1) 火山泥流・土石流の種類と規模
火山泥流・土石流は大きく分けて、高温の火砕物により雪や氷が融けて発生する場合、火口湖などの湖沼が決壊することにより発生する場合、堆積した火砕物が降雨により流下することにより発生する場合、多量の火砕物が河川をせき止めて自然ダムをつくり、それが決壊することで発生する場合が考えられる。
これらの原因別に発生規模を泥流に寄与する水の量から検討すると次のようになる。
a 高温の火砕物により雪や氷が融けて発生する場合
積雪が最も多い時期を想定すると、蔵王山の山腹の流域では積雪量が3.2m程度、その他の火山の流域では1.0〜1.6m程度の積雪である(積雪データは気象庁メッシュ気候値の平年最深積雪を用いた)。
積雪深を密度0.3として水換算すると、蔵王山で1,000mm、その他の火山では300〜600mmに相当する。また、対象火山の主な流域で融雪水総量ごとに概算すると、表11のとおり106〜107m3程度と見積もられる。なお、融雪に必要な火砕物総量は融雪水総量の1/5程度である。
火山名 | 流域名 | 積雪深(m) | 流域面積(m2) | 融雪水総量(m3) | 融雪に必要な火砕物量(m3) | |
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1 | 蔵王火山 | 松川流域 | 3.2 | 4.0×107 | 3.9×107 | 7.8×106 |
2 | 蔵王火山 | 横川流域 | 3.2 | 2.4×107 | 2.3×107 | 4.7×106 |
3 | 吾妻火山 | 松川流域 | 1.0 | 6.1×107 | 1.8×107 | 3.7×106 |
4 | 吾妻火山 | 須川流域 | 1.0 | 2.3×107 | 6.9×106 | 1.4×106 |
5 | 吾妻火山 | 荒川流域 | 1.0 | 3.6×107 | 1.1×107 | 2.1×106 |
6 | 安達太良火山 | 荒川流域 | 1.0 | 3.1×107 | 9.2×106 | 1.8×106 |
7 | 安達太良火山 | 杉田川流域 | 1.0 | 8.1×106 | 2.4×106 | 4.9×105 |
8 | 安達太良火山 | 水上・石筵川流域 | 1.0 | 1.0×107 | 3.0×106 | 6.0×105 |
9 | 那須火山 | 阿武隈川源流域 | 1.6 | 1.4×107 | 6.6×106 | 1.3×106 |
10 | 那須火山 | 高雄股川 | 1.6 | 8.8×106 | 4.2×106 | 8.4×105 |
11 | 那須火山 | 那珂川源流域 | 1.6 | 2.9×107 | 1.4×107 | 2.8×106 |
12 | 高原火山 | 箒川流域 | 1.0 | 8.8×107 | 2.6×107 | 5.3×106 |
b 火口湖などの湖沼が決壊することにより発生する場合
対象火山のうちで火口湖をもつのは、蔵王山と吾妻山である。これらの火山の火口湖にたまっている水量を概算すると次のようになる。湖底の形状はよく分からないので、湖面を円とし、その円と最大深度に適合する楕円球体に近似して概算した。その水量は表12のとおり105〜106m3程度と見積もられる。
半径(m) | 湖面面積(m2) | 最大深度(m) | 体積(m3) | ||
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蔵王山 | 御釜 | 150 | 7.1E+04 | 40 | 1.9E+06 |
吾妻山 | 五色沼 | 130 | 5.3E+0.4 | 9 | 3.2E+05 |
(注)半径は地形図より読みとり、最大水深は環境庁(1995)「日本の湖沼環境」によった。なお、吾妻山の鎌沼は五色沼より湖面積が大きいが、水深1m以下のため五色沼より水量は少ない。