここで申し上げたかったのは、我々のいろいろな常識をちょっと破ると、いろいろなアイディアが出てくるということである。冒頭申し上げた日本人にいい街が作れるかということと関連して考えると、交通で取り得る政策オプションをたくさん並べて、資料として用意して誰かがデザインしていく。しかし、たぶん1人でやってもトータルとして良いものができるか疑問だし、小集団でやってもうまく行かないだろう。さらに役所でやってもうまく行かないかもしれない。1つのアイディアとしては、デザイン・コントロール室的なものをつくって、コンペを実施したり、トータルとしてのデザインをコントロールする役割を持つ人がいて、そこから外部のコンペに関わる人たちに情報が提供されるといった計画のシステムを作り上げる必要があるのではないか。
2) 広域交通インフラの現状と計画
事務局からの資料説明の後、中村英夫委員、森地専門委員から以下のコメントをいただいた。
引き続き、広域交通インフラについて、以下の意見交換が行われた。
事務局から世論調査結果の報告が行われた。
次回第7回審議会については7月22日(火曜日)14時0分から行われることが事務局より提示された。