Archives

LINKSのイベント開催記録やコラム

LINKS:DATA × Hackathon
アイデアソン
ー国土交通分野のオープンデータが生み出すイノベーション

EVENT

2024-10-05

2024年10月5日に「LINKS:DATA × Hackathon アイデアソン」を開催しました。一般募集した多様なバックグラウンドを持つ参加者がチームを組み、LINKSのオープンデータを用いた新しいソリューションアイデアを提案するイベントの第一弾です。本イベントでのアイデア検討を通して、データに関するフィードバックをいただき、オープンデータを改善・拡充することを狙いとしています。

開催日時:2024年10月5日(土) 10:00〜18:00

開催場所:パレスサイドビル8階 NSホール


ファシリテーター:池澤あやか氏

エンジニア・タレント

慶應義塾大学SFC環境情報学部卒業。2006年、第6回東宝シンデレラで審査員特別賞を受賞し、芸能活動を開始。現在は、情報番組やバラエティ番組への出演やさまざまなメディア媒体への寄稿を行うほか、IT企業に勤め、ソフトウェアエンジニアとしてアプリケーションの開発に携わっている。

メンター:西尾悟氏

株式会社MIERUNE Engineering Manager

2児の父をやりながら株式会社MIERUNEでGIS(地理空間情報)とWeb開発を行う。Python / Rust / GIS / 点群 / 3D Tiles / AWS / WebGL / PLATEAU / Cesium Certified Developer

メンター:久田智之氏

株式会社アナザーブレイン 代表取締役、みんキャプ運営委員会 委員長

インターネットを活用したさまざまなプロジェクトを企画・開発。小中学生を対象にしたプログラミング体験会の開催や、公立諏訪東京理科大学でデジタルツイン講座を担当するなど地域のデジタル人材育成にも取り組む。近年は生活シーンのさまざまを「3D化して3D地図(PLATEAU)に表現」する「みんキャプ(みんなでキャプチャー)」コミュニティ活動に注力している。

メンター:野宮正嗣氏

株式会社日立製作所 Digital Engineering Business Unit /Data & Design/Data Studio

新技術を活用した顧客協創PJ、データに基づく社会課題の解決を推進。金融機関向け生体認証の事業化など事業開発分野に従事。 2021年 日立×Intel AI Hackathonにてエキシビジョンチームを結成し超短期間でのプロトを開発。PMP、データサイエンティスト、デザインシンカー、無人航空機操縦士。

メンター:内山裕弥

国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 総括課長補佐

Project LINKS テクニカル・ディレクター

PLATEAU ADVOCATES 2024

東京大学 工学系研究科 非常勤講師東京大学 空間情報科学研究センター 協力研究員

1989年東京都生まれ。首都大学東京、東京大学公共政策大学院で法哲学を学び、2013年に国土交通省へ入省。国家公務員として、防災、航空、都市など国土交通省の幅広い分野の政策に携わる。法律職事務官として法案の企画立案や法務に長く従事する一方、大臣秘書官補時代は政務も経験。2020年からはProject PLATEAUのディレクターとして立ち上げから実装までを一貫してリード。2024年4月から現職。

プログラム1 データの紹介

プログラム2 チームアップ&ブレスト

プログラム3 プレゼンテーション&メンター講評

プログラム1 データの紹介

本アイデアソンではLINKSの取り組みを通じてオープンデータとして公開を検討中のデータについて紹介しました(サンプルデータを用意したデータは、以下➀~➅)。

 一般旅客定期航路事業許可申請書や事故調査報告書、気象庁の海上分布予想データを統合。

 無人航空機(ドローン)の飛行計画、事故等報告一覧、操縦者リスト、機体登録データを統合。

 貨物トラックの事業(貨物自動車運送事業)に関する事業報告書、毎月の勤労統計調査データを統合。

 内航海運業(貨物船の運送、貸渡し、管理をする事業)に関する事業概況報告書(営業概況/損益明細書等)や登録申請書のデータを統合。

 モーダルシフト(トラック等による貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること)を実現するために、JR貨物の時刻表、JR貨物駅の位置情報、貨物船とフェリーの時刻表、および複数交通モードの経路探索結果のデータを統合。

 河川や道路を含む管内図(国土交通省の各出先機関が管轄するエリアを示す地図)のデータを、所管組織・所管業務・所管手続のデータと統合。

 倉庫業の登録関連データ、倉庫使用状況報告データ、事業者棟別リスト、物流拠点データを統合。

 自動車運送事業の事故報告書、警察庁の交通事故統計情報のデータを統合。

 GTFS(General Transit Feed Specification)は交通関連情報をデータとして配信するための国際標準仕様。公共交通オープンデータセンターから、国内では鉄道、バス、航空、シェアサイクルに関するデータセットを公開中。

プログラム2 チームアップ&ブレスト

データの紹介を聞きながら、全参加者で簡単なアイデア出しを行い、最も興味を持ったデータごとに分かれてチームアップしました。

チームでのブレストでは、データの活用方法や組み合わせを検討しながら、システムやプラットフォーム、アプリケーションの構築についてアイデアを出し合いました。一部のチームでは簡易プロトタイプを作成しながらイメージを膨らませていきました。途中でメンターからのフィードバックも受けながら、プレゼンテーションのための資料を作成。約4時間半のブレストを経て、アイデアをまとめていきました。

プログラム3 プレゼンテーション&メンター講評

■使用したデータ

Open Data ⑥ 国土交通省組織管内図データ

■提案のポイント

  • 道路や河川の占用許可を申請する際に手間がかかることに着目し、管轄エリアと組織図を統合した申請プラットフォームを提案。
  • 占用したいエリアを地図上で指でなぞって指定したり、オンラインでフォームを記入して送信ができるBtoCアプリのアイデアを検討。
  • 本プラットフォーム内で、手続の申請ができる種類の拡充などの発展形アイデアも検討。

■メンターからのコメント

  • 申請内容に対して「ほかの省庁の管轄になります」と返答する機能を搭載するのは面白い。将来的に、各省庁や自治体を包括し、横断的に利用できるプラットフォームとなることに期待。
  • この提案のロジックやアイデアには賛成だが、実装にはまだ課題が残る。4年ほど前から各種申請のオンライン化・デジタル化が始まり、さまざまなシステムが存在しているが完全移行はできていない状況。
  • オンライン申請をどのようなデータ形式で蓄積し、きちんと活用できるようにするまでには少しハードルがありそうなので、ファーストステップとしてはある程度までにとどめておいたほうが実現可能性は高まるかもしれない。
  • 申請書の様式をひもづけつつ、徐々に紙ベースからオンラインベースに移行できるような仕組みをつくらなければならない。将来的にそれができるようにしておけるとよい。

■使用したデータ

Open Data ① 一般旅客定期航路事業データ

Open Data ④ 内航海運事業データ

■提案のポイント

  • 既存の技術や船の詳細情報に関するオープンデータを組み合わせ,船舶会社や乗組員,事故発生時に関与する保険会社などにとって有益なシステムを提案。
  • AISによるAI航路予測や、船のスペックによる事故回避ルート予測、海底形状情報を活用した事故回避ルート予測など、総合的にシミュレーションし事故を回避する。

■メンターからのコメント

  • とても説得力があり、船舶の事故に詳しくなくても課題が理解できた。
  • 船舶同士の衝突を回避するには、相手の動きにどう対応するかという難しさがある。データを活用した予測シミュレーションで事故防止にどこまでアプローチできるか期待したい。
  • 過去時点のオープンデータとLLMを組み合わせ、AIを使って最適解を導いて各船舶に送信できるようになると面白い。

■使用したデータ

Open Data ⑧ 自動車運送事業者事故報告書データ

■提案のポイント

  • 事業者情報=車両状態・走行履歴などを考慮して安全運転を支援するサービスを提案。
  • ①ルート危険度シミュレーションサービス:自動車運送事業事故報告書データを活用し事故のリスクを予想することで、安全な運行を支援。
  • ②点検情報お知らせサービス:データを基により精度良く点検時期をお知らせ。

■メンターからのコメント

  • ルートの提案は、時間や料金、混雑度などのデータも加味する必要があり、実際には難易度が高いが、運送業者の実績を利用者自身ではめ込むことで総合的に判断できるシステムはできるかもしれない。
  • 事業者は効率を優先するため、それを前提としたシステムにしないと、受け入れてもらいにくい可能性がある。
  • 個々の車両の問題は利用者が把握しているところ。それよりも、みんなが気づかないことを導けることをバリューとできるとよい。

■使用したデータ

Open Data ➄ モーダルシフト関連データ

・日本貨物鉄道GTFSデータ(貨物時刻表)

[その他の既存データ]

・国土数値情報鉄道データ(鉄道線形情報)

⇒貨物路線の路線形状を取得

・全国貨物純流動調査(県間の鉄道貨物輸送品目)

⇒物品の種類の特定に使用

■提案のポイント

  • 鉄道で運ばれる物資に着目し、JR貨物のGTFSデータと全国物資純流動調査のデータを組み合わせ、物流の『見える化』を実現するシステムを提案。
  • 指定した時間や季節に応じてシミュレーションすることで、輸送時間や季節ごとの変動も簡単に把握可能。
  • 実際に画面イメージのデモも作成。

■メンターからのコメント

  • サービスを開発する背景として、ストーリーの完成度が高い。貨物列車から始めてマルチモーダルへと展開していくイメージがもてた。
  • 食材のトレーサビリティについての教材への応用もできそう。
  • 追加の設備投資なしで既存システムから貨物情報を参照できるとよい。
  • 例えば、自分の位置情報がリアルタイムに路線上で動き、それを追い抜かす列車の情報が現れたら「●●列車に抜かれた!」と分かり、面白そう。

■使用したデータ

Open Data ⑤ モーダルシフト関連データ

Open Data ③ 貨物自動車運送事業データ

Open Data ④ 内航海運業事業データ

[その他の既存データ]

・Open Street Map(道路ネットワークデータ)

・基盤地図情報(標高データ)

・災害予測データ(気象庁:防災情報、ハザードマップ)

・災害時の道路寸断状況データ(道路プロープデータなど)

■提案のポイント

  • 輸送手段(トラック、船、貨物列車)ごとのCO2排出量を計算してCO2排出を最小とする輸送手段をレコメンドできるシステムを提案。
  • 有事には、災害時の陸路、海路の寸断情報も活用して代替輸送手段をレコメンドする。(例:陸路が使えない場合は海路を提案)
  • LINKSのデータとその他オープンソースを組み合わせて、課題解決に向けた活用方法を検討。

■メンターからのコメント

  • 災害時に、手作業で代替経路を引き直すのに比べて、どのくらい時間や精度に差が出るのか指標を出せるとよい。
  • 災害時に寸断されたネットワークをふまえた最適ルートをインタラクティブに明示するのは少しハードルがありそう。
  • オープンソースを使いながら、災害の発生した場所に関しては分離させて検索できるようにすれば、それなりに機能するかもしれない。

■使用したデータ

GBFS(全国のシェアサイクルのオープンデータ)形式のデータ

[その他のオープンデータ]

・シェアサイクルのドック(シェアサイクルポート)の位置情報

・リアルタイムな空き情報

・人流オープンデータ(移動需要の把握)

・工事情報(自転車の経路提案)

・道路の状態情報(坂道・道路の増幅)

・その他(事故情報等)

■提案のポイント

  • 現状のシェアサイクルの使いにくさに着目し、GBFSデータを元にした安全・快適な自転車経路のナビアプリを提案。
  • 利用者から収集したデータをもとにシェアサイクル供給の最適化を図り、スマートシティにおける自転車利用促進や、バイクシェア保険等の新たな産業創出へ。

メンターからのコメント

  • 自転車で走行しているときに、どのように安全性を担保しながらナビゲートできるか、というイメージも必要。
  • 時系列でデータベース化することは賛成。GBFSデータが長期的に蓄積されると利用傾向が把握でき、需要に即したサービスに発展できそう。

■使用したデータ

Open Data ② 無人航空機飛行計画データ

■提案のポイント

  • データを元に事故情報をカウント分析した結果、ドローンの事故報告の約70%は障害物への接触事故(電線+木)、接触というキーワードと判明。
  • 事故原因や弊害そのものを解決するための自動データ更新型ドローンシミュレーションを提案。
  • 実際にシミュレーターのデモも作成。

■メンターからのコメント

  • ドローンのユーザーが積極的に撮影画像をアップロードする仕掛けとして、ゲーミフィケーションやWeb3の要素があると面白いかもしれない。
  • 統計データをどう結びつけるかを深掘りすれば、DIPSのソリューションではなくLINKSのソリューションとして成立する。上空の障害物の3D生成は、専用ソフトを使えばできなくはないが、実装レベルにはハードルがある。

西尾氏:アイデアソンには初めて参加しましたが、レベルの高さに驚きました。データやユースケースをしっかり深掘りされた面白い提案ばかりでしたので、ぜひハッカソンで完成させて、実際に稼働するところまで楽しんでほしいです!

野宮氏:最近、企業では議論のときに課題から入ることが多いのですが、課題解決には1社のデータだけでは難しい。だからこそ、今回のようにさまざまな背景を持つ方が協力して考えることに意義があると感じました。今後ご一緒できればうれしいです!

久田氏:みなさんが笑顔で楽しそうにされていて、ここからオープンデータの世界が変わる予感がありました!Project LINKSで日本の国土と交通の発展につながるものを一緒につくっていけたらと思います。

内山:今回、多くの方に実際にLINKSのデータを触ってもらえる機会となりよかったです。LINKS初のアイデアソンでしたが、来月もハッカソンを開催しますので、ぜひご参加ください!

関連記事

ASCII.jp

【アイデアソン】 LINKS:DATA x Hackathon

PageTop