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ニューズレター「新時代」 第39号(平成15年5月) 一緒に考えましょう、国会等の移転

国会の動き

参議院

参議院国会等の移転に関する特別委員会(松谷蒼一郎委員長)では、4月23日、午後1時から2時45分まで、福井秀夫氏(政策研究大学院大学教授)及び市来治海氏(株式会社住友生命総合研究所取締役主席研究員)を参考人として招致し、意見陳述及び質疑応答を行いました。
参考人意見の概要は以下のとおりです。

  • 福井秀夫参考人(政策研究大学院大学教授)
    国会等の移転は、東京一極集中の是正、災害対応力の強化ではなく国政全般の改革の目的から正当化される。国政上の構造変革を伴わない移転ならば、現状のまま東京に存置するよりも国民利益を増進しない。
    移転は「東京からの人為的集中発生源の離別」であり、官と民、国と地方それぞれの間に一定の距離を置くことができ、権力的指導や依存の構造が緩和すると期待できる。特に、行政の中枢管理機能及び対外的指導の窓口部局を移転させることには意義がある。
    新都市では、土地利用規制の緩和やピークロードプライシング等の新しい制度的な試みについて、様々な社会実験を行うことも考えられる。
  • 市来治海参考人(株式会社住友生命総合研究所取締役主席研究員)
    現在の日本経済・金融の問題は「資産デフレ」であり、(1)地価、株価の下落で、銀行がそれらをベースに信用創造していたため金融システムが大打撃を受け、(2)企業のバランスシートの毀損による投資意欲の減退と、社会保障への不安から来る個人の消費意欲の低下により需要不足が恒常化し、(3)さらにグローバライゼーションと世界的技術革新による一般物価デフレが加わっている。
    資産デフレをストップさせるため、銀行保有株式を全額買い取る新機構を設立して銀行と株式保有を遮断するとともに、社会保障について部分的に税金で賄う抜本的な改革を行い、国民に「将来への安心」を取り戻させることが必要である。そうなると2〜3%の経済成長も可能で、そういう状況になれば、夢のある国会等移転をやった方がいい。

(注)上記の参考人意見の概要は、国土交通省首都機能移転企画課において傍聴した結果をとりまとめたものです。

国会等の移転に関する講演会を開催しました

前号に続き、今回ご紹介するのは、琉球新報社及び沖縄タイムス社との共催により、3月16日(日曜日)那覇市の沖縄ハーバービューホテルにて約100名の参加者を集め開催した講演会です。
最初に、望月照彦氏(多摩大学教授)より「新しい時代の潮流と21世紀のまちづくり〜地域の活性化が日本を変える」というテーマでお話をいただき、引き続きキャスターの草野満代氏が進行役を務め、望月照彦氏、相澤徹国土交通省首都機能移転企画課長による鼎談(ていだん)を行いました。
なお、講演会の模様は3月22日付けの琉球新報及び沖縄タイムスに掲載されました。以下に講演会の模様をご紹介します。

◇ 基調講演
「新しい時代の潮流と21世紀のまちづくり〜地域の活性化が日本を変える」
望月 照彦氏(多摩大学教授)


月 照彦 氏

  • 昨年、まちづくり関係の視察でイギリスの都市を訪問したときに、感銘を受けたことが2つある。1つは、市民ひとりひとりが「シティ・プライド」、まちに対する誇りを持っているということ。それがまちを元気にする。もう1つは、地域にある文化財などの地域資源を徹底して活用するという考え方である。21世紀のまちづくりは、お金をかけずに身近なもの、古いものを生かし、誇りを持ってまちに磨きをかけることが大切である。
  • 21世紀の政治課題は、地域を起点として、みんなが手をつないで幸福になれる「幸福立国」をどう実現するかだ。なぜ産業立国やハイテク立国を目指しているのかというと、それは「幸福立国」を実現するためである。幸福を正面から議論することが重要。過去の歴史を礎にして未来戦略をきちんとデザインする。そして、地域の活力と地球社会の共存を考えていくのがこれからの国政の役割だと思う。
  • そして、これからは市民感覚の身近な政治制度をつくり上げていく必要がある。国会等の移転先の新都市に対する私の提案は、楽しい政治都市の構築だ。「みんなが幸せになれる」というコンセプトで、新しい政治のイメージを伝え、世界から人が集まり、世界の未来に役立つ都市を構築するべきだ。例えば、国会だけをつくるのではなく、政治観光という発想のもと、政治に関する歴史の一大ミュージアムで、子供たちが地域や政治をシミュレーションできたり、楽しく学べるような機能を持った政治史の博物館をつくってはどうか。
  • 21世紀社会に沖縄がプレゼントできることは、沖縄の平和を求めてきた歴史、つまり戦争ではなく、文化で平和を創造してきた歴史である。また、沖縄には人々を癒すホスピタリティと、琉舞など人々の心をつかむエンターテイメント、町の中に人々の心を引きつけるアトラクティブネス(魅力)がある。沖縄は交流観光、健康生活、暮らしの文化という3K産業、すなわち人々の生活を幸せにする幸福産業の成長が期待できる地域。沖縄は「幸福の島」づくりを通して世界貢献できる所であり、日本と世界の未来を考えるのに最もふさわしい場所だ。
  • 国会は新都市をどこかに一度決めたらもうそこから動かさないというのではなく、ITの時代だからこそ、時には、美しい季節に沖縄で国会を開くということがあってもいいのではないか。
  • 幸福な人々の暮らす世界の幸福都市モデルこそ、「国会等の移転」を考える上でも重要で、その視点で国や地域のあり方を考えていく必要がある。
◇ 鼎談(ていだん)「みんなで考えよう−国会等の移転」

○出席者
望月 照彦氏(多摩大学教授)
草野 満代氏(キャスター)
相澤 徹 国土交通省首都機能移転企画課長

【草野】
「国会等の移転」は「国家百年の大計」と言われ、国権の最高機関等の移転は国民ひとりひとりが真剣に考えなければいけない問題だと思う。なぜ「国会等の移転」が求められているのか、その意義や効果、私たちの生活との関わりや経済状況が厳しい中で見通しはどうなのかなどを聞きたい。
【望月】
「国会等の移転」の一番のポイントは、政治のイメージが変わること。国民が政治をもっと身近なものとして感じられるようになる。現在、東京では高層ビルの建設が続いており、不況なのかと思うほどだ。そういうことを考えると、むしろ民間が新しい都市モデルを造るということがあってもよいのではないか。発想を変えて取り組んではどうか。
【草野】

草野 満代 氏
近年、東京では、高層マンションやビルの建設が相次いでおり、東京への人口集中の動きが見られる。今、なぜ国会等の移転なのか。
【相澤】
「国会等の移転」は、国政全般の大転換をしようという発想だ。経済社会のシステム変更が移転の前提で、大きな枠組みの中で考えてもらいたい。東京への一極集中の是正も理由の1つ。東京で直下型地震が発生した場合への対応もある。移転すれば、その跡地を東京の再生のために使うことも可能となる。東京への人口集中は、1987年にピークを迎え、バブル崩壊により94年には一旦マイナスになったものの、最近また急激に増加している。本社機能、情報関連企業も東京に集中している。全国を相手にしたい人や企業は東京に出てこないと情報発信できないようになっている。
【草野】
これだけ東京に一極集中するのはいいことなのか。
【望月】
集まるのは集積の効果があるからだ。そういう意味では、「国会等の移転」を行うにあたって、単に諸機能を移せばいいという訳ではない。分析して、どんなものを移転させたほうがいいか考える必要がある。
【相澤】
世界の主要国を見てみると、政治と経済の中心が一緒なのは先進国では、ロシアと韓国、日本ぐらい。そのうち、韓国は廬武鉉(ノムヒョン)新大統領が首都移転を進める政策を打ち出しており、5年後には新都市整備に着手する予定と聞いている。
【草野】
日本はこれだけの閉塞感の中で、変わらなければいけない時期にきている。全国を見回してもシャッター商店街ばかりだ。疲弊した地方の都市を活性化するにはどうしたらいいか。
【望月】
黒壁で有名な滋賀県長浜市の場合には、市民がリーダーとして立ち上がり、民間と行政のパートナーシップを構築し、まちの活性化に取り組むというまちづくりのビジネスモデルを作った。ポイントは「人材がいる」「パートナーシップが図れる」「まちのビジネスモデルをきちんと描く」こと。「国会等の移転」についても、まず、国民と政府とのパートナーシップを構築することが大切だ。
【草野】
まちづくりの未来像についてどう考えているか。「国会等の移転」によって地方はどう変わるのか。
【相澤】
「国会等の移転」は日本のシステムの大転換を前提としている。これまで、東京を見て、東京から示された方針に従ってまちづくりが進められがちであったのが、地域が自ら、自分たちの責任で、地域の個性や特性を生かして、まちづくりを行うように変わっていくのではないか。
また、新都市のコンセプトは、最先端の情報技術と環境と共生する技術を導入した世界のモデルとなる都市を構築することだ。現在、国会において、移転のコンセプトの見直しが行われており、その中では、PFIや資金調達における不動産証券化など、出来る限り民間の力と知恵を取り入れた形で新都市整備を行うことも検討されている。
【望月】
今の都市のコンセプトにもう1つ「人間的な文化」を加えたい。都市には、人間の暮らし、下町的な要素が必要だ。
【草野】
新しい都市ができても、人間のにおいがしないまちではいけないと思う。移った都市とその周辺の町がどのように広がるのがよいか。
【相澤】
1つの案として、自然を残し、そのなかに低層の建物が森の中にたたずむようなイメージで審議会で議論がなされた。人間的なものも考えていかないといけない。
【望月】
那覇は奇跡の1マイルと言われている国際通りや公設市場の迷路のようなものがあり、魅力がある。タウンセラピーという考えがあって、町が心を癒すという考えもある。
【草野】
国会等を移転して、新しい都市ができても新たに税金を使って、密集した都市を作るだけで、他の都市にはメリットがないと言う人も出て来ると思うが。
【相澤】
国政全般の改革が大前提だ。東京一極集中を是正することで、すべての地域が国際競争の中でプレイヤーとして活躍する社会、多様な考え方や発想が生まれてくる社会を実現していくというのが「移転」のコンセプトとしてある。
【草野】
「国会等の移転」は費用の無駄遣いで、最近減っている公共事業の確保のためにやるのではという批判がある。
【相澤】
国会等移転審議会の試算は数十年かけて56万人の大きな都市を造るというものだった。その後、衆議院の調査局が昨年10月にもっとコンパクトにできないかということで、15万6千人、2千ヘクタールの規模で費用として4兆7千億円という試算を出している。この試算なら公的負担は2兆4千億円だ。その他に国会都市、行政都市、司法都市と2,3の都市に分散して移転し、既存都市の社会資本を使うことで節約することも国会において議論されている。また、事業確保のためではないかという点については、審議会試算では、当初10年間で2兆3千億円、年間にすると2千3百億円の経費がかかるが、これは公共事業全体の2%程度で、これを大きいと見るか、小さいとみるかだ。情報技術や環境技術を導入した最先端の都市をつくるので、技術開発への効果も期待でき、単なる箱もの作りを越えた事業だ。
【草野】
地方の活性化の起爆剤にもなるのか。
【望月】
そうさせないといけない。いきなり大きな都市をつくるのではなく、ぶどうの房のように個性的な小さな都市をつなげるようにするといい。
【草野】
「国会等の移転」は、単に首都機能が移るだけではなく、国民一人ひとりがまちをつくるという意識を持つことが大切。「国会等の移転」を沖縄の人々はどのように受けとめればいいのか、どういう意味があるのか。
【相澤】
東京を向いて考えていた各自治体が違う所を向いて考えるようになる。例えば、アジアに近接する沖縄は、アジアとの関係で沖縄をどう位置付けるか、を考えることによって、これからの沖縄の将来像が見えてくるのではないか。
【望月】
「国会等の移転」をする時には沖縄はモデルになる。沖縄から発信していくべきだ。沖縄には人間の心を癒すものがあり、歩く都市になっている。21世紀は歩く都市の時代になるとも言われている。新都市は沖縄を参考にすべきだ。
【草野】
国の未来像についてどう考えるか。展望はどうか。
【望月】
21世紀は「場所」が大事になる。地域という場所で人と人が触れ合うことになるので、文化や地域の風土が大事になる。みんなが共生して幸せに暮らせるという都市モデルが必要で、新都市が良いモデルになると期待したい。
【相澤】
1980年代半ばから日本を取り巻く状況は変わっていたが、それに日本社会は対応できていないことが、低迷する日本経済の要因の1つではないか。「国会等の移転」をきっかけに日本のシステムのあり方を考え直すことが求められている。みなさん一人ひとりの問題として、「国会等の移転」の問題を捉えてほしい。
【草野】
議論だけに時間がかかり、何も決まらないということが日本にはある。国会の議論に対して無関心でなく、一人ひとりの問題として心に留め、機会を捉えて意見を言うことが大事だ。

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