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平成15年度観光の状況に関する年次報告

第2章 観光立国、この1年の動き

第4節 国際観光交流の意義の再認識

1 訪日外国人旅行者の感想文等による国際観光交流の意義の再認識


外国人旅行者の訪日促進には,昨年の白書にも記したとおり,大きく1)国際相互理解の増進,2)わが国経済の活性化,3)地域の自信と誇りの醸成による地域活性化の意義があると考えられる。
このうち,「国際相互理解の増進」は,国際観光旅行をした本人とその人と何らかの形で係わった外国人との一つひとつの会話や出来事の積み重ねにより少しずつ増していくものであるが,他の意義と異なり手段が限られており,むしろ国際観光交流という手段が最も効果的なものの一つであると考えられる。そして,この意義は日本の安全保障,国際平和にもつながる重要なものである。
ここでは,このような一つひとつの草の根的な交流の成果例として,平成15年度のビジット・ジャパン・キャンペーンの事業の結果得られた訪日外国人旅行者の感想文等及び日本人の海外旅行体験を紹介する。なお,訪日外国人旅行者の感想文の内容は様々であり,外国人が日本で見聞きし触れあったことへの感想のなかには,英語の標識や英語を話す人が少ない,物価が高い,海外のカードが使えるATMや両替ができる所が少ないなど,改善すべき課題を示す有益な指摘もあるが,ここでは,日本人に暖かくもてなされた結果,訪日によって日本に対する印象が好転したという,外国人に日本を訪れてもらうことの高い効果が認められるものを中心に紹介する。

  (1) 初めて日本(九州北部)を訪れた中国人の印象

・ 日本人との最初の接触は入国手続きを処理する時である。カウンターの向こう側で,制服姿の日本の女性職員が手続きをする観光客に微笑を見せていた。160人以上のお客さんに対し,160回以上の真心を込めた微笑,さすがに日本の女性は礼儀が正しい。
・ 日本での5日間の中で,私は日本人の奉仕精神に感動した。私達の手荷物等の運搬は,途中ずっとドライバーがしてくれる。又,チップももらおうとしない。
私達のバスがホテルを離れるとき,ホテルの従業員は一列になって,手を振って別れを告げる。バスが視線にある限り,彼らの手は止まらない。バスが曲がり,最後のお辞儀をしてから,送別の儀式は完成となる。私は,このお客さんが見えないところでも,真面目に作業を規定に順じてやるという仕事奉仕の精神を尊敬する。九州の温泉ホテルにはみなこのようにお客さんを送る習慣がある。これも九州の和式ホテルの特色の1つである。

  (2) 日本人高校生との交流で来日したある韓国人高校生の印象

・ 日本の友達は面白く,カリキュラムも楽しく工夫されていた。私はまだ高校1年生だから次回またこんな企画にもう一度必ず参加したい。今回のキャンプを通じて私の日本に対する先入観は完全に変わった。日本,いや日本人は親切だった。他人を配慮することができる人達だ。
・ 今回のキャンプで多くのことを学べ,友達もたくさん出来たようで嬉しかった。特に日本人の友達と過ごしたのが印象深かったし次回また会いたい。楽しい旅行だったし,この旅行を通じて共同心と譲歩することを学ぶことができた。今回の旅行から学んだことを韓国に帰ってからも使えればいいと思う。

  (3) 在日カナダ人女性の印象

・ 私は2001年1月から日本に住んでいます。日本に来る前は,私は,日本という国は,芸者,日本庭園,相撲,仏閣など外国人が日本と言えば誰でも連想する古い部分と,電化製品や自動車など日本ブランドとも言うべき製品を作る近代的設備とがばらばらに混在する国だと思っていました。ところが,日本に来て,東京,鎌倉,京都,奈良を訪れただけで,私は,伝統的なものと近代的なものとがいかに見事に融合しているかということ,そして日本の人々がそのような全く異質のものを調和させることをいかに簡単に成し遂げてしまうかということに深い感動を覚えました。
・ 私は,日本の食べ物の質の高さと多様性にも感銘をうけました。私は,本当においしいお寿司やお刺身を食べることに幸福を感ずるだけでなく,日本料理というものが最初想像していたものよりもずっと奥が深く,洗練されたものであることに気付きました。
・ また,日本はどこに行っても安全だと思いますし,世界的な大都市の通りを,何の心配もなく,夜歩き回れることは素晴らしいことだと思いました。
・ それから,私が会った日本の人々は本当に礼儀正しくて,二つか三つの英語の単語で私を一生懸命助けてくれた人もいました。

  (4) 日本人が海外で感じたうれしい体験

・ 10年ほど前,初めての海外旅行でドイツに一人旅をしました。フランクフルト中央駅に到着してユースホステルに行くときに,近くの人に尋ねたところ,一人目の人はそのあたりの地理に詳しくなく,次の人は英語がわからなくて困っていたところ,初めに尋ねた人が通訳をしてくれて,かつその周りの人が私が乗る路面電車の運転士や周りの乗客の人に私がユースホステルに行くことを説明してくれました。その上,その停留所に着くと,運転士が運転席から車外に出てきてくれて,ユースホステルまでの説明をしてくれました。初めての旅行でかつ夜だったので,ドイツの人たちの優しさに感激しました。それ以来,ドイツには5回ほど行くぐらいはまってしまいました。
・ 旅行会社の韓国4日間のツアーに参加。総勢20数名。年配者が多かった。現地の女性ガイドはまだ20代の新人。日本語もたどたどしく,観光地の説明もノートをみながらのもの。初めは「これはついてないな」と思いましたが,彼女の一生懸命のガイドと誠意あふれる姿勢にいつの間にかツアー客全員が暖かく彼女を応援する空気になっていました。最後のガイドさんの涙顔でのお別れの挨拶を聞きながら,私達は韓国に対する言い知れぬ親近感を覚え,またこの旅行が本当に楽しかったと感ずることができました。
・ アメリカの西海岸を貧乏旅行をしていたとき,他には一人の日本人も乗っておらず,いかにも治安の悪そうなバスに乗っていたら,かなり怖そうな感じの人が話しかけてきました。英語もよく分からなかったし,びびりながら話していると,私の乗っているバスが間違っていることが判明!!するとその人は30分に一度しか走っていないそのバスを一緒に降りて,少し離れた電車の駅まで案内してくれました。さらに,電車の中の人に向かって,「○○に行く人はいないかー?」「この子,○○まで行くから連れて行ってやってくれ」と見ず知らずの人に丁寧にも頼んでくれたんです。あのときほど,人は見かけによらないなあと思ったことはありません。そのことがあって以来,私も日本に来ている外国人を見かけるたびに笑顔で話しかけるようにしています。
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