現在、審議会では、国会等の移転先候補地の選定に向け、地形、景観、水供給、地震・災害など多くの分野についても調査・検討を進めています。 ここでは、最近審議が行われたテーマについて、その概要をお知らせします。
首都機能移転先の新都市づくりに当たっては、自然的環境への影響に配慮しつつ、内外のモデルとなりうる環境共生型の都市を目指すことが求められます。
このため、計画が具体化されていない候補地選定の段階でも自然環境面の特性を属地的に明らかにし、今後の計画や事業の段階で環境面からの配慮を適切に行い得るようにしました。
検討は、次の観点から行われました。
火山噴火による被害範囲は、噴火規模により大きく異なるため、数種類の噴火規模を想定し、その規模別に、下図のような被害が生じ得る範囲の検討を行いました。検討対象としたのは、調査対象地域に被害を及ぼす可能性のある9つの火山で、うち7つは北東地域の周辺の火山です。
噴火の影響が及ぶのは、主に火山からの距離が近い北東地域の各県ですが、数百年、数千年に一度発生するような規模の噴火では、1cm以上の火山灰に覆われる可能性がある地域は広く存在するものの都市活動に大きな影響が及ぶ地域は限定的であり、溶岩流や火砕流などによる被害の範囲も概ね山体等に限られることが分かりました。
移転先候補地を選定する上では、地形、地震等の物理的な観点と並んで、移転先の違いにより我が国全体の文化的特性(ライフスタイルやものの考え方、意識等)がどのような方向で変化していくか、などソフト面での影響を加味することが重要です。
アンケート調査の結果から見ると、「北東地域」に移転した場合は「自然と共生した文化が育つ」、「東海地域」に移転した場合は「最新情報にあふれた先端的な文化が育つ」、「三重・畿央地域」に移転した場合は「伝統や歴史を重んじる」という方向での文化が我が国全体で育くまれていくものと期待されます。
また、移転先の新都市が備えるべき機能についても検討を行い、政治・行政に純化された機能だけでなく、国際交流・外交、観光など交流を促す機能も備えることが重要としています。
衆・参両院の国会等の移転に関する特別委員会(以下「国会等移転特別委員会」といいます。)においては、各界から参考人を招き、様々な観点から活発な議論を行っています。(いずれにつきましても、詳細は衆議院又は参議院の発行する議事録をご覧下さい。)
(株)三菱総合研究所取締役の平本一雄氏は、移転の意義と効果を、「国家再建の鍵(目標を喪失している国民へのインパクト)」「予想される震災被害の最小化(東京と同時被災しない司令塔づくり)」「均衡のとれた国土形成(東京一極集中の是正)」「東京改造のカンフル剤(移転跡地への集中投資による有効活用)」「建設経済効果と次世代産業育成(我が国経済に多大な効果)」の5点から指摘されました。
これを受け、国民的合意形成の在り方、移転と地方分権との関連性、期待できる経済波及効果、東京からみた移転のメリット等について議論が展開されました。
駐日マレイシア特命全権大使のタン・スリ・カティブ氏は新都市プトラジャヤへの首都機能移転計画の進捗状況等を、駐日オーストラリア公使のトレバー・ウィルソン氏はキャンベラに移転するまでの経緯及び移転後のキャンベラの姿等を、それぞれ説明されました。 これを受け、現在進行中のプトラジャヤ建設に関しては、移転の意義、国民的合意形成の進め方等について、既に完了しているキャンベラへの移転に関しては、移転の実施段階での課題、計画当初には想定しえなかった事項等について議論が展開されました。
東京大学教授の大西隆氏は、社会経済情勢により移転の目的の強弱にも変化がみられること、全面移転論よりも現実的な移転形態として重都や分都を検討する必要があることを指摘されました。
上智大学教授の猪口邦子氏は、移転よりも世界都市東京の競争力向上に全力を尽くすことで他の都市や我が国全体の活力が維持・向上すること、移転による環境負荷増大の懸念もあることを指摘されました。
これらを受け、我が国の国際機能を東京のみで担うことの是非、東京が抱える問題点や将来像、再開発の在り方、首都機能を分散させることの是非等について議論が展開されました。
平成11年4月28日
衆議院・国会等の移転に関する特別委員会参考人質疑
(マレイシア特命全権大使 タン・スリ・カティブ氏、
オーストラリア公使 トレバー・ウィルソン氏)
平成11年5月12日
参議院・国会等の移転に関する特別委員会参考人質疑
(東京大学教授 大西隆氏、上智大学教授 猪口邦子氏)
平成11年5月19日
衆議院・国会等の移転に関する特別委員会参考人質疑
(ジャーナリスト 内仲英輔氏)
平成11年5月26日
衆議院・国会等の移転に関する特別委員会視察
(宮城県)参議院・国会等の移転に関する特別委員会参考人質疑
(照明デザイナー 石井幹子氏)
平成11年4月14日 第5回国会等移転審議会公聴会(仙台)
平成11年4月16日 第16回国会等移転審議会・第13回調査部会合同会議
平成11年4月26日 第6回国会等移転審議会公聴会(広島)
平成11年5月17日 第7回国会等移転審議会公聴会(札幌)
平成11年5月20日 第17回国会等移転審議会・第14回調査部会合同会議
平成11年5月27日 第8回国会等移転審議会公聴会(高松)
首都機能移転の意義(2)―「東京一極集中の是正」とは?
現在の東京は、人口をはじめ、政治・行政、経済、文化、情報などあらゆるものが集中し、他を圧倒する地域となっています。特に、「何でも東京が一番いい」という東京を中心とする序列意識や、東京への「集中が集中を呼ぶメカニズム」(企業や人が集まるとその市場や人材の集積を背景にさらに企業や人が集まる)が存在します。首都機能移転により、このような意識やメカニズムが打破されることが期待されます。
また、過密に伴う様々な東京の問題の軽減にも寄与するものと期待されます。