下水道

水循環基本計画

1)概要
 水循環基本計画は水循環基本法(平成26年法律第16号)に基づき、水循環に関する施策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣に水循環政策本部が設置されています。水循環基本計画は、平成27年7月10日に閣議決定されました。
(首相官邸HP:https://www.kantei.go.jp/jp/singi/mizu_junkan/kihon_keikaku.html )
 


2)下水道に関連する主な記載
 
第2部 水循環に関する施策に関し、政府が総合的かつ計画的に講ずべき施策
 
1 流域連携の推進等 -流域の総合的かつ一体的な管理の枠組み-
(3) 流域水循環協議会の設置と流域水循環計画の策定
○ 地方公共団体、国等は、既存の流域連携に係る取組状況など地域の実情に応じて、流域単位を基本として、地方公共団体、国の地方支分部局、有識者、利害関係者(上流の森林から下流の沿岸域までの流域において利水・水の涵養・水環境等に関わる事業者、団体、住民等)等から構成される流域水循環協議会の設置と流域マネジメントを推進するよう努めるものとする。
○ 流域水循環協議会は、水循環に関する施策を推進するため、関係者の連携及び協力の下、水循環に関する様々な情報(水量、水質、水利用、地下水の状況、環境等)を共有し、流域の特性や既存の他の計画等を十分に踏まえつつ、流域水循環計画を策定する。なお、当該計画の策定の進め方は、計画の目的や対象範囲の大きさに応じて、流域水循環協議会を構成する関係者で決定する。

(4) 流域水循環計画
○ 流域水循環計画には、[1]現在及び将来の課題、[2]理念や将来目指す姿、[3]健全な水循環の維持又は回復に関する目標、[4]目標を達成するために実施する施策、[5]健全な水循環の状態や計画の進捗状況を表す指標、等を地域の実情に応じて段階的に設定する。
○ 森林、河川、農地、下水道、環境等の水循環に関する各種施策については、流域水循環計画で示される基本的な方針の下に有機的な連携が図られるよう、関係者は相互に協力し、実施する。

2 貯留・涵養機能の維持及び向上
○ 民間等による雨水貯留浸透施設の設置を促進するなど、雨水の適切な貯留・涵養を推進することで、浸水被害の軽減を図るとともに、水辺空間の創出などの取組を推進する。

3 水の適正かつ有効な利用の促進等
(1)安定した水供給・排水の確保等
ア 安全で良質な水の確保
○ 生活排水対策として、持続的な汚水処理システムの構築に向け、下水道、集落排水施設、浄化槽のそれぞれの有する特性、経済性等を総合的に勘案して、効率的な整備・運営管理手法を選定した都道府県構想に基づき、適切な役割分担の下での計画的な実施を促進する。
イ 災害への対応
○ 国、地方公共団体等は、広域的な大規模災害時においても給水・排水を確保するため、水道施設における他の系統から送配水が可能となる水供給システムや貯留施設の整備の推進、応急給水等の体制の強化や汚水処理施設におけるネットワークの相互補完化等を実施するよう努めるものとする。

(3)水インフラの戦略的な維持管理・更新等
○ 国、地方公共団体等は、施設機能の監視・診断等によるリスク管理や情報基盤の整備・活用を行いつつ、施設の戦略的な維持管理・更新(老朽化対策)を実施するよう努めるものとする。
○ 水道事業、下水道事業、工業用水道事業等の事業基盤の強化のため、今後の人口規模等を見据え、地域の状況に応じた施設整備や事業運営が必要となる。このため、必要に応じ、更新等に合わせて、施設の統廃合やダウンサイジング、広域化等による施設の再構築、経営の統合や管理の共同化・合理化を図るとともに、民間の経営ノウハウ、資金力、技術力の活用を図るための官民連携の支援を行う。
○ 河川管理施設・下水道施設の戦略的な維持管理・更新等のため、次世代社会インフラ用ロボットなどの新技術を活用した点検・診断技術の開発・導入等を推進する。

(4)水の効率的な利用と有効利用
イ 雨水・再生水の利用促進
(雨水利用)
○ 水資源の有効利用を図り、併せて下水道、河川等への流出の抑制に寄与することを目的とした雨水の利用の推進に関する法律(平成26年法律第17号)に基づく建築物を整備する場合の雨水の利用のための施設の設置や下水道施設を活用した雨水の利用を推進する。また、広報活動等を通じた普及啓発を推進する。
(再生水利用)
○ 渇水時等に下水処理水を緊急的に利用するための設備の整備等を推進する。
○ 再生水の利用促進のため、より高効率な膜処理技術などの水処理技術、水質の適正なモニタリング技術等の活用を推進する。

(5)水環境
(汚濁負荷軽減等)
○ 生活排水対策として、持続的な汚水処理システムの構築に向け、下水道、集落排水施設、浄化槽のそれぞれの有する特性、経済性等を総合的に勘案して、効率的な整備・運営管理手法を選定した都道府県構想に基づき、適切な役割分担の下での計画的な実施を促進する。
○ 合流式下水道については、その汚濁負荷の分流式下水道並みへの改善対策を推進する。また、放流先水域の水利用への影響を把握した上で、必要に応じた対策を推進する。
(湖沼・閉鎖性海域等の水環境改善)
○ 湖沼や閉鎖性海域等における水質改善に向け、既存の下水道施設の一部改造や運転管理の工夫による段階的高度処理を含む高度処理の導入や高度処理型の浄化槽の普及等を推進する。また、面源対策等の促進のため、各主体や地域が連携した、より効果的な水質改善への対応策を検討する。
○ 下水処理場においては、必要な水域について、排水管理に関する検討や順応的な取組を推進する。
(技術開発・普及等)
○ 高効率で効果的な水処理技術等について、技術の開発・普及を促進する。

(7)水辺空間
○ 再生水・浄化槽放流水を利用した河川や水路への導水等により、水辺空間の創出・再生を推進する。

(9) 水循環と地球温暖化
ア 適応策
○ 地球温暖化に伴う気候変動による影響の評価結果を踏まえ、適切に対処するための、水害や渇水など水災害リスクへの対応や、水質と生態系に対する影響への対応などの適応策を推進する。
イ 緩和策
(水処理・送水過程等での地球温暖化対策)
○ 新技術の開発・普及等により消費電力を抑えた水処理などの下水処理における省エネルギー対策や雨水・再生水利用等の推進、バイオガス発電や下水熱の地域冷暖房への活用など、下水汚泥・下水熱などの再生可能エネルギーの有効活用により温室効果ガスの発生を抑制する取組を推進する。また、資源の輸送時に排出される二酸化炭素の抑制が期待される下水汚泥の肥料としての再生利用を推進する。

4 健全な水循環に関する教育の推進等
(1) 水循環に関する教育の推進
(学校教育での推進)
○ 小学校、中学校及び高等学校において、学習指導要領を踏まえ、発達の段階に応じた水循環に関する教育を推進する。
○ 学校教育に活用できる水循環関連の副教材の作成を促進する。また、水循環に関する教育の実践事例集や手引きなどの指導に役立つ資料を作成し、学校教育の現場が主体的かつ継続的に取り組めるような環境整備を行う。
(連携による教育推進)
○ 森林、河川、農業、水道、下水道、環境等をはじめとする各分野の専門家が、健全な水循環に関する教育の推進に関与する仕組みづくりを進める。
 
5 民間団体等の自発的な活動を促進するための措置
(表彰)
○ 全国の学校や企業、地方公共団体、民間団体、研究機関等を対象とした表彰など、水環境保全に係る活動を促進するため、関係者の意欲向上や国際的なプレゼンス向上の取組を推進する
(地域振興)
○ 水源地域の人々への共感と感謝を基盤として、地域振興活動の担い手に関する活動情報の蓄積・共有や新たな担い手の育成等を行うためのネットワークを構築するとともに、地域産品情報の発信等による地域産業の活性化を推進するなど、水源地域の継続的な振興を図るための活動を推進する。

6 水循環施策の策定及び実施に必要な調査の実施
(1) 流域における水循環の現状に関する調査
(雨水・再生水利用)
○ 雨水利用施設の利用用途、利用量や集水面積等の現状調査を継続するとともに、貯留量、雨水利用率など、水資源の有効利用及び雨水の集中的な流出の抑制効果を把握するために必要な調査を実施する。
○ 再生水利用施設の利用用途、利用量や水質等の実態調査を実施する。
(調査結果の公表及び有効活用)
○ 国、地方公共団体等は、調査等によって得られたデータや分析結果の公表に努めるものとする。なお、その際には、分かりやすく利用しやすいよう、オープンデータ化を図るなどデータの有効活用を図る。

7 科学技術の振興
(水の有効活用に関する科学技術)
○ 膜処理技術等を更に発展させた高性能で低コストの水処理技術等の開発を支援する。
○ 雨水の利用の推進を図るため、水質保全、維持管理等の技術や雨水の利用のための施設に係る規格等に関する調査研究を推進する。
○ 再生水を散水、修景用水等として利用するための安全性評価や再生利用技術、再生水利用による環境負荷やエネルギー削減効果の検証に関する研究開発を推進する。
(水環境に関する科学技術)
○ 汚水の高度処理や水の有効利用促進のための革新的技術の実証、ガイドライン化等により新技術の開発・普及を支援する。

8 国際的な連携の確保及び国際協力の推進
(1) 国際連携
○ 米国水環境連盟(WEF)、欧州水協会(EWA)及び国際水協会(IWA)等と連携を図りながら、世界における安定かつ安全な水の供給及び水環境の保全等に寄与することを目的として、水の効率的な管理と水処理技術の向上について情報共有・発信を図る。
 
(国際目標等の設定・達成への貢献)
○ 水と衛生に関するミレニアム開発目標(MDGs)を踏まえ、各国の持続可能な水と衛生の確保の実現に貢献する。例えば、排水処理率の向上による生活環境の改善、水質汚濁の防止等を図るため、下水道や分散型排水処理施設の整備などの生活排水対策の普及が進んでいない地域における技術協力等を推進し、各国における衛生施設の確保に貢献する。
○ ポスト2015 年開発アジェンダにおける、水に関する目標の位置付け及びその目標達成に向けた指標づくりに貢献するとともに、国際社会での具体的取組が図られるよう、我が国における知見・経験を国際社会と共有する。

(2) 国際協力
(我が国の技術・人材・規格等の活用)
○ 下水道や浄化槽など日本で発展してきた生活排水処理システムの国際普及や国際基準化を図る。

(3) 水ビジネスの海外展開
(水ビジネスの海外展開支援)
○ 我が国の水インフラ関連企業等が有する漏水対策技術や水処理技術、非開削管路敷設・改築技術などの優れた先端技術及びそれらのシステム等の海外展開を、金融支援・技術協力を含めて官民一体となって推進する。
○ 日本の水道、下水道の適切な運営・管理、更には、組織体制・法制度構築など水ガバナンスの向上に関するノウハウを相手国に導入し、日本の技術・ノウハウの優位性を確保する取組を官民が連携し推進する。
○ アジア等各国での水分野における事業実施可能性調査や現地実証事業、セミナーの実施等により、我が国の企業及び地方公共団体による水ビジネスの積極的な展開を推進する。
○ 水の再利用や汚泥の処理・処分、雨水管理をはじめとする水分野の国際標準化プロセスへの積極的・主導的な参画を通じ、我が国の技術が適正に評価されるような国際標準の策定を推進する。

9 水循環に関わる人材の育成
(1) 産学官が連携した人材育成と国際人的交流
○ 中長期的な観点から水循環に関わる各分野の専門的及び総合的な人材を養成するため、国の関係機関、大学、産業界等における技術開発、教育・研究の連携に取り組む。
○ 水インフラの維持管理、更新等に関する資格制度の充実や外部講師等による教育・研修等の実施を推進し、水インフラを管理する者の技術力等の向上を推進する。また、退職者の活用等により、若手の人材に対する技術等の継承を推進する。
 

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