平成11年11月10日(木曜日)13時30分〜15時30分
中央合同庁舎5号館別館共用第9会議室
森会長、石原会長代理、野崎起草委員長、新井、石井(進)、石井(幹子)、濱中、堀江、牧野、溝上、宮島、鷲尾、各委員(12名)
古川内閣官房副長官(事務局長)、久保田国土事務次官、木下国土庁長官官房長、板倉国土庁大都市圏整備局長(事務局次長)、他
国土構造及び文化の評価結果の解析、新都市のイメージと課題について等
国土構造及び文化の評価結果の解析、新都市のイメージと課題等について事務局からの説明と意見交換が行われた。
国土構造及び文化の評価結果の解析について事務局から説明があった。
前回、国土構造、文化の評価について主成分分析を行い、各地域の特徴についての解析結果を説明した。今回はそれを踏まえ、第2タームの検討結果、有識者に行ったアンケート調査等も加え、それぞれの地域の特徴を明らかにするべく整理した。
・北東地域では、新都市と東京との密接な連携ということが特徴的である。移転初期段階の東京との重都の状態に対応して、新都市と東京が密接に連携し、政治・行政の機能を間断なく確保していけることが特徴とされる。次の段落では、東京からの距離が相対的に近く、他の2地域に比べ移転期間中の東京との連携に対する期待が高い。また、災害対応力という観点から、東京に大災害があった場合、東京とのネットワークが確保される可能性が高いと評価されている。
新都市では、東京との連携を通じて、常に首都機能、国際政治機能を維持しつつ、段階的に首都機能の移転が行われる。移転後も東京との密接な連携の下にその機能を高めあうということが想定される。
課題は、東京とかかわりが強いため、これまでの経済社会システムとは異なる新しいシステムの創造ができるかということになる。もう一つの課題として国際空港の問題では、現在の仙台空港・福島空港ではグローバル・アクセスという点では不十分であり、成田空港を使わざるを得ない。
この地域に対しては、新しいフロンティアにおける新しいライフスタイルの展開ということに対する期待が高い。また、自然との調和、ゆとりとやすらぎ、落ち着きといった都市イメージがほかの地域に比べて高い。
全国総合開発計画との関係では、北東国土軸の形成ということで、一極一軸の構造から多軸型国土に改編されていくという意味合いがある。経済的効率性や近代工業社会における都市づくりから一線を画した、自然と共生し、空間的ゆとりを備えた都市圏がイメージできる。
・東海地域では、中部国際空港ができることで国際政治活動の新しい中心地として期待される。国際政治都市にふさわしい場と機能を備えることに非常に期待が集まっている。
新都市の想定される姿としては、他の地域に比べ移転先の新都市は国際政治機能を支えていくであろう名古屋との機能的な一体性あるいは連携の容易性、外国とのアクセスを生かした国際交流、あるいは国際機能の場としての期待が高い。課題としては、東京、あるいは関西と比べ国際政治都市としての機能集積が不十分であり、多少時間は掛かるが十分機能が発揮できる水準まで充実させる必要がある。もう一つの課題は、東京と若干距離があり、移転プログラムの検討に当たっては、東京との連携を重視する必要があるのではないか。
「国土構造の改編と国民・全国各地との関わりによる我が国の新たな姿」としては、複数の国土軸が重なり合い、そして東西文化が融合する地域にあり、全国からの参集容易性がすぐれている。そのため全国の国民から親しみやすさを持って受けとめられる可能性がある。あるいは多様な地域間の文化交流の増大や更には国際社会の貢献が期待される。高度情報化に対応した活力ある経済社会の実現に対する期待が高い。想定される姿については、交通インフラが非常に発達しており、都市集積、あるいは既存インフラを有効に活用して効率的な都市形成が可能である。
全総との関係では、自立的な国際交流圏の形成の期待、東京、関西との三極構造の形成が期待される。また、アジアとの連携への期待も高い。
・三重・畿央地域では、東京中心の社会・意識構造を改変する効果が期待されている。東京を経由しない情報交通ネットワークの形成により、意識構造の変化への期待、あるいは企業の立地行動の変化への期待が高い。総じて東京と競争関係の中で活力を生み出してきた関西の再構築が期待される。加えて、多様で特色のある生活・文化・産学の形成の促進が期待される。
この地域の特徴としては、京都、大阪、奈良、あるいは関西文化学術研究都市に近接しており、更に名古屋圏とも連携が可能である。この地域に集積した我が国独自の伝統文化を継承しつつ、そういった文化機能の集積を生かしながら新しい文化を形成していくという期待が高い。国際会議が頻繁に開催される外交都市に対する期待もある。
新都市の想定される姿としては、伝統文化を継承しつつ、独自の新しい日本文化を創造していくことで内外の訪問客を引きつけ、魅力ある文化機能、あるいは展示機能というものを強化することが期待される。加えて、千年にわたり首都機能が置かれた関西に再び首都機能を復帰させることで、歴史的地域の再構築という意味合いで日本の新生に期待がかかるのではないか。この地域の特色としては、東京とは質的に異なるコンパクトな新都市が新しいタイプのネットワークを形成することである。
全総との関係では、東京依存という関係から「自立」と「相互補完」による水平的なネットワーク構造への転換が期待できる。アジアへの連携に配慮した姿勢を内外に示すことも期待できる。
続いて、以下のとおり意見交換が行われた。
新都市のイメージと課題について事務局から説明があった。
・宮城地域であるが、東北新幹線の白石蔵王駅の近くを起点として、仙台市、あるいは仙台空港に向かってほぼ南北方向に都市の展開を考えている。国会都市として宮城−2の周辺を想定している。
宮城地域は仙台と連携したツイン都市というイメージになるのではないか。仙台との二極構造のクラスター型の都市配置を考え、東北新幹線、東北自動車道が軸線になっていく。蔵王連峰をランドマークにして、中小規模で小さな都市がクラスター状に配置される。ただ、仙台市との市街地の連坦を極力回避する必要がある。母都市仙台の都市機能を活用したコンパクトな都市の形成と、仙台、山形、福島という中核都市との連携、ネットワーク強化ということが将来の課題である。
空港との関係では、仙台空港は3,000mの滑走路があり、政府専用機等の利用には全く問題ないが、国際航空路線は限定されており、外国にビジネスで行くときには成田を使わざるを得ない。仙台は大都市ではあるが、首都機能を支える母都市としては高次機能が不足しており、高次機能の強化、あるいは市街地連坦防止が課題になる。
・栃木・福島地域については、那須塩原駅から至近の距離にある栃木−2に国会都市を置くことを想定している。
この地域は、那須地域から阿武隈地域に至る比較的広がりのある土地があり、新しい国土軸を形成しうるというイメージでとらえられている。東北横断自動車道で東京を経由せず西日本と直結するという利点がある。
新都市のイメージは二極ラダー型都市構造とあるが、これは那須野ヶ原から福島空港に至るほぼ南北方向のラダー(はしご)状の交通軸にそって拠点地域を展開することを考えている。那須連山、那須野ヶ原といった非常に風光明媚な風景があるので、それを十分活かし、品格のある秀峰明水型の景観を構成することが考えられる。
主要な拠点地区のイメージとして、那須塩原駅、東北自動車道の西那須野インターから至近の距離にある国公有地、あるいは大規模民有地があり、そこを中心に国会都市を想定する。福島方面では、中小都市がネットワーク状に展開することが考えられる。ただ、この地域は都市集積が少ないので、都市サービス機能を相当導入しないと自立的な都市を形成できないのではないか。交通体系については、公共交通で国会都市や各拠点地域を結びつけていくことがひとつの課題になる。空港へのアクセスは最大の課題であるが、福島空港については政府専用機の離着陸は特に問題はない。国際線については成田空港を使わざるを得ないので、その間の連携が大きな課題である。
移転プログラムは非常に組みやすい。国会都市とサブ拠点の距離が離れることから、これを情報通信網でどのようにカバーしていくかが大きな課題になる。自然を保全しながらコンパクトな市街地を形成することが望まれる。
・福島地域に限定した場合には、福島−2に国会都市を置くことを想定している。その周辺に幾つかのクラスターが分散配置するので、各クラスターを公共交通でいかに結びつけることが課題になってくる。
・栃木地域については、栃木・福島地域と同じく、栃木−2に国会都市を置くことを想定している。
・茨城地域については、北関東自動車道が現在建設中であり、水戸市を母都市として、北関東を挟み込む形で茨城−2に国会都市を想定している。この地域は常磐ルート上にあり、常陸那珂港を玄関口として、東京を経由しないで海外とアクセスできる。成田空港と常陸那珂港、そして首都圏の外郭部100キロ圏に展開する北関東横断道路という軸の南北方向に都市機能を配置していく。この地域は平地林に恵まれた平坦部が多い地域であり、水戸との連携することである程度都市機能のバックアップができる。
この地域の最大の課題は、首都機能移転が行われた場合、首都圏の拡大ととられる可能性が高いことである。栃木地域にも一部そういう点があるかと思うが、単身赴任の就労都市というイメージが強くなりはしないかという懸念がある。全国からのアクセスでは、常磐線に多くを依存している。西日本からの参集時間ということを考慮すると改善の必要がある。
・岐阜・愛知地域では、名古屋を取り巻く東海環状自動車道が現在建設中である。東海環状自動車道と中央自動車道との結節点付近の岐阜−1に国会都市を置くことを想定して、そこから南に環状道路沿いの豊田市北東部に都市の展開を考えていく。この地域は人口重心に近い、幾つかの国土軸が重なり合っており、既に東名、第2東名という主要な国土幹線軸があること、また、中部国際空港ができることなど、交通条件には非常に恵まれた地域である。
新都市のイメージでは、東濃地域から西三河に至る東海環状自動車道沿いに中部国際空港に向かって環状軸方向に都市が展開していくパターンが考えられる。
産業集積の非常に高い地域で、東海環状地域は研究拠点都市群の構想があり、それと織り成す形で政治行政機能が展開されるという形になる。集積が高いので国会都市をつくるにしてもコンパクトな都市形成で足りる。加えて国公有地等の活用も期待できると言われている。国会都市は東海環状と中央道の交点の北部、岐阜−1に想定する。豊田市北東部にサブ拠点を設ける。これはいずれも東海環状沿いであり、中部国際空港に向かっていく軸になる。交通体系では、名古屋経由をどう考えるか。三河安城駅からダイレクトに新都市に入るようなルートを考慮したらどうか、あるいは、中部国際空港との関係でも新都市と中部国際空港の間をもう少し時間短縮できないか、というようなことが検討される必要がある。
課題としては、全国からのアクセスに優れているが、中央新幹線がある程度具体化してこないとイメージがはっきりしないという指摘もある。中部国際空港へのアクセスも距離があり、時間短縮がテーマになると思う。この地域は活断層が比較的多く存在するので、都市の施設配置に当たっては十分な調査が必要である。名古屋との市街地の連坦防止も必要である。
・静岡・愛知地域であるが、これは東名、第2東名という国土幹線軸があり、南北方向には三遠南信自動車道が整備中である。浜名湖を中心に東は小笠山、西は東三河の天伯原、そういった地域に都市を建設する。東側には静岡空港、西側には中部国際空港が存在する。この地域は東京と大阪、太平洋ベルト地帯の中心に位置する。東西方向のほかに三遠南信という南北方向の道路も建設されつつある。
都市のイメージとしては、浜名湖と小笠山を両方挟む二極型都市構造であり、浜松や豊橋、掛川という都市がバックアップする。浜名湖のウォーターフロント(水辺)をうまく使えば非常に望潮山水型の風格のある都市が形成できる。交通体系については、国会都市を置くことになれば新駅の設置を検討しなければいけない。中部国際空港への時間が少しかかるため、そのアクセスの改善が課題となる。
この地域の最大の課題は東海地震の地震防災対策強化地域に指定されており、加えて浜名湖周辺には軟弱地盤の問題がある。また、相当市街化が進んでおり、利用可能なまとまった用地は非常に少なく、用地の取得も非常に難しいだろうと指摘されている。
・三重・畿央地域であるが、名神、第2名神ルートを南北で結びびわこ空港との連携を考慮する考え方と、中部国際空港と関西国際空港を東西に挟み込む形で東西軸に都市配置を考慮する考え方の2つのパターンにわかれている。
三重地域単独で新都市が建設される場合、名古屋との連携ということから、津から四日市に至る東名神自動車道沿いに都市を配置する。国会都市は三重−2が想定される。
ここでは、西側の鈴鹿山脈、東側の伊勢湾岸に挟まれた地域に、中小の都市が点在しており、その中に埋め込み型でクラスターを配置する。都市軸としては津から東名阪自動車道沿いに四日市に至る軸線上が考えられる。
特徴は、海に開けた小規模都市群である。交通体系の課題としては、新幹線の名古屋での乗り換えの問題をどう克服するか、中部国際空港については高速海上アクセスの検討が必要になる。
・畿央地域については、三重・畿央地域と一括してまとめて説明する。都市軸の軸線を南北方向に考えるか、東西方向に考えるかで小都市群の配置パターンが変わってくる。都市軸を南北方向にする場合には、新幹線、あるいは第2名神自動車道の交通軸を想定して、そこに国会都市、あるいは主要な都市拠点を配置する。都市軸を東西方向にする場合には、中部国際空港から関西空港に至る東西軸を想定して都市の配置パターンを考えていくということである。特徴的なイメージとしては、中部圏と関西圏を結ぶ東西軸上の拠点都市構造というテーマでとらえられる。それから歴史、伝統文化を現代に生かすということである。
南北軸と第2名神の交点の北辺りの畿央−1に国会都市をおくことを想定している。そうなると東海道新幹線から枝線で到達するような公共交通が検討されなければならない。関空あるいは中部国際空港に鉄道で行くには、関西本線、あるいは近鉄名古屋線等となるが、必ずしも便利ではないので非常に時間がかかる。全国とのアクセスも同じような問題があり、相当公共交通面では強化を必要とする。なお、将来的には中央新幹線の構想もある。
この地域は東京とかなり離れており、重都状態のときの移転プログラムを綿密につくられないと段階的な移転がスムーズにいかない。
続いて、重みづけによる総合評価を行うに当たっての国会都市及び総合評価の対象とする区域について、説明したい。9月9日の審議会において、即地的な評価項目に係る地域を設定して検討していくことになっている。
景観の魅力については国会が立地する国会都市にふさわしい景観を検討をしており、交通の問題についても国会都市にとって非常に重視すべき問題となっている。こういった分野について、国会都市をどこに置くかを想定する必要があるということで、先ほど国会都市について位置等を説明したところである。これを踏まえ、今後重みづけによる評価の作業をしていく検討の対象地域について説明をさせていただく。
検討地域については、今の新都市イメージ等を踏まえて、また、関係府県と調整を行った上で想定する。国会都市についても、各地域が国会都市にふさわしい景観なり交通アクセス、また土地の問題での条件を備えているかを検討する必要があることから対象地域についての検討を行っている。これは評価に当たっての設定であり、実際の都市の区域、国会の位置が決まってしまうということではない。
続いて以下の通り意見交換が行われた。
第25回審議会において、事務局から相関関係について説明しているところである。項目間の評価について、統計的に評価結果の傾向が似ている項目については、事実を認識した上で再度重みづけをやっていただく必要があるのではないかということであった。
相関関係が高い項目として、例えば、「地震災害に対する安全性」「大規模災害の対応力」「東京のアクセス容易性」「自然環境との共生」といった項目等いくつかある。相関係数が一番高いのは「地震災害に対する安全性」と「大規模災害への対応力」の2つの項目である。両者は概念的にも異なるので従属関係に当たるとは言えないが、今回の検討に限れば、両方の検討の対象である地震は非常に巨大な地震で広い範囲にわたって起きるということで、双方の項目両方に影響を与えるような結果になっていると思われる。こういった整理をして、重みづけをやっていただきたいと思っている。
続いて以下のとおり意見交換が行われた。
次回、第27回の審議会については11月25日10時から行われることが、事務局から提示された。以上
(文責 国会等移転審議会事務局)