マーケティングプランナー 中尾 木綿子氏
首都機能を移転するにあたって、危機管理に優れた首都が必要であるとか、現在首都である東京の一極集中を分散する、といった面が強調されているように思います。このような、現在の首都の弱点を補う考え方はもちろん大切なことですが、新都市を作るという構想には、もっと“夢”をみる部分があるのではないでしょうか。
たとえば、明治の人たちが東京に首都を築くとき、国全体が新しい国づくりを夢みていたでしょうし、東京の整備は新しい日本の具体化そのものだったでしょう。東京に官庁街を作り、銀座に商店街を作り、鉄道を配して新興住宅街を開発し……。当時、その先進性を仰ぎみるような感覚で、西欧的な暮らしをとりいれて行こうと貪欲だったに違いありません。たとえ、それが鹿鳴館のように、現在からみると多少こっけいなことだったとしても、その“夢”みる気持ちには素直にうなずけます。今回、すでにある都市を発展させていくのではなく、ゼロから都市を作っていくのですから、明治のころのような気宇壮大な気持ちになってみてもいいのではないかと思います。社会全体がなんとなく萎縮しているような時代だからこそ、ものを創造していく気持ちは大切ではないでしょうか。
明治時代は西欧的な暮らしを日本に取り入れようとしました。今回は、どこの真似でもない、次の時代の日本の暮らしが見えてくる都市を作ることができるかもしれません。高齢者や障害者が不自由なく暮らせる社会、男女がへだたりなく暮らせる社会、効率万能ではなくてゆとりや日本の伝統も大切にする社会など、理想とされる社会のあり方はさまざまに言われています。そのあり方を支えるのは、個々人の意識でもありますし、それ以上に社会の基盤(鉄道や道路、施設、制度などのインフラストラクチャー)でもあるのです。新しい都市に、そのような社会の基盤づくりの方向性が見えてくることを期待しています。
次の時代の暮らしが実現される都市に
マーケティングプランナー 中尾 木綿子氏
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