平成10年4月22日(水曜日)10時0分〜12時15分
東條会館シルバールーム
有馬会長代理・部会長、石原部会長代理、新井、石井(進)石井(威望)、石井(幹子)、宇野、堺屋、下河辺、寺田、中村(桂子)、中村(英夫)、野崎、牧野、溝上各委員(15名)
池淵、井田、井手、片山、金本、黒川、鈴木、戸所森地各専門委員(9名)
坪井国土政務次官、古川内閣官房副長官(事務局長)、竹島内閣内政審議室長、近藤国土事務次官、林大都市圏整備局長(事務局次長)他
地方公共団体ヒアリング、新都市像に関する検討について等
今回は、岐阜県、静岡県、愛知県からヒアリングが行われた後、新都市像の検討について石井幹子委員からの説明と、意見交換が行われた。
岐阜県の梶原知事より以下の説明が行われた。
岐阜県は地理的に日本の真ん中にあり、また日本の人口重心が県内にある。理論的には日本中の国民がアクセスする場合、一番経済的なポジションにあると言える。交通面でも、東京・大阪・名古屋の三大都市圏と至近距離にある。
岐阜東濃地域は、4万人とか5万人の中小都市が適度に散在している。ブラジリアやキャンベラのように全く新しいところに立地して、もともと都市の集積がなかったというのとは異なる。東京都と比較すると、面積は同じくらいであるが、人口密度は約20分の1、区部と比較すると50分の1である。
全国の主要都市からのアクセスに関しては、時間・距離とも最も経済的であり、理論的に人口重心だから合理的というだけでなく、実際上もアクセスの時間が全国の主要都市から均等である。
東京からのアクセスに関しては、鉄道、道路ともにそれぞれ代替ルートがある。災害・事故等があった場合でも、迂回して連携することが可能である。
鉄道の関係では、既にリニア新幹線の計画がある。これが整備されると、東京から約30分、大阪からも約30分という距離となる。新全国総合開発計画でもリニア新幹線の早期実現を目指すこということが明記されている。既に山梨県で実験線42.8kmの整備が進んでおり、いろいろな実験がなされている。また、PFIの法案が検討されているが、当県でも沿線期成同盟会でリニア新幹線の財源調達の方策としてPFI方式がとれないだろうかという検討を始めた。さらに別途自民党の交通部会でも検討され、民間企業でも研究会を設置する動きが進んでいる。JR東海によると、技術面はクリアーされ、後はコストダウンと財源調達ということで、実験ではコストダウンに重点を置いていると聞いており、残る課題は財源調達で、これを民間活力でできないか、検討しているところである。
空港関係では、利用可能な空港は3ヶ所で、中部国際空港、名古屋空港、岐阜飛行場である。中部国際空港は2005年の愛知万博までに完成することになっており、鉄道アクセスでは約40分、道路アクセスでは約50分である。
中部国際空港から200km圏をとると、計画中のものも含めて12の空港が立地し、航空ネットワークが形成されている。空港のいろいろな利用の仕方が考えられるところである。
岐阜東濃地域は日本海と太平洋が最も近接した、日本列島がくびれたところに位置し、太平洋、日本海それぞれの港湾と至近距離にある。概ね200km圏に、特定重要港湾9港、重要港湾16港を擁している。
土地に関しては、合計4010haの利用可能な公有地がある。
この地域は、非常になだらかであるためゴルフ場がたくさんある。約60ヶ所あり、参議院の国会等移転特別委員会の視察の際に、岐阜県ゴルフ連盟から、ゴルフ場が移転用地の一部となる場合はみんなで協力する旨の発言があり、一部の関係者からは言い値で売るという申し出があった。私的な意見ではあるが、ゴルフ場の中に国会をつくるのが良いと思っている。
地価に関しては、東京都と比較して住宅地の平均価格が非常に安い。
地震については、過去の歴史から見ても地震の記録がない。地震予知総合研究振興会に委託をして調査したが、巨大な地震の被害が出る可能性は小さいということだった。
この地域の地盤については、花崗岩の強固な地盤である。
積雪が多いのではないかという話があるが、東京と同じ程度である。
地形に関しては、1km2メッシュ内の起伏量130m以下の地域が多い。
水の問題については、既に9m3/sの都市用水が確保されていて、国会開設時にも余裕がある。さらに、60万人の人口が来てもまだ1.2m3/sの余裕がある。
名古屋に近すぎるのではないかという話があるが、名古屋との間には標高400〜700mの山岳があり、人家や都市の連坦の心配はない。
岐阜県は自然が豊かなところであり、北アルプスなどの山岳や木曽三川などがある。
また、歴史・文化資源の宝庫であり、世界文化遺産の白川郷合掌造り集落をはじめ、いろいろなものがあり、外国人にとっても魅力ある土地だと思う。
高山祭りや古川の起し太鼓など多くの祭りや芸能があり、地歌舞伎は日本で最も多く、23団体で継承されている。
おいしい特産品も多く、長良川の鮎、飛騨牛、奥美濃古地鶏、果物、地酒など非常に豊富である。
温泉、キャンプ場、ゴルフ場、スキー場も多く分布していて、釣り場もあり、十分余暇を楽しむことができる。また、外国人にとっても、京都・奈良に近いなど、魅力のあるところである。
主婦の皆様が都市機能を享受できるかということについては、音楽や演劇を楽しむことができる。名古屋では、現在JR東海が日本最大のデパートを建設中である。
大学に関しては、岐阜県の周りの県を含めて4年制大学が55、短大・専門学校が74あり、進学校もあって教育については心配ない。
産業教育に関しては、日本一という評価を得ており、個性ある人材育成に努めているところである。
現在、研究学園都市の建設を進めており、愛知県、三重県、岐阜県にそれぞれ研究開発の地域があり、岐阜県では、情報科学、生命科学、メカトロ、バイオ、環境科学、宇宙科学、健康科学、極限環境科学などの分野を進めていて、東濃地域においては、核融合科学研究所があり、既に実験が開始されていて、臨界実験の第一段階は既に成功している。また、科学技術庁と東大先端研の協力により青少年の理科教育のための先端科学技術体験センターの整備も進めている。
また、戦国時代に全国各地へこの地域から大名が配置されており、この地域は昔から血縁や地縁で全国各地と赤い糸で結ばれている。
この地域は古戦場が豊富で、古くは壬申の乱、承久の乱、関ヶ原の戦いが行われ、ボクシングのリングのようなところである。
岐阜県からは科学技術、あるいは文化の人材が多く輩出されており、21世紀型の風土を有している。
新全総で4つの国土軸が示されているが、東濃地域はその真ん中の地域であり、この接点に首都機能のような日本中央交流センター機能を配置すれば、この国土軸構想も万全を期することとなるだろう。
この地域は東日本文化圏、西日本文化圏の接点であり、縄文文化もこの地域から東西に分かれ、もちの丸と四角、畳の京間と江戸間、うなぎの腹開きと背開き、言葉の京アクセントと東京アクセントなどの東西の接点になっている。
規定プロジェクトが常にあって、新たな基盤整備は必要ない。万博の関連でいろいろな整備が既に進められている。
日本海時代の到来を控え、東濃地域は日本海と太平洋が近接したところにあることから、そういう時代に備える最も良い場所である。
アジアを俯瞰しても、アジアを重視するという姿勢を示す良い場所である。
新しい首都の役割、哲学が必要であるが、これからはグローバリズムの時代であり、3つの貢献、すなわち地球への貢献(地球環境問題等)、人類への貢献(人口、食料等)、地域への貢献が重要ではないかと思う。
東海4県で広域連携を行っているが、東海環状自動車道等でお互いに連携するための基盤整備が進んでいる。
東京の国費投資額をみると、他の都市圏に比べて一人あたり42,087円多く国費が投入されている。人口を掛けると4,979億円、すなわち約5,000億円のよりプラスの投資が東京に行われている。このような投資額と首都機能移転費用を比較して考えてみると、首都機能の移転は財政改革にもなるのではないか。
東京は地価が高いので、世界190ヶ国中61ヶ国が大使館を持っていない。国際的な面から見ても東京の限界がある。そこで、東濃地域の瑞浪市の市長が61ヶ国に親書を出して、大使館の誘致を行っている。
国税の「東京仕送り論」というのがあり、企業の税金は地方の支社・工場の活動に対する課税分も東京本社を通じて東京都内で納付されている。したがって、岐阜県の場合、税収のシェアは外見上1.1%であるが実力としては1.4%あり、1,470億円を東京に仕送りしていることになる。これが再分配されるわけであるが、我々は東京に日参して補助金等をもらっているが、もらった結果は税収の実力と同程度である。参勤交代を一生懸命やって、結果は実質の収入と同じということになっている。
最後に連邦制を提案したいが、首都は是非スリムでなくてはならない。岐阜県だけでも経済力はマレイシア、シンガポールと同じであるが、これが東海州や中部州になると、東海州ではスペインやカナダと同じ経済力があり、中部州ということで中部9県がまとまると、中華人民共和国やイタリア共和国と同じということになり、こういう形でそれぞれ独立すれば、税金の使い道もしっかりし、住民参加もできやすく、地域ごとに出納が決する。そしてお互いに良い制度にするという善政競争が起こる。競争あるところに発展があると思う。
この後、以下のとおり質疑応答が行われた。
静岡県の石川知事より以下の説明が行われた。
首都機能移転は東京一極集中の是正のみならず、地方分権や規制緩和、国家の災害対応力の強化など、我が国が直面する様々な課題を解決する契機となるものである。また、将来の日本の在り方を左右する国民的な最大のテーマであると受け止めているので、国においても地域の誘致合戦などに影響されることなく、国民的な議論を巻き起こしながら、国家百年の大計に基づいて決定していただきたいと思っている。
本県としては、このような国家的な最大の課題に対して、国や審議会が行う諸調査に対して最大限の協力をする考えで、既に県庁内に首都機能移転問題研究会を設置し、関係部局間の連携体制を強化するとともに、関係する30市町村に対しても、適宜情報提供を行いながら調査への協力を要請し、全県的な協力体制を整えてきたところである。
また、候補地のリストアップについても、県内で移転適地調査を行い、その結果を的確に提供してきたところであり、今後とも引き続き積極的な取り組みを行いたい。
県民に対してもできる限り情報を提供し、この課題に対する議論を深めたいと考えているが、移転される首都機能の全体像が十分につかみ切れていないきらいがあり、県民の理解を深めるための具体的説明がしきれない状況にもどかしさを感じている。新都市像の検討においては、是非新都市の具体的なイメージや整備される施設内容等を提示していただきたい。
本県西部地域は、国土上の位置や交通の利便性、整備された社会基盤、恵まれた自然など、多くの特徴が評価され、調査対象地域に選定されたと考えているが、この地域に首都機能が移転した場合には、以下に述べる意義や効果が国全体に及ぶものと考えている。
国土上の位置について、本県西部地域は我が国の中央で、東京と大阪の中間に位置しており、東西交通の要衝として発展してきた。当地域に首都機能が移転すれば、東京との日常的な連携を確保しつつ、円滑な移転が可能であり、国家機能の中心となる新都市と経済の中心であり続けるであろう東京との共存の中で、東西交流がますます活発となり、我が国の一層の発展に貢献できるものと考える。
当地域は東名高速道路、東海道新幹線など、日本の大動脈ともいうべき交通インフラが整備され、現在においても、全国からのアクセスに優れた地域であると考える。加えて、21世紀に向けて第二東名自動車道、三遠南信自動車道などの高速道路、また全国と直接交流できる静岡空港の建設が着々と進められており、愛知県知多半島沖に建設予定の中部国際空港へも、こうした道路網やこれに接続する地域高規格道路を利用して1時間程度でアクセスが可能となる。このようなアクセスの一層の向上により、全国、さらには世界各地からの行き来が容易な新都市が建設できるものと考えている。
さらにメガフロートなど、今後新たに開発が期待される技術を活用して、海上航空基地の建設も可能となってくると期待しているが、そうすると現在浜松市内にある航空自衛隊浜松基地を民間空港として活用する方向も見えてきて、空路の利便性は一層高まると考えられる。
こうした交通インフラに加えて、大学、医療施設、文化施設等も相当整備されており、西暦2000年には新たに浜松市の中心部に静岡文化芸術大学を開学する予定である。これらの活用によって、新都市の建設を経済的かつ効果的に進めることが可能となる。
本県では地球時代の到来を受けて、国の内外に本県の魅力や資源を発信するために様々なプロジェクト、イベントを計画している。特に県西部地域を舞台としているものとして、2004年に浜名湖のほとりで国際園芸博覧会を開催し、花・緑・水をテーマに自然と共生する新しいライフスタイルの創造を提案していこうと考えている。
また、来年には第2回国際オペラコンクールを浜松市で開催予定である。第1回は2年前に開催したが、3年ごとにこの国際オペラコンクールを開催し、この地域から世界的なオペラ歌手を育てていくという取り組みを行っている。
2002年には日韓共同開催のワールドカップ・サッカーが、浜松市近接の袋井・掛川市に建設中の小笠山総合運動公園エコバで開催予定である。
また、来年4月には静岡市を中心として、世界15ヶ国が参加する第2回シアター・オリンピックスを開催するなど、様々な文化、スポーツ、学術に関するイベントを開催し、本県の学術・文化の面での高揚と情報発信をしたいと考えている。
本地域最大の懸念である地震災害については、この地域は地盤のしっかりした台地や丘陵地に立地していることから、地震の影響は最小限にくい止められると考えられるし、また、本県の防災対策は過去20年来、東海地震に焦点を合わせて、各種の対策を積み上げており、地震に強い県土づくりも目標の8割程度の完成に至っている。また、被害発生に対する初動体制の確立が重要なテーマであると考え、現状では24時間、365日の休みない警戒態勢も確立しているところである。
以上のように、将来に向けての地域づくりに取り組んでいるところであるが、ここに新都市が建設された場合に、自然と調和した温暖で快適な都市、本県の積み重ねている防災対策のノウハウを活かした防災モデル都市、国内外からのアクセスが容易な交流拠点都市などのイメージの地域ができあがるものと考えている。
また、太平洋、浜名湖を望むすばらしい景観は、世界のどの都市にも負けないウォーターフロントとして21世紀の日本を担うにふさわしい都市になると確信する。
引き続き、鈴木静岡県企画部長から以下のとおり説明が行われた。
首都機能の移転については、昭和30年代から様々な議論がなされており、そのたびに静岡県は各方面の著名な方々から移転先として最適であると提案されている。移転先としては、富士山麓や浜名湖周辺が取り上げられてきたが、最近では県西部地域が取り上げられている。国民の間でも静岡県の評価は高く、各調査機関において実施された最近のアンケート調査によっても、静岡県は常に上位を占めている。これは、日本の真ん中で、気候が温暖、交通機関も良く整備され、自然に恵まれた生活しやすい土地柄であるためと考えている。
先月閣議決定された新しい全国総合開発計画では、首都機能移転を特定課題に位置づけて、積極的に検討を進めることとしているが、21世紀の国土のグランドデザインにおいては、本県は太平洋新国土軸の東のゲートウェイと位置づけられ、その重要性はますます高まっていくものと確信している。
この地域は年間平均気温が15.7度と温暖な気候で、積雪もほとんどなく、非常に住み易い地域である。自然も豊かで、3,000m級の山々を連ねた南アルプス国立公園、諏訪湖から太平洋へ注ぐ天竜川に沿って天竜奥三河国定公園、湖を有する浜名湖県立自然公園、大規模な砂丘が広がる御前崎遠州灘県立自然公園など、変化に富んだ豊かな自然環境が大きな魅力である。穏やかな水辺を有する浜名湖周辺はもちろんのこと、遠州灘や小笠山などすばらしい景観は、他県の候補地にない風格を備えたものと考えている。
交通の利便性については先ほど知事が述べたとおりであるが、この地域は東海道の宿場町として交流の中で発展してきた歴史を持っており、新都市の住民を快く迎え、またこれからの大交流時代において世界各地からの来訪者を迎えるにふさわしいホスピタリティーあふれる精神風土を持っている。
一方で、遠州地方特有の「やらまいか」精神があり、エネルギッシュな気風がホンダ、スズキ、ヤマハ、カワイなどの世界的な企業を生み出しており、日本の中心となる新都市のバイタリティーを形成するためには最適の地である。
静岡県西部地域の候補地の21地区については、国会等移転調査会によって示された選定基準に照らしてみると、国土上の位置、東京からの距離については国土の中央に位置することはいうまでもなく、東京からの距離は200km、新幹線で90分、東名高速道路で2時間半で来ることができ、新都市と東京との連携や、日本全国との交流には最適地であると考えている。
空港計画については、当地域の東端に位置する牧之原台地の一角に2,500mの滑走路を有する国際線の就航も可能な静岡空港を計画しており、2006年の開港を目指して、本年度に本体部の工事に着手する予定である。また、愛知県知多半島沖には中部国際空港が計画されており、地域の東西に空港が整備されることによって、世界各国との往来も大変便利になると思う。
土地取得の可能性については、候補地の21地区の中には合計で1,200haの国公有地があり、比較的取得が容易と考えられる山林もこの地域には20,000haある。
地震への対応については、活断層は小規模なものがごくわずか存在するだけで、東京との同時被災についても、プレートが異なるため、可能性はほとんどないと考えている。
水資源については、天竜川や大井川など、既存のダムに加えて先月本体工事が完成した長島ダムなど、新たなダムの建設が進められており、これらのダムによって供給される豊富な水は新都市の需要を十分に満たすものと考えてる。
母都市については、人口56万人の浜松市には、東証一部上場企業6社が本社を構えるなど、経済力を背景にオークラ・アクトシティ・ホテル浜松、ニューオータニ・グランドホテル浜松等、我が国第一級の都市型のホテルが立地するなど、相当程度の都市機能が集積しており、新都市が成熟していく段階においては、母都市として十分に活用できるものである。
なお、今後の調査については、21地区に関連する大井川以西の30市町村を調査対象にしていただきたい。
この後、以下のとおり質疑応答が行われた。
愛知県の鈴木知事より以下の説明が行われた。
愛知県は、「首都機能移転は国土の中央へ」という言い方をしているように、全国各地からアクセスしやすい位置にある。そして、国土庁が新全国総合開発計画で4つの国土軸を提唱しているが、その4つとも本県を包含していることから、愛知県は交流を通じて新しい文化・情報の創出にも最適の地域と言える。
そして、東京と関西の中間ということで、独自性を持った地域と言えるが、東京と関西に空中分解する恐れもあるので、地域の独自性を確立するためにいろいろな手段を講じなければならない。東京と大阪のおこぼればかりちょうだいしている地域であってはならず、両極分解で真ん中が希薄になる恐れもあるので、いろいろな施策によって地域をレベルアップしなくてはならないと考えている。
既存の都市機能集積を活用することについて、愛知県の場合は昔から各種の様々な都市が多角的に存在していて、県内の計画においても多角的都市配置を提唱したことがある。すなわち一宮の繊維とか瀬戸の焼物、豊田の自動車とか、常滑の焼物といった具合に、名古屋市を取り巻いて多角的に中小都市が点在している。これは計画した訳ではなく、自然発生的にこのようになった。したがって、この地域のどこに新都市が立地しても、これらの中小都市の機能を活用することが可能である。
水資源については、県土が広いので当然ゆとりがある。
中部圏の知事会議でも首都機能は中部圏の中でという意思統一が図られている。
愛知県では、西三河北部、東三河南部という2地区を候補地として考えている。これらの地域について、東名の次の第二の高速道路として推進している第二東名が、名古屋市の近郊で一部供用される。先般、名古屋港に3つの斜張橋が竣工し、それがいずれは第二東名・名神として利用されることになる。
さらに、新空港はこの前の国会で法律が通り、設立が決まった。この4月30日に会社ができ、政府出資、それから地方公共団体出資、民間出資を合わせて国際空港が誕生する。
もう一つ、リニアモータカーを中央新幹線として検討しているが、これは名古屋に入るときには大深度で入らなくてはならない。国土庁で検討されている大深度地下利用について近々結論が出そうであり、これに伴ってリニア新幹線に不可欠な大深度地下利用の問題が解決されるであろう。愛知県では、これらリニア中央新幹線、第二東名・名神、新空港を3点セットと称して推進している。これができあがる計画となっているのがたまたま2005年頃で、それがちょうど国際博覧会の年であったので、博覧会を開きたいというお願いをしたところ、昨年の6月に日本開催が決定した。会場は瀬戸市で、名古屋からちょうど東へ20km足らずのところであるが、県としてこれに大いに力を入れている。3点セットのプロジェクトの集大成として博覧会を開催するので、この地域は非常に物事が進むことになる。
これは言うなれば、首都機能移転の基礎工事を行っているようなものであり、結果的に3点セットと首都機能移転がドッキングした訳で、我々はそれを一生懸命に十何年も前から行っていたことになり、この地域の最適性を認識していただきたい。
西三河には4,300haの適地があり、東三河では3,000haが確保できる。両地域とも、大都市名古屋のエネルギーを程々に活用できる位置にあり、大都市に近くも遠くもない位置である。規模は異なるが、ブラジリアがリオ・デジャネイロをよく利用するように、大都市があるということは非常に大きな強みであると思っている。
西三河は、面積約12万ha、人口71万人の地域で、三河武士にまつわるいろいろな歴史の文化財がある。また自然空間もかなり豊富である。位置的に隣の岐阜県との連携も十分に考えられる。
東三河は、面積約8万ha、人口57万人の地域で、三河湾国定公園、天竜奥三河国定公園があり、マリンスポーツやスキー、アウトドア活動が身近に楽しめる地域である。この地域には第二東名が通り、三遠南信自動車道も予定されている。さらに南下すると渥美半島を縦断して三重県の方へ渡る伊勢湾道路が計画されていて、既に調査に入っている。この地域には3,000haの可能地があり、隣県である静岡県との連携も可能な地域である。
これらの2つの地域は、移転先選定基準に合致している。地震災害に関しては、一部に活断層があるが、開発区域はそこから離す計画であり、想定される震度は4〜5である。自然災害については特別想定されてはいない。従来から温和な気候で、格別の災害は想定していない。
地形については、西三河が標高200m以下の丘陵地で、東三河は標高100m以下の平坦地・丘陵地である。
水供給に関しては対応可能であり、愛知県はもともと水が豊富なので心配はない。東三河では、設楽ダムを推進中であり、水需要に対応可能である。
新都市整備のイメージとして、冒頭に述べたとおり、中部空港、第二東名・名神、東海北陸自動車道があり、東海北陸自動車道は、中部圏開発整備法の看板事業で、徐々に出来てきている。この道路はゆくゆくは南下し、新空港へ直結するように考えている。伊勢湾口道路は鳥羽と伊良湖、渥美半島と三重県をつなぐ海上道路である。また、リニア中央新幹線も考えている。
既存都市と連携した多角的な都市展開をしているので、新都市がどのような配置になろうとも、点在する中小都市をそのまま活かして使うことができ、その結果コンパクトな形で都市整備が行える。
また、環境負荷の小さな自然共生型の都市ということが、最近は話題となっているし、当然のことではあるが、この点については国際博覧会の会場づくりで既に経験を積んでいる。愛知県では環境アセスの新法ができる以前からその内容を先取りして環境への配慮に取り組んできたため、環境負荷の小さな都市づくりということに対して十二分に対応可能である。
しかも、2005年の博覧会は、自然環境との関係で環境負荷の小さな都市づくりということがテーマの一つにもなっているので、相当進歩したゼロエミッション的な技術が開発されるであろうと考えている。新都市が生まれるときには、この知識が十分そこへ注入できるということに関しては、万博も首都機能移転のために役立っていると考えている。
この後、以下の通り意見交換が行われた。
新都市像のワーキンググループの座長である石井幹子委員から説明が行われた後、以下のとおり意見交換が行われた。
次回第12回審議会・第10回調査部会合同会議については、5月25日(月曜日)15時0分から行われることが事務局より提示された。
以上
(文責 国会等移転審議会事務局)