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第12回国会等移転審議会調査部会議事要旨

1.日時

平成11年1月18日(月曜日)14時30〜16時30分

2.場所

虎ノ門パストラル橘の間

3.出席者

(審議会委員)

石原部会長、野崎部会長代理、石井(威望)、石井(幹子)、下河辺、溝上、堀江各委員(7名)

(専門委員)

池淵、井田、井手、黒川、鈴木、戸所、森地各専門委員(7名)

関谷国土庁長官、古川内閣官房副長官(事務局長)、竹島内閣内政審議室長、近藤国土事務次官、久保田国土庁長官官房長、板倉大都市圏整備局長(事務局次長)他

4.議題

国土庁長官挨拶、新都市像の検討について、地形の良好性にかかる検討について等

5.議事の要旨

今回は、国土庁長官から挨拶が行われた後、新都市像の検討結果、地形の良好性にかかる検討結果について、説明が行われた後、質疑応答が行われた。

(1)国土庁長官挨拶要旨

首都機能の移転は、来るべき21世紀を展望した極めて重要な課題であります。

一昨年4月以来、本部会におきましては、移転先の候補地の選定に向けた調査審議を精力的に進めていただいているところでございます。今後も、引き続き、地域ごとの詳細な調査、公聴会の開催等を進められ、所期の成果を得られますようお願い申し上げます。

私も担当大臣として、事務局を督励し、審議会の活動に積極的にご協力申し上げる所存でございます。また、国民的な合意形成の促進に努め、首都機能移転の一層の具体化に向けて積極的な検討を行って参る所存でございますので、今後ともよろしくご指導を賜りますようお願い申し上げます。

(2)新都市像の検討について

昨年4月に中間とりまとめを公表した移転先の新都市像について、国民から寄せられた意見も参考にした検討結果の説明が石井幹子委員から行われた。その結果、本検討結果を調査部会としてのとりまとめとし、次回の審議会に報告することとなった。

(3)地形の良好性に係る検討について

地形の良好性に係る検討結果について、鈴木専門委員から以下の説明が行われた。

検討の目的としては、地形の良好性を広く「造成工事の容易性」、「地形条件・地盤条件に起因する災害に対する安全性」、「地形の持つ快適環境活用性」の3つの評価軸から検討した。このうち、「造成工事の容易性」というのは、造成できればよいという意味合いではなく、環境共生という観点から造成工事をしなくて良い場所が一番良いと考えている。したがって、現代の土木技術、建築技術を持ってすればいかようにもなるというスタンスではなく、造成しなくて済むのが一番良いというスタンスで検討を行い、評価をするという観点に立っている。

検討対象としたのは、第9回審議会で設定された北東地域、中央地域(東海地域、三重・畿央地域)の範囲である。

検討対象が、広範囲を及ぶため、全国統一の基準でつくられている国土数値情報、土地分類図などを基本的データとして、統一的、客観的に調査対象地域について地形条件を解析していこうという考え方をしている。

作業の精度としては、現時点では概略的検討であることと、新都市の規模を考慮して、20万分の1の精度で検討することとしている。

検討方法としては、メッシュ法による解析を行っている。

検討上の配慮としては、現在の地形を活かした環境共生型の都市づくりを想定している。また、新都市の規模は、建設の第1段階として2,000haが想定されていて、これは4km×5kmで、25,000分の1の地形図の約4分の1の面積に相当する。

地形の良好性を判断するために、様々な因子について分類し、因子ごとにランクをつけて、これらを組み合わせて評価を行っているが、途中の段階で時にはおかしなことが生じる。私はほぼ調査対象地域全域を見ているが、実際の現場と、このように数値情報で解析した結果が大きく乖離することがある。簡単な例を挙げると、地質学では昔から県境断層というものが知られている。これは、県ごとにつくられた地質図では、実際には同じ地質であっても県によって分類基準が異なることがある。このため同じ地質であっても、県境で異なった地質として表示されてしまう。このようなことが、地形分類図、表層地質図等でも起こる。このため、我々の既存の知識、並びに一般知識によって分類基準を修正して整合性を保った。

地形の良好性について、国会等移転調査会報告の中に、新都市の都市づくりに関して考慮すべき基準という記述があり、そこでは、造成工事やアクセスルート等の建設の容易さやコストを考慮すると、極端に標高の高い山岳部や急峻な地形の多い場所は避けることが望ましいということが示されている。

このようなことは、一応のイメージとしてはあるが、実際には地形的に一番良い場所が新都市の一番の適地であるということでは必ずしもない。地形的に良いところは既に利用されていることが多いからである。

地形の良好性を評価するために、3つの評価軸を考えた。1つ目は、「造成工事における地形改変の容易性」で、先程述べたように、造成工事を行えばよいというのではなく、なるべくしなくても済む場所を探すというスタンスで考えている。2つ目は、「地形条件、地盤条件に起因する災害に対する安全性」で、日本という国は、地球の中からいろいろなエネルギーが来るし、中緯度で大陸の東側にあるので、気候による影響も受ける。このような地球の外から来るエネルギーと内から来るエネルギーの接面が地形として現れているので、特に災害を起こすような地形的条件について重視して検討した。3つ目は、「地形の持つ快適環境活用性」で、日照性と土地の高燥性を考えている。

全体の評価をしていくときの考え方として、地形変化が顕著なところはだめであるということである。新都市は、地形災害に対する安全性という観点から、数百年間、簡単に言うと1千年間保証されなくてはならない。1千年間保証するには、1万年くらいを考える必要がある。過去1万年、未来1万年を考えるわけだが、火山や活断層などの非常に特殊な場合を除いて、過去1万年間ほとんど地形の変化の無かった場所なのか、著しく変化した場所なのかということは、現在の地形を調べることによっておよその見当をつけることができる。

評価の体系として、いろいろなデータを積み重ねて段階的に評価していくこととしている。個別因子を組み合わせて評価していく。今回の調査のゴールとしては、地形の観点から全体評価を行うが、そのために先ほど説明した3つの評価軸、すなわち「地形の持つ快適環境活用性」、「造成容易性」、「災害に対する安全」を考えている。それぞれ何によって評価するかというと、造成に関しては、地形の状態から見た造成の容易性と地盤の状態から見た容易性の観点から考えている。すなわち、地形の条件と地質の条件から造成の容易性を考えている。

また、災害については、斜面型の災害と低地型の災害について評価している。他に災害としては、地震、火山、気象災害等があるが、それぞれ専門の検討グループがあるので、そちらで検討し、後に各調査間で調整を行う機会があろうかと思う。

これらの評価項目をどのようなデータから検討するかというと、大別して、まず地形条件(標高、方位、起伏量、傾斜)がある。これは、地形の成因などとは一切関係ない無味乾燥な数値である。次に地形分類があるが、これは、個々の場所がどういうプロセスでできたのかという情報を含んでいる、簡単に言うと、扇状地であるとか、段丘であるとか、軟弱地盤帯であるとか、我々は地形種と呼んでいるものである。扇状地や三角州などは、定性的ではあるが、将来どのような地形変化が起こるか予測できる。もちろん定性的ではあるが。このように、地形分類は、地形条件とは異なった重要な意味を持っている。

地質については、都市をつくるという観点から表層地質、すなわち表層から30mより浅い部分の地質条件を考えている。

斜面の安定性に関するデータとしては、植生を参考として使っている。

また、地質構造として、表層地質図に描かれている断層を全て評価した。活断層や断層の活動度等については、地震に関する検討会において詳しく分析されると思うが、ここでは、断層は必ずしも活断層でない古い断層であっても、顕著な断層破砕帯があれば、そこでの土地造成、トンネル、ダム建設などは非常に制約を受ける。したがって、都市建設に当たっては、活断層のみならず古い断層についても評価すべきであろうというスタンスで、検討を行った。ただし、活断層かどうかという区別はしていない。

土壌については、地形分類に対する補足データとして使用している。特に軟弱地盤帯、低湿地、泥炭地などといった地盤を評価するために、泥炭、過湿土壌などについて把握し、地形分類の補足データとした。

それぞれの評価因子は、互いに関連し合っている。というのは、地形に関わる現象というのは、個別的に起こるのではなく、それぞれ因果関係を共有しているので、当然のことである。そこで、複数の評価因子を単独で評価するのではなく、関連する項目を相互に評価していこうということで、「加法平均」、「クロス評価」、「フィルタリング」という3つの方法でそれぞれの評価因子を組み合わせて考えていくこととした。

評価項目及び評価因子の選定ということについて、地形状態からの造成の容易性では、地形分類、傾斜を考慮している。地盤条件から見た造成容易性の場合は、表層地質と起伏量から評価している。

地形・地盤条件に起因する災害に対する安全性では、斜面地盤崩壊に関する安全性と低地型災害に対する安全性を評価している。低地型災害のうち、地震に対する安全性については、特に軟弱地盤を考慮している。また、地盤沈下についても軟弱地盤を考慮している。低地水害については、いわゆる洪水であるが、地形のタイプでいえば、河川の後背低地や印旛沼、手賀沼のように過去の湖の跡地であるとか、あるいは海岸のラグーンなどは軟弱地盤であると同時に低湿地であるため、水に関わる災害が大きい。このようなことを評価している。

このように、傾斜と地形分類、植生などを組み合わせて評価して行くが、どのような傾斜のところで地滑りが多いかなどということは統計的なレベルであるが、今回の評価を行うために十分なデータが既に蓄積されている。

地震に対する地盤の安定性では、軟弱地盤や液状化、不同沈下などを、粘土質地盤、砂質地盤、泥炭あるいは低湿地、などから把握していこうという考え方である。

3つの評価軸に対してそれぞれ評価因子があり、それに対応する基礎データがある。例えば、傾斜については、国土数値情報の250mメッシュの傾斜区分図をもとにしたデータを使用する。地形分類については、国土庁の200,000分の1都道府県別土地分類図を用いた。これはメッシュ情報ではないので、これを250mメッシュデータに変換して用いた。このように、国土地理院の国土数値情報と国土庁の200,000分の1都道府県別土地分類図を基礎データとして用いた。

評価手法としては、評価因子に対して5段階の評点を与えている。例えば、傾斜区分では、傾斜度を0〜3°、3〜8°・・・30〜40°と区切っていて、これを何点に評価するかということが問題となるが、土砂災害の観点と土地造成の容易性からそれぞれ評価点をつける。この際、造成の容易性という観点では、大規模な住宅開発の多くは概ね傾斜8°以下のところであり、まれに15°のところもある。20°以上になると地滑り地形が多くなって、切り土をした場合に長大法面ができてしまう。30°以上になるといわゆる山崩れ等の山腹斜面での崩壊が起こりやすい。40°以上になると植林の限界になる。このようなことを考慮して、5,4、3、2、1の評点をつける。このとき、5は良い、4ならまあまあ良い、3なら普通で、2以下になると厳しくなるということである。これは、従来、様々な機関等で行われている検討結果を参考にしている。

もう一例あげると、起伏量区分では5〜1の評価の他に、Y、Zというランクがある。Zというのはどうにもダメだという意味で、Yは起伏量としての条件は良くないが、他の因子の条件によっては適地となり得るという意味である。Zの場合には検討の対象外となる。このような区分と評価は、起伏量と宅地造成コストの関係などのデータをもとにしている。

このように、5〜1、Y、Zと評価したそれぞれの評価因子を組み合わせる場合、いくつかの方法があり、加法平均法はそれぞれの点数を単純に加法平均する。一方の評価因子が5で、もう一方が4の場合は、平均して4.5となり、四捨五入して5となる。また、単純に平均するのがふさわしくない場合は、クロス評価を行っている。例えば、造成容易性を起伏量と岩質から評価する場合、地形が平坦な場合、岩質の評価に関わらず、造成の容易性は良好である。このような場合、起伏量と岩質の評価を加法平均するのではなく、起伏量の評価が5であれば、岩質の評価がいくらであっても造成容易性は5と評価する。また、フィルタリングというのは、特定の評価因子が重なる場合、その評価因子の特性が卓越する場合、評価を最低ランクあるいは最高ランクに修正するものである。例えば、地質構造であるメッシュに断層が見られる場合、他の因子のランクに関わらず、そこのメッシュの評価を最低ランクの1にしてしまう。

以上の手順を行って、3つの評価軸ごとに評価図を作成した。それをさらにまとめて全体評価図を作成した。全体評価図では、これまで5〜1、Y、Zという評点をつけていたものを、混乱を避けるために、A〜E、Y、Zという評点とした。

このように評価した結果を大局的に見ると、現在人々が住んでいる低地あるいは段丘がランクA、Bとなり、それよりも少し標高が高い、例えば里山などがランクCまたはBとなっている。ランクYになっているところは、かなりの山地で、起伏量が大きい場所である。

各地域の特性は、調査対象地域と各府県の表明地域について地形・地質の概況と地形の良好性の面からの評価を記述している。

現時点での検討結果を総括すると、移転先候補地の選定基準の一つである「地形の良好性」というものを、造成工事の容易性、地形・地盤条件に起因する災害に対する安全性、地形の持つ快適環境活用性を基本的な評価軸として、全国統一基準で作成された資料として、国土数値情報並びに200,000分の1土地分類図を基本的な資料として検討した。その結果として、検討対象とした北東地域と中央地域のいずれにおいても、「地形の良好性」の観点から良好である土地は少なからず存在する。しかしながら同じ地形条件のところは地球上に2ヶ所と無く、必ず違いがある。したがって、各地域を地形の良好性の観点のみから相対的な順序づけ、例えば数段階に区分することは可能である。

しかし、「地形の良好性」に関する検討というのは、別途実施されている災害や環境等の検討とも密接な関係を有しているので、それらも考慮した上で、客観的に順位付けを行う必要がある。関連する分野の調査が調査部会等に報告した段階で、それぞれの調査結果を持ち寄って一体的な評価、特性把握を行う必要があるのではないかと考えている。

今後の課題としては、今回はメッシュデータを使用して調査対象地域全域について評価を行ったが、次の段階で、他の関連分野の調査が進んで地域が絞り込まれてきた場合、より詳細なデータが必要になることも考えられる。そのような場合には、メッシュデータではなくさらに大縮尺の地形図、例えば25,000分の1の地形図から読みとれる情報、そのようなスケールでの情報を集めていかなければならないと思うが、審議会等で地域を絞り、その地域について精査せよという指示があれば、地形の良好性に関する検討グループとして、さらに詳細なデータを構築していくことを考えている。もちろん、今回用いたようなメッシュデータだけではなく、個々の地域の地形配置も考えていかなくてはならない。

この後、以下の質疑応答が行われた。

・3つの評価軸(造成容易性、災害に対する安全性、地形の持つ快適環境活用性)を全体的に評価する際に、重み付けは行っているのか。

また、地形変化の激しいところは避けた方が良い旨の説明があったが、地形の変化が激しいのが我が国の特徴である。特に植生の多様性は地形の変化に基づいたもので、それがある面では地形の魅力にもなっていると思う。地形の複雑なところを避けるということと、地形の持つ快適性を活用するということの折り合いはどのように考えているのか。

→3つの評価軸については、重み付けは行わず、等価で加法平均している。

今回の検討はメッシュデータをもとにしているが、地形の多様性については、様々な特性を有するメッシュが存在するということに反映されていて、その全体的な配置が問題になるのではないかと考えている。

・全体評価で、A、Bランクになっている地区は都市的な土地利用がされているところが多いようであるが、既に市街化されているところへの移転は無理であると考えられる。このような市街地などを除いて評価することは可能か。

→A、Bランクとなっているからといって、移転先候補地として直ちに適地になるわけではない。本検討は、地形の面のみから評価しており、現状の土地利用については考慮していない。今後は、このようなことや土地取得の容易性の検討を行いつつ評価していく必要があると考えられる。

・現在は、200,000分の1スケールでの概略的な検討ということであるが、25,000分の1スケールでの検討を行うとすると、本質的に異なるものになるのか。

→例えば、200,000分の1スケールでは「低地」としか把握できない土地であっても、25,000分の1スケールになると、低地の詳細な分類や、その形成要因、詳細な特性まで把握可能となる。

次回、第16回審議会・第13回調査部会合同会議については3月17日(水曜日)15時30分から、第17回審議会・調査部会合同会議については4月16日(金曜日)14時0分から行われることが事務局より提示され、了承された。

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