サントリー不易流行研究所部長 佐藤 友美子氏
人々は物質的な豊かさを追い求め、都市はそれを実現するための舞台であった。経済活動を優先する効率重視の考え方が、都市に様々な機能を集中させ、拡大させてきた。しかし、豊かな社会とは、モノや情報が溢れていることではなく、一人ひとりがゆとりのある暮らしと幸せな人生を実現できる社会のことである。新しい都市は、従来の都市の問題点を手直して作るのではなく、発想を180度転換させ、豊かな生活を実現する場であって欲しいと思う。
豊かになり、特別な時だけでなく、毎日を自分らしく快適に過ごしたいという気持ちが拡大している。インテリアやガーデニングへの関心の高まりはそのことを物語っている。日々の暮らしを豊かに彩るのは、立派なコンサートホールや美術館より、むしろ友人たちが集まって音楽を楽しむ小さなホールや公共施設のロビーを利用したギャラリーなど、身近なところで文化を楽しむことができる場である。効率や便利とは違うコンセプトで作られた、遠回りをしたくなる散歩道、季節を感じるアウトドアの遊び場、仲間が三々五々集まることの出来るアットホームな雰囲気の店など、発見や遊びのある場も求められる。
非日常とも日常とも違う、少しずれたところにある異日常を上手に演出することが、都市を豊かにする。
都市には一人で生活できる施設やサービスがある。しかし、どんなに便利になっても人は一人では生きて行けない。これからの都市では人と人との暖かい関係が欠かせない。ボランティアが育てる花壇、みんなで盛り上がる季節ごとの祭り、自由に使える公園など、何かをやりたい人が仲間の輪を広げることができる様々な仕掛け、世代を越えた人たちが共通の目的で集うことのできる場を期待したい。住む人、訪れる人が共に響きあう、人が主役の都市が欲しい。
人が主役の都市
サントリー不易流行研究所部長 佐藤 友美子氏
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