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ニューズレター「新時代」 第41号(平成15年7月) 一緒に考えましょう、国会等の移転

国会の動き

国会移転に関する政党間両院協議会

6月16日、国会移転に関する政党間両院協議会(第1回)が開催され、以下のとおり合意されました。
〈合意事項〉
(1)衆参それぞれ座長と副座長を選び、座長は毎回衆参交代で務めることとする。
(2)協議事項は移転について国会の意思を問う方法とする。
(3)次回は時期未定だが、衆参の中間報告についてそれぞれの事務局から説明を受けることとする。

国会等の移転に関する政党間両院協議会の構成

<衆議院>11名
佐藤静雄君(自民)<座長>
蓮実進君(自民)
田野瀬良太郎君(自民)
下村博文君(自民)
藤村修君(民主)<副座長>
玄葉光一郎君(民主)
西博義君(公明)
都築譲君(民主)
児玉健次君(共産)
日森文尋君(社民)
ざき洋一郎君(保守)

<参議院>11名
沓掛哲男君(自民・保守)<座長>
溝手顕正君(自民・保守)
斉藤滋宣君(自民・保守)
山下善彦君(自民・保守)
泉信也君(自民・保守)
山下八洲夫君(民主)<副座長>
長谷川清君(民主)
加藤修一君(公明)
小池晃君(共産)
平野貞夫君(国連)
渕上貞雄君(社民)


国会等の移転に関する講演会を開催しました

4月号、5月号に続き、今回ご紹介するのは、北海道新聞社との共催により、3月18日(火曜日)札幌市中央区の札幌後楽園ホテルにて約160名の参加者を集め開催した講演会です。
最初に、藤田昌久氏(京都大学経済研究所教授)より「日本の活性化〜空間経済学の視点から」というテーマでお話をいただき、その講演を受けて、藤田昌久氏に加え、地元有識者として北海道新聞社論説主幹の新田博氏、相澤徹国土交通省首都機能移転企画課長による鼎談(ていだん)を行いました。
なお、講演会の模様は3月25日付け北海道新聞に掲載されました。以下に講演会の模様をご紹介します。

◇ 基調講演
「日本の活性化〜空間経済学の視点から」 藤田 昌久氏(京都大学経済研究所教授)
  • どんどんボーダレス化が進み、国境の役割が低下していく現実の世界で、都市、地域、国際経済というような従来の細分化された学問では現実の世界は分析できなくなってきたため、地理的空間の都市・地域・国際というものを、もう一段高い立場から見た、統一した学問をつくろうと、1990年代のはじめから、新しい経済学「空間経済学」の構築に努力してきた。
  • 基調講演の風景写真経済成長を大きな雪だまづくりに例えるなら、肝心なのは最初の雪だまの核づくり。戦後の日本において、50年代の朝鮮戦争をきっかけとして日本の製造業の核が出来た。その後は雪だまが急な坂を転がるように、まず繊維、さらには重厚長大型の産業、また三種の神器と言われたTV、冷蔵庫、洗濯機などの大量生産、大量消費の工業製品をどんどんつくり、世界中に輸出して、急成長した。その後、1970年代の前半、オイルショック、変動相場制への移行などで日本経済は最初の転換期を迎えるが、そのときは雪だまに勢いがありハイテク産業に切り替えることにより停滞期を乗り切る。1980年代にはアメリカに次ぐ経済大国に成長した。だが、1990年代にバブルがはじけ、その後、日本経済は長期停滞に陥っている。現在は、世界第二位の経済大国という雪だまが谷底にとどまった状態にある。どうして、長期停滞から脱出できないのか。
  • それは日本の社会経済システムが、現在の世界経済システムの新たな潮流、つまり1980年代の終わりから始まった情報革命やそれによって加速されている世界経済のグローバリゼーションに対応できていないためである。現在の行き詰まりを脱し、主要な先進国として再び発展していくためには、基本的な方向は一つしかない。アメリカに負けないイノベーションの力、広い意味での知識創造の力を伸ばし、常に他の国に負けないような物をつくっていくということ。それには現在の日本の社会システム全体を大胆に自己変革していくことが不可欠だ。
  • 活力を取り戻すためのシステム改革の一環として、提案したいのが「廃央創域」。中央を廃して、新しい地域を創るということだ。東京中心の中央集権国家の体質を変えるため中央の力を減らし、多様性と自立性に富んだ元気な地域、新たな産業集積を全国につくる。そして、新たな集積を核として、地域が互いに競争しながら連携を保つことによって、世界をリードするイノベーションの力を育てることが重要だ。
  • 21世紀の先進国は、広い意味での知識創造活動の場となり、創造力が問われる。均質な労働力が求められる時代ではない。地域も教育も多様性が求められるが、中央集権、東京一極集中はこれらの足かせになっている。
  • 同じような人間が集まっても、新しいものは何も生まれない。社会を活性化するには、外国人労働者や中高齢者、女性などの活用が重要となる。特に、いかに地域が女性のポテンシャルを積極的な施策を通じて最大限生かせるかが21世紀の地域の勝負を決める鍵になる。
  • 北海道とほぼ同じ人口のフィンランドは、破産寸前の国だったのが、ここ10年で今や世界第二位の競争力を誇る国になった。それは、産学連携が非常に進んで、国全体のイノベーション力が大学を中心にして出来ていったからで、学ぶべきものが多い。中央直結型では本当の潜在力は生まれてこない。世界に直結する北海道になるべきだ。
  • 全国に多様な都市・地域と差別化された多様な産業集積、クラスターをつくり、これらを核とした地域の競争を通じて、また世界中、日本中での人材の流動化を通じて、世界をリードするイノベーションの場として日本を発展させていくべきだ。
◇ 鼎談(ていだん)「みんなで考えよう−国会等の移転」

○出席者
藤田 昌久氏 (京都大学経済研究所教授)
新田 博氏 (北海道新聞社論説主幹)
相澤 徹 国土交通省首都機能移転企画課長

【新田】
「国会等の移転」は、国のかたちをどうするかという私たちの生活や将来にかかわる重要な問題だ。21世紀の日本の将来像、特に国と地方との関係はどうあるべきかという点から考えていきたい。
【藤田】

藤田 昌久氏
地方自治体が財源のほとんどを国に頼らざるを得ない状態では、中央とのパイプづくりが重要な仕事になってしまい、地方の潜在力を十分に生かし切れず、地方の自立はなかなか生まれてこない。
【新田】
世界的に見ると政治と経済の中心を分けている国も多いと聞くが、現状はどうか。
【相澤】
アメリカでは政治都市がワシントンD.C.、経済都市がニューヨークと言われているが、実は全米に経済の中心となる拠点がいくつもあり、多様化した国土構造になっている。アメリカ以外にも政治中心と経済中心とが異なる国は多い。
オランダの場合は首都がアムステルダム。国会・行政府・最高裁はハーグにある。また、チリでは首都はサンチアゴだが、数年前、一極集中是正という観点でバルパライソという都市に国会の移転が行われた。主要国の中で政治と経済の中心が一つの都市にあるというのは日本、ロシア、韓国など。ただ、韓国については廬武鉉(ノムヒョン)大統領が選挙の中でソウルからの首都移転を公約に掲げて当選、来年中に候補地の選定を行い、5年のうちには新都市の建設に着手すると聞いている。政治と経済の中心を分ける、国土の構造として多様な、バランスのとれた都市の配置の仕方を考えるというのが世界的な潮流だ。
【新田】
国会等移転審議会の答申には、移転の効果として、国政全般の改革、東京一極集中の是正、災害対応力の強化が挙げられているが、今の東京への一極集中の現状についてどう考えるか。
【藤田】
東京が世界の中枢になること自体はいいことだが、1980年代までアジアの経済発展の先方を走っていたはずの日本が、アジア全体をリードする力、イノベーション力がなくなっているのが現状だ。これは一極集中によって人の流れが止まり、人間の多様性が減っているからだ。動きを止めたまま機能や人口だけが集中している状態は非常に良くない。
【新田】
国際競争力の面からは情報や頭脳の集積の高い東京に首都機能があった方が有利だとの意見があるがどうか。
【相澤】
東京一極集中の一つの問題として、情報発信の一極集中がいわれている。全国向けの情報発信がすべて東京を経由しなければ行われないというシステムができ、東京発の情報、文化があふれる中で、国民の考え方の多様性にどういう影響を与えているか見極めていく必要がある。
【藤田】
知識創造というのは対話を基本とするので、ある程度日常圏を共有するところに集中しやすく、一極集中しやすいが、だからといって、日本の主要な情報活動が東京に集まらなければならないということではない。アメリカを例に言うと、実は東京みたいな形では集中していない。経済集積を見ても、確かにニューヨークは大きいが、株とかメディアなど特定なものだけが集積しており、シカゴは流通経済で世界の中枢になっている。ITだけをみても、シリコンバレーは、コンピューターのマイクロプロセッサーの中心だが、インターネット関係の中心はワシントンD.C.である。人の流れも流動的で、多様性がいつも保たれるような循環型のシステムになっている。
【新田】
「国会等の移転」が多様性を持った地域の創造にどう結びついていくのか。
【相澤】

新田 博氏
「国会等の移転」は国政全般の改革を伴うのが大前提だ。移転をきっかけとして、政・官・民の新たな関係を構築し、地方分権、行政改革を行い、従来のシステムを抜本的に変えていく。移転が実現すれば、すべての機能が集まっている東京は様変わりして、相対化された東京になるといわれる。そのとき、各地域がそれぞれ地域の特徴を活かして、自らの責任の下でいろいろな知恵を出して競争し、群雄割拠するような国土構造というのが求められるのではないか。
【藤田】
要するに「廃央創域」だ。中央の力を弱くして、とにかく多様な地域を創って、開かれた地域が互いに競争しながら持っている力を最大限に発揮していく。そのようなシステムをつくるための一環として、「国会等の移転」をするのはいいことだと思う。地域に独自性を発揮する力があるのかと疑問の声もあるが、危機感があれば地方は力を発揮する。やらないことには何も始まらない。
【新田】
国会でも、従来の「国会等の移転」のコンセプト、基本方針を見直す動きが出ているようだが。
【相澤】
昨年10月に、衆議院の事務局からコンセプトの見直しについての報告書が出され、それに基づき国会において、移転の規模が大きすぎるのではないか、従来は一括移転が前提となっていたが、もう少し分散した形で移転をしても良いのではないか、といった移転コンセプトの見直しに関する議論が行われている。例えば、国会都市、行政都市、司法都市というふうに分ける、あるいは機能ごとに分け、その都市間を最先端の情報通信技術でつなぐ、といった様々な議論がなされている。
【藤田】
人間が循環できる形態という点で、分散移転に賛成だ。交通機関やITが発達している現在では、今や距離は問題にならない。
【新田】
新しい首都機能の姿はどうあるべきか、今の段階での構想はどうなっているのか。
【相澤】
新都市は、最先端の情報技術を備えた都市で、同時に環境の面でも先導的な都市にしようという構想だ。情報技術、環境技術の面でも波及効果のあるナショナルプロジェクトになるのではないか。
【新田】
我が国の経済が厳しい状況にある中で、移転費用の捻出は可能か。
【相澤】
国会等移転審議会の試算では10年間で2兆3千億円、年間にすると2千3百億円の公的負担になるが、これは公共事業全体の2%程度で、これを大きいと見るか、小さいと見るかだ。また、公共施設の建設や運営に民間の力を活用するPFIの手法や不動産証券化のような新しい資金調達手法などの導入により一層の費用の削減ができないか議論されている。
【藤田】
やるんだったら、谷底にとまって動かない雪だまを再び勢いよく動かすための一環として思いきったものをつくるべきだ。今は不況なのに東京に人が集まる異常な状態だ。日本という船をもう一度浮かび上がらせ、前に進めるためなら、思い切って費用をかけるべき。「国家百年の大計」とはそういうものだ。
【新田】
地方にとって「国会等の移転」について関心があるのは、移転が政治、経済、文化などのあらゆる分野で地方をどうやって元気づけるか、また、元気づける契機になりうるかという点だ。「国会等の移転」は地方の活性化、文化の多様化の大きな刺激になり得る。地域の多様性と今後の北海道の生き方ということで提言をお願いしたい。
【藤田】
これまで北海道は東京直結でよかったのかもしれないが、さらに世界的に発展していくには、半分、独立国のような感覚でやって行くのがいい。特に、現在は北海道で育った優秀な人材が東京へ流れてしまっているので、人材を北海道で吸い上げ、地域の活性化に役立てることが大切だ。
【相澤】
日本全体を東京発の単一の規格で縛っていくのは難しい時代になってきている。世界のグローバル競争において多様な要素が生まれ出てくるなかで、日本だけが単一規格でやっていけるわけがない。地域の独自性、その地域が持っている生産要素を使って比較優位を求めていく。つまり、各地域の独自性を見つけて、強くしていくことが必要だ。自然を含めてこれだけの資源を持っている北海道は、可能性が大きいのではないか。
【新田】
政治、経済の東京への一極集中の是正は、政治が取り組まなければならない大きな課題であることは確かだ。「国会等の移転」についても、これからこの国がどういう方向に舵をきるのかというポイントを握る1つの大きな事業だ。この問題を我々一人一人が考えていかなければならない。

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