チリ共和国(以下「チリ」という。)では、16世紀から首都とされてきたサンティアゴに大統領府、行政府及び最高裁判所が置かれ、国会は1990年以来バルパライソに分散して配置されています。
国会の置かれているバルパライソは、サンティアゴから北西120kmに位置する太平洋に面する港町で、サンティアゴに次ぐ大都市です。サンティアゴからバルパライソへの主な交通経路は高速道路で、所要時間は車で片道約90分程度です。首都機能が分散立地している海外の事例として、その概要を紹介します。
チリの首都は、スペインの植民統治時代から建国を経て現在に至るまでサンティアゴとされています。立法、行政、司法府は歴史的にすべてサンティアゴに置かれていましたが、1990年、立法府を首都から離れたバルパライソに移転し、現在に至っています。
国会が移転した背景及び理由に関し、代表的な説明としては、(1)地方への機能分散のため、(2)移転先の経済活性化のため、(3)当時の政権による大規模な行政改革の象徴として、という3点が挙げられています。
バルパライソにある現国会議事堂
サンティアゴにある旧国会議事堂
大統領官邸(モネダ宮殿)
最高裁判所
(1)立法府
チリの国会は二院制で、定員は上院議員38名、下院議員120名です。
現国会議事堂は1988年10月20日に着工、1990年に完成しています。
(2)行政府
行政は大統領を長とします。中央省庁の閣僚、各州の州知事、州内の県の県知事は、すべて大統領により任命されます。大統領の任期は再選不可で4年です。
県の下には市町村が置かれています。市町村長は直接選挙によって選出されます。
(3)司法府
司法の最高機関は最高裁判所です。憲法に関する判断は、憲法裁判所が行い、憲法に反すると考えられた法律を差し止めることができます。
(1)国会と行政との連絡調整
国会事務局は、サンティアゴの旧議事堂の中にサンティアゴ出先事務所を置いています。議員会館など、議員のための施設はサンティアゴには置かれていません。
行政側は、多くの省がバルパライソの議会内に3〜4名の立法関係のチームを置いています。
(2)国会会期中のサンティアゴとバルパライソ間の移動
国会は3月1日開会、1月31日閉会です。会期中には、毎週火曜日から木曜日まではバルパライソで本会議及び委員会が開催されます。バルパライソ滞在は、ほとんどの議員が日帰りで対応しています。議員の両都市間の移動に要する費用は、議会事務局が歳費として支給しています。国会事務局のまとめによると、大臣をはじめ、行政職員は2002年からの4年間で延べ436回(大臣)、延べ8,000人(大臣以外)バルパライソまで往復しています。
また、議員は毎週月曜日にサンティアゴで活動します。多くの議員が私設事務所をサンティアゴに置いています。また、政党の本部事務所もサンティアゴにあり、これも議員の活動の場となっています。
国土交通省の国会等の移転ホームページでは、これまで学界、経済界等各界の有識者を講師にお招きして講演会を開催しています。平成18年3月以降、新たに次の講演を追加しましたので是非ご覧下さい。
(ホームページアドレス:http://www.mlit.go.jp/kokudokeikaku/iten/onlinelecture/index.html)
入倉 孝次郎氏 (愛知工業大学客員教授・防災科学技術研究所客員研究員)
テーマ:「安心で安全な国づくりのために考えるべきこととは」
要約
国土交通省では、去る8月23日(水)及び24日(木)、小中学生を対象とした「子ども霞が関見学デー」を開催しました。そのプログラムの一つとして「首都機能の新都市像を体験してみよう!」という企画を実施しました。子ども達にも国会等の移転についての理解と関心を深めてもらうため、パソコンを使ったゲームによる首都機能の新都市像の体験や、環境・エネルギーに配慮した新都市のイメージビデオの上映、国会等の移転に関するクイズを行うとともに、パンフレットの配布等を行いました。両日とも残暑厳しいなか、昨年を上回る多くの子ども達が訪れ、真剣にゲームやクイズに取り組んでいました。
9月5日(火)、東京都渋谷区の富士見丘中学三年生の生徒さんが職場体験学習のため国土交通省首都機能移転企画課を訪れました。
国土交通省の施設見学の後、首都機能移転企画課職員からパンフレット等による国会等の移転に関する概要説明が行われました。また、生徒さんからも「皆さんは具体的にどのような仕事をしているのですか」「やりがいを感じる時はどんな時ですか」などの質問があり熱心な勉強会が行われました。