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ニューズレター「新時代」 第62号(平成19年8月) 一緒に考えましょう、国会等の移転

最近のブラジリア

寄稿:名古屋工業大学大学院教授
山本幸司

1.ブラジリアの概要

ブラジリアは標高1,100mにある高原都市で、雨季(10月〜3月)と乾季(4月〜9月)に分かれ、乾季には湿度が20%を下回るため、大量に水分を補給しないと肌や唇が荒れてしまう。気温は年間を通じてほとんど変化せず、日中は30℃を超えるものの、朝夕は涼しさ、肌寒さを感じるほどである。

ルシオ・コスタが提案したブラジリア中心部(これをプラノ・ピロットと呼ぶ)は飛行機の形をしているというのが通説であるが、彼自身は十字架をイメージしたというのが真実である。


建都初期のプラノ・ピロット模型

プラノ・ピロット(本来の意味は都市計画マスタープラン)は、機首が東(実際は東南東)を向いており、胴体にあたる東西軸が首都機能の中核となる公共ゾーン、主翼に相当する南北軸が居住ゾーン、主翼付け根部分が商業ゾーンを形成し、用途純化が大胆である。なお機首前面は広大な人造湖となっている。

胴体方向は長さ約10kmに及び、機首部分に大統領公邸、少し離れて三権広場(国会議事堂、最高裁判所、大統領府)がある。東西軸を形成する幹線道路の両側には官公庁施設が続き、その周辺に各種文化施設が展開している。官公庁施設はデザインや高さが統一されてきたが、昨今は床スペース不足のため、各建物の裏側にアネックスが数多く建設されている。この幹線道路は中央部に幅員数百mに及ぶグリーンベルトを持ち、片方向6車線の大幹線となっている。ブラジリアのシンボルであるテレビ塔を尾翼方向に下がると、右手に連邦特別区政府関連施設やスポーツ施設、軍事施設が展開し、左手は広大な都市公園が配置されている。尾翼部分には鉄道駅があったが、現在は長距離用バスターミナルとして機能している。

胴体と交差する主翼のつけ根部分には各種商業施設や近距離用バスターミナルが立地し、南北に分かれたホテル地区はホテルのみが林立しており、これらの地区は道路交通量が特に多く、駐車スペースが不足している。用途純化といえば、右翼前方部を中心とする各国の大使館が点在する大使館街も見事である。なお、私が赴任したブラジリア大学は左翼前方部に位置する。


官公庁街上空からのプラノ・ピロット鳥瞰

主翼方向は約13kmに及び、南街区(右翼部)と北街区(左翼部)に分かれる。この南北軸を形成する幹線道路は、中央分離帯用あるいは緊急車両走行用としての1車線を含めると合計7車線で構成され、都心と空港や衛星都市群を結んでいる。この幹線道路は日曜日に歩行者天国となり、多数の市民がジョギングやサイクリングなどを楽しむ光景は壮観といえよう。この幹線道路の両側には、片側2車線と中央分離帯を持つ準幹線道路が1本ずつ整備されているため、幹線と準幹線を合わせると片方向7車線ずつという大動脈が形成されていることになる。

この大動脈の東西両側に住宅地区が配置されている。個々の住宅地区はクァドラと呼ばれ、1辺240mの正方形を成す均一な区割りの中に、1階のピロティ部分を除けば6階建もしくは3階建の集合住宅が最大で11棟建設され、十分な駐車スペースが配置されている。各クァドラへの車両の出入り口は1ヶ所しかなく、クァドラ内部は袋小路となっているため、通過交通は完全に排除されている。またクァドラ内は歩車分離が原則となっており、十分な緑が配置されている。クァドラの近くには近隣商店街が配置されているが、大型スーパーは郊外部に立地している。

ルシオ・コスタは、都市人口をプラノ・ピロット内で収容しうると考えたようであるが、実際には都市化の波がプラノ・ピロット外延部にも進展し、また10を超える衛星都市が発生している。その中にはプラノ・ピロット(人口約40万人)よりも大きく成長した都市もあり、さらに近年はブラジリア特別区を超え、周辺のゴイアス州へも拡大している。

2.ブラジリアの都市交通

主翼部の幹線道路には交通信号が全くなく、制限速度は80km/時である。2本の準幹線道路も都心部を除けば交通信号が設置されておらず、制限速度は60km/時である。これらの幹線、準幹線に並行して制限速度50〜60km/時の補助幹線道路が数本ずつ走っているが、原則として左折禁止であり(ブラジルは右側通行)、一度右折した後にUターンレーンを使用して反対車線に入るようになっている。なおクァドラ周辺の区画道路では交差点がロータリー方式になっており、制限速度も40km/時に抑えられている。


テレビ塔からみた胴体付け根部分と官公庁街

幹線、準幹線道路を挟んで分割されている東西のクァドラ間を結ぶ道路と幹線、準幹線道路相互はすべてクローバー型の立体交差が採用されている。しかし、歩行者に対する配慮は乏しく、南街区、北街区にそれぞれ2〜3箇所の地下横断歩道が整備されているのみである。また自転車交通に対する配慮はほとんどない。

ブラジルでは現在でも自動車交通が優先されるが、ブラジリアに限っては幹線、準幹線以外の道路に対して大々的に横断歩道が導入された。1人でも道路を横断しようとする歩行者がいるとすべての車両は停車し、完全に横断し終えるまで発進しない光景は、我が国でも是非見習いたいものである。もっとも、これが交通渋滞の一原因となっていることも事実であるが。

ブラジリアの公共輸送機関といえば、首都にないのはおかしいという発想で強引に事業化した地下鉄(市内中心部から南街区を経由してプラノ・ピロット南部の衛星都市を結ぶ一路線のみで、途中は地上を走行)が完成するまではバス輸送のみであったが、バス停はお世辞にも綺麗とはいえず、路線図はもちろんのこと、時刻表もない。

ブラジリアの道路交通特性としては、(1)バス利用者は中・低所得者層であること、(2)朝は郊外から都心方向へ、夕方はその逆方向へという単純なトリップ構造であること、(3)自家用車利用者の多くは子弟を学校(多くは2部制もしくは3部制)へ送迎するため、また昼休みは自宅へ戻って昼食をとる習慣が強いため、朝夕だけではなく、昼前後にもトリップが集中し、交通渋滞を発生していること、等があるが、これらは都市交通の効率化を阻害しているといえる。

ブラジリアには都心から12km程の場所に、首都建設当初から空港が整備されているが、ここ数年の間に大規模な改修が進められ、斬新なデザインの空港に変貌している。しかし国際空港とは名ばかりで、本来の意味での国際線は就航していない。

3.結びにかえて

ブラジリアは首都機能に特化した近代都市といっても過言ではなく、商・工業機能はそれ程活発ではない。リオやサンパウロと比較するとやや物価が高いが、治安がよく、気候的にも住み易いことが特徴である。

ブラジリアは建設後わずか47年の若々しい首都であるが、プラノ・ピロットは1987年にユネスコの世界文化遺産に登録された。これまでもブラジリアの都市計画について賛否さまざまな意見があったが、ブラジリアが今後どのように発展していくかを興味深く見守りたい。

「首都直下地震における国の復興対策に関する検討課題」
〜内閣府検討会報告書〜

寄稿:内閣府政策統括官(防災担当)付
参事官(災害復旧・復興担当)付
参事官補佐 塩本知久

首都直下地震とは、東京を含む南関東地域の直下で発生するマグニチュード(M)7程度(参考:阪神・淡路大震災の地震規模M7.3に匹敵)の地震で、今後100年から200年程度の間に数回程度発生すると想定されています。政府の中央防災会議(議長:内閣総理大臣)では、「首都直下地震対策大綱」(平成17年)や「首都直下地震の地震防災戦略」(平成18年)などを定めて被害とその影響の軽減のための取り組みを進めています。

一方、地震の被害から速やかに立ち直るための復興対策に関しては、予防的な対策や応急的な対策に比べ、具体化の取り組みが遅れていました。このため、首都直下地震の復興対策として、どのような課題が想定されるかを、国として対応すべきことを中心に提示することを目的として、今年2月に「首都直下地震の復興対策のあり方に関する検討会」が設置されました。この検討成果としてとりまとめられたものが表題の報告書です。

首都直下地震の特性

想定する首都直下地震は、平成17年7月の中央防災会議首都直下地震対策専門調査会報告で示された「東京湾北部地震」としました。冬夕方18時風速15m/sの条件の下では、死者数約11,000人、建物全壊棟数・火災焼失棟数約85万棟、経済被害約112兆円が生じると想定されています。首都直下地震による被害の特徴は、「首都機能の障害による影響」と「膨大な被害の発生」です。「首都機能の障害」は、被災地域のみならず全国民の生活に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、グローバル化した世界経済のなかで、金融や物流の拠点の日本からの流失をもたらす可能性があります。「膨大な被害」という点では、建物全壊・焼失棟数が阪神・淡路大震災の約8倍に達するなど想像を絶する被害のため、その復興への道のりも、かつて経験したことのない大規模で長期間のものとなります。

背景となる社会情勢等

わが国では人口高齢化が今後更に進み、高齢者の絶対数及び割合とも大きく増加します。他方では少子化傾向の継続により、わが国は既に人口減少社会を迎えています。また、経済については、かつてのような高度経済成長は望むべくもない状況です。

このような状況で発生する首都直下地震では、その復興とは必ずしも人口や経済の規模の拡大につながるものではありません。復興に当たり、量ではなく質の向上をどう図るかということが重要であり、全国的かつ長期的視点から最適な戦略が採られるべきだとの指摘がありました。

指摘された検討課題

指摘された検討課題は35項目に上ります。一例を挙げれば、政治・行政の中枢地域の被災に対し、

  • 復興対策を総合的に推進する国の体制をどうするか
  • 国会や中央省庁等の機能をどのようにして維持するか

膨大に発生する被災者に対する支援に関しても、

  • 膨大な量の仮住まいをどのようにして確保するか
  • 恒久的な住まいの確保をどのように進めるか
  • 疎開先等で生活を再建する被災者の住まいの確保に関して、どのような措置が必要か
  • 雇用確保、地域経済再建の観点から、中小零細企業対策にどう取り組むか

さらに、経済の中枢地域ということから、

  • 日本経済への中・長期的影響の把握とその対策をどうするか

ということも非常に重要な課題です。

今後の取り組み

首都直下地震の復興対策に関しては、これから本格的に検討が行われる必要があります。内閣府を始めとする関係機関において、本報告書の内容の他にも検討すべき事項がないか、提示された検討課題についても(1)実施を想定する対応事項の明確化、(2)制度面及び財政面からの取り組み計画などにつき、更なる検討を行うことが要請されています。

データにみる国土

今号から、国土に関するさまざまなデータを紹介していきます。第1回は、三大都市圏等における人口移動についてです。

下図は、東京圏、名古屋圏、関西圏、地方圏及び東京都の人口の転入超過数を示したものです。それをみると、名古屋圏や関西圏への人口純移動は少なく、人口の純移動の大半は、東京圏と地方圏の純移動で説明することができます。1990年代半ば以降、東京圏への再集中傾向がみられます。

グラフ
三大都市圏及び地方圏における人口移動
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いろいろなところで国会等の移転の勉強が行われています

5月29日(火)、東京都新宿区の海城中学3年生の生徒さんが、社会学習のため国土交通省首都機能移転企画課を訪れました。生徒さんからは自然環境への影響や、首都機能移転に関する今後の課題などに関する質問が出るなど、熱心に学習にとりくんでいました。


学習の様子

トピックス

最近の国会等の移転に関する各地の主な動き
  • 栃木県国会等移転促進県民会議は、藤岡町で開催された「栃木県県民の日」のイベント(6月9日、10日)に、国会等移転情報コーナーを出展し、PRパネルの展示、パンフレットの配布等、国会等の移転に関する情報提供を実施。
  • 平成19年3月19日三重畿央新都推進協議会は、国会等の移転に関する政党間両院協議会メンバー等に、「首都機能移転に関する要望」を提出。危機管理機能の中枢の優先移転などについての方向性を速やかに取りまとめるとともに、本来の首都機能移転の実現に向けて精力的に検討を進めることを要望。
  • 首都機能移転先候補地である3地域8府県は、共同で首都機能移転をPRする雑誌広告(国際的な視点から首都機能移転推進の意義を訴える提言記事:財団法人日本総合研究所会長 寺島実郎氏、立命館アジア太平洋大学学長 モンテ・カセム氏)を週刊東洋経済、週刊ダイヤモンド、週刊エコノミスト及び週刊AERA に掲載(3月17日)

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