「21世紀の国土のグランドデザイン」 第1部 第3章 第3節

第3節 制度・体制の整備



1 計画の効果的推進

 この計画は様々な主体の参加を得て効果的に推進されなければならない。とりわけ、「参加と連携」により、多自然居住地域の創造、大都市のリノベーション、地域連携軸の展開、広域国際交流圏の形成の4つの戦略を効果的に推進するため、国は、地方公共団体、そして様々な民間主体の意向を踏まえ、戦略を推進するための指針となるものを速やかに策定し、4つの戦略の具体的な推進方策を明らかにすることとする。

 この計画によって明らかにされた今後の国土づくりの基本的方向を具体化するに当たっては、その基本性を確保しつつ、今後の諸情勢の変化や、現在進められている諸改革の進捗に応じて弾力的な対処がなされなければならない。このため、地域における関連する諸施策の実施状況や本計画に対する国民の意見を十分に把握しつつ、国土審議会において計画の推進状況を毎年点検するとともに、関係行政機関に対して計画の推進に必要な提言を行う。

 望ましい国土構造を実現するための基礎となる国土基盤の整備について、着実な整備を進める観点から、本計画と公共投資基本計画等の国土基盤整備に係る各種の長期計画との緊密な連携と調整を図るとともに、国土利用に関する諸計画と、各種の基盤整備に関する計画の調整を行う。また、各種事業間の連携を行うなど事業間の調整を適切に行う。さらに、環境への配慮を十分に行う観点から、国土基盤の整備に当たっては、環境保全に関する各種計画との連携を図るとともに、環境影響評価等を適切に実施する。

 四全総においてその形成が目標とされた多極分散型国土は、長期的に多軸型国土を形成する上での過程としてとらえられるべきものであることを踏まえ、本計画の推進に当たっては、多極分散型国土形成促進法に基づく施策を含め、既存施策の有効な活用を図る。

 また、今後の諸情勢の変化や行財政改革等の進展に応じて計画の総合的な点検を行い、必要に応じて見直しを行う。

 なお、北方領土については、全国土の一環として開発、整備が進められるよう計画されなければならないが、現在、特殊な条件の下におかれているので、条件が整った後、早急にこの計画に所要の改訂を加え、総合開発の基本的方向を示すこととする。


2 土地利用に関する諸施策との連携

 21世紀において望ましい国土構造の実現を視野に入れつつ、計画期間中に、多自然居住地域の創造、大都市のリノベーション等本計画の戦略、施策を通じた個性的で魅力ある地域づくりを展開するに際しては、国土の安全性の確保、自然環境の保全、都市構造の再編、美しくアメニティに満ちた地域づくり等の面で、土地利用に係る施策と密接にかかわってくることから、それとの連携強化を推進する必要がある。

  (土地政策との連携)

 「所有から利用へ」との理念の下、新総合土地政策推進要綱(平成9年2月10日閣議決定)において示された総合的な施策を展開する土地政策との連携を図ることとし、ゆとりある住宅・社会資本の整備と、自然のシステムにかなった豊かで安心できるまちづくり・地域づくりを目指した土地の有効利用による適正な土地利用を推進する。また、特に大都市等の既成市街地を中心に、都市基盤の整備を始め、低未利用地の利用促進、老朽木造密集市街地の整備等による災害に強いまちづくり、都心居住の推進等、土地の有効利用のための諸施策の推進を図る。


  (国土計画と整合のとれた土地利用計画の作成)

 地方公共団体は、本計画に沿って、住民の便益や厚生の向上のための生活基盤の整備、 安全で安心できる地域づくりを推進するための諸施設の整備、オープンスペースの確保、地域区分の設定等、住民に身近な自然を確保し、後世に継承していくための自然環境の保全、美しさとアメニティに満ちた地域づくり、都市機能を充実するための都市基盤の整備、地域経済を支える産業基盤の形成等を実現していくことが求められ、そのため、これらの諸課題について調和のとれた土地利用計画を作成することが期待される。また、農山漁村において生産地域と併せ居住地域等を一体的に扱う観点から、国土利用計画を始めとする土地利用関係計画の一層の活用、運用改善が図られる必要がある。これに対し、国は、土地に関する各種計画間の調整が円滑に進むよう体制を整える、情報の収集・提供や技術的支援の提供の体制を整えるなどの措置を講じ、前述の趣旨を踏まえ、目指すべき土地利用の実現に向けて地方公共団体が策定する土地利用計画の充実が図られるよう努める。



3 国土行政の情報化の推進

 高度情報化時代の到来にともない、様々な主体が蓄積、利用する国土空間に関する情報の集 積は、公的主体が行政事務の立案、遂行等に利用するのみならず、民間企業や国民がこれを広く活用し、高度情報化時代における基盤を形成するものである。

 このため、国土政策の立案や検討の基礎をなす基盤的な国土情報の整備を含め、国土行政の情報化を一層進めることにより、国土行政の高度化・効率化を図る。加えて、国、地方公共団体が協力して、国土空間情報を整備、利用するための共通の規格やルールを策定するとともに、こうした情報をデータベース化し、データベースを広く利用・活用できるよう努める。

 また、国や地方公共団体が蓄積した基盤的な国土情報について、利用や加工が容易な形式で公開することにより、国土政策の立案や検討の過程で広く国民の意見を求めるための基礎を形成するとともに、これを利用した新しい産業の創出にもつながることが期待されることから、各種の媒体を利用した積極的な公開を推進する。



4 新たな国土計画体系の確立

 現行の国土計画体系は、昭和25年の国土総合開発法制定を始めとして、昭和30年代を中心とした多くの関連諸法令の制定、さらに昭和49年の国土利用計画法の制定を経て構築されたものであるが、現在、国土計画の理念の明確化の要請や地方分権、行政改革等の諸改革に対応する必要が生じている。このため、国土総合開発法及び国土利用計画法の抜本的な見直しを行い、以下に掲げるような21世紀に向けた新たな要請にこたえ得る国土計画体系の確立を目指す。

  (国土計画の理念)

 国土計画の理念は、国土の開発のみにとどまらず、国土の利用や保全にまで広がる広汎なものとなっている。国民の価値観の多様化や経済社会情勢の変化に的確に対応しつつ新しい時代の国土づくりを進めるため、これらを総合的な理念として国土計画体系に明確に位置付ける。

  (諸改革を踏まえた対応)

 地方分権、行政改革等の諸改革を踏まえ、国土計画における全国計画と地方計画の位置付け及び役割の明確化、多様な主体の意見を反映し得るような計画策定手続の整備等を図る。

  (指針性の充実)

 国土基盤整備を重点的かつ効率的に行う観点から、また、地域のニーズに応じた国土づくりを行う観点から、国土の開発、利用及び保全に関する他の計画との関係で、国土計画の内容が実効あるものとなるよう、指針性の充実を図る。
 なお、地域開発に関係する諸法令の下での計画体系については、それぞれに異なる目的、意義等を有するものであるが、時代の変化にともなう新たな政策的要請への対応が求められる。このため、今後、新たな国土計画の理念や国土計画体系の明確化をも踏まえ、そのあり方を検討する。


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