平成15年度観光の状況に関する年次報告
第5章 観光交流空間の形成
第1節 観光地の魅力の向上
2 魅力ある観光地を演出する良好な空間形成
魅力ある観光地づくりには,「点」の観光スポットの魅力を向上させるだけではなく,これらを結ぶ「線」,さらにこれらを包含する「空間」が魅力的であることが重要である。そこで,これに関して講じた施策について記述する。
1)美しい国づくりの推進
観光立国の実現に資する,美しい国づくりのための基本的考え方と国土交通省のとるべき具体的な施策について,平成15年7月11日に「美しい国づくり政策大綱」を公表した。
大綱には,新たな具体的取り組みとして,
1)公共事業の各段階で住民や有識者等の意見を聴き,景観を評価する景観アセスメントの導入
2)良好な景観の形成に関する基本理念及び国等の責務を定める基本法制の整備
3)都市公園の整備,緑化,緑地の保全を一体的に推進するための法制度の見直し
4)違法な屋外広告物の整理や電線類の地中化について地区や期間を明らかにした重点的な取り組み
などを盛り込んでいる。
これを踏まえ,緑豊かで良好な景観の形成を図るため,平成16年通常国会に景観緑三法案(「景観法案」「景観法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」「都市緑地保全法等の一部を改正する法律案」)を提出した。これにより,良好な景観に関する基本理念及び国等の責務を定め,良好な景観形成のための規制や支援等の仕組みの創設を図るとともに,屋外広告物を規制する仕組みの充実と,都市における緑地の保全,緑化,都市公園整備等を一層促進させるための制度の充実を図ったところである。
美しい景観と豊かな緑を総合的に実現するための「景観緑三法」の整備
2)良好な街並みの形成
施策概要
■良好な都市景観の形成
良好な都市景観の形成を図り地域特性を活かしたまちづくりを進めるため,風致地区や地区計画等の都市計画手法の活用や,屋外広告物法及び条例に基づく屋外広告物の規制・誘導及び都市景観の形成に資する事業の推進を行った。
また,都市景観に対する国民意識の高揚を図るため,10月4日の「都市景観の日」を中心に行われる各地のイベントや,都市景観大賞「美しいまちなみ賞」の表彰の実施を推進した。
都市景観大賞を受賞した古川町歴史的景観地区(岐阜県古川町)
■個性と潤いのあるまちづくり
土地区画整理事業施行地区の核となる一定の区域を「地域の顔」として位置付け,質の高い公共施設の整備等により良好な景観形成に配慮した事業を,ふるさとの顔づくりモデル土地区画整理事業として指定し,積極的に推進した。
■良好な建築景観の形成
歴史的建築物等活用型再開発事業や日本政策投資銀行等の融資により,歴史的建築物等を活用した市街地の一体的整備の推進を図った。また,民間等の任意の建築活動の適切な誘導により良好な建築景観の形成を行う事業を推進した。
■まちづくり総合支援事業
地域の創意工夫を活かした「地域が主役のまちづくり」を強力に推進するため,ハード事業(道路・街路,公園,土地区画整理事業,市街地再開発事業等)から,まちに魅力と潤いをもたらすソフト事業まで,まちづくりに必要な各種市町村事業に対しパッケージで一括助成を行った。
■都市山麓グリーンベルト整備
山麓斜面に市街地が接している都市において,景観に配慮した砂防関係施設等の整備を実施するとともに,土砂災害に対する安全性を高め緑豊かな都市環境と景観を保全・創出する事業を実施した。
■地域の住文化の育成
地域の自然,伝統,文化などの特性を生かし,質の高い居住空間を整備するため,地域の住文化等に係る住宅供給に関する事項を定めた住宅マスタープランの策定及びプランに基づく住宅・街並み整備等を推進した。
3)良好な農山漁村空間の形成
施策概要
■美しい農山漁村の創出
国民共通の財産としての個性ある魅力的な農山漁村づくりに向け,農林水産関連事業における景観配慮の原則化や,農山漁村の景観形成のための取り組みの推進等,今後の施策の展開方向を取りまとめた「水とみどりの「美の里」プラン21」を公表した。
■水と緑に恵まれた農村空間の整備
子どもから高齢者に至る地域住民が快適で豊かに暮らせ,都市住民にも魅力ある知己環境を形成するため,自然環境や農村景観の保全・復元に配慮した農村地域の整備を総合的に行う農村振興総合整備事業における地域環境整備を実施した。
■多面的機能の発揮に配慮した田園空間等の整備
農業・農村の営みを通じて育まれてきた「水」と「土」と「里」が織りなす農村地域の地域資源を歴史的,文化的観点から再評価し,伝統的農業施設,美しい農村景観等の地域特性を活かした整備等を実施した。
4)良好な水辺空間の形成
施策概要
■水と緑のネットワーク形成
都市内の失われた良好な水辺と緑を復元し,地域の個性を活かした快適な都市環境の形成等を図るため,市町村が策定する「緑の基本計画」に基づき,公園緑地の整備,公共公益施設の緑化等を地区単位で実施する緑化重点地区総合整備事業を推進した。また,ヒートアイランド現象の緩和や生物多様性の保全を図るため,公園・河川・道路等の事業間連携により効率的・効果的に緑を生み出す取り組みである「緑の回廊構想」を推進した。
■水辺空間の整備
豊かで潤いのある水環境を形成し,ゆとりと潤いのある生活環境の創出を図るため,親しめる岸辺,清流の回復等の水辺空間整備を実施した。
■良好な水辺景観の形成
地域の自主性を尊重し,個性的なまちづくりを推進するふるさとの川整備事業や,桜づつみモデル事業を実施した。
また,各種河川事業において,多様な河川の環境を保全・復元する多自然型川づくりを実施した。
そのほか,河川改修と市街地整備事業等を併せて行うマイタウン・マイリバー整備事業を実施するとともに,地域のシンボルとして地域にふさわしい河川整備を推進した。
さらに,水害に強く良好な水辺環境の創出に寄与するスーパー堤防整備を荒川の小松川地区等で実施した。
マイタウン・マイリバー整備事業(人が集まる都市空間を創出紫川(福岡県北九州市)
■良好な水辺環境の確保
水質汚濁の著しい河川等において,河川事業や下水事業が連携し地域の取り組みと一体となって水質の改善,水量の確保のための導水などを行う清流ルネッサンスIIを推進した。
■水辺プラザの整備
魅力と活力ある地域の形成に向けて,自然豊かな川を基軸にした人々の交流ネットワークの拠点となる,水辺プラザを全国10箇所で登録し,地域交流の拠点にふさわしい水辺空間として,堤防の緩傾斜化,親水護岸,水辺の広場整備等を行った。
■良好な水環境の創出
豊かで潤いのある水辺景観の形成を図るため,新世代下水道支援事業を推進するとともに,都市水環境整備下水道事業についても推進を図り,良好な都市水環境の保全・創出を図った。
■港湾景観の形成
港湾を訪れる人々に親しまれる場としていくために,港湾のもつ景観資源を活用し,個性的かつ美しい港湾景観形成を図ることを目的とした港湾景観形成モデル事業として,15年度までに全国13港が承認され,佐世保港等において実施した。
■親水空間等の整備
農業水利施設の水辺空間等を活用し,都市住民にも開かれた豊かで潤いのある快適な水辺景観の創出による農村の活性化を図るため,親水空間の整備や地域用水環境整備事業を実施した。
5)良好な道路空間の形成
施策概要
■道路景観の形成
電線類の地中化や道路のり面の樹林化,植樹帯の整備,景観に配慮した舗装や道路構造物の整備等を推進し,地域の自然や歴史・文化を活かした道路空間を創出するとともに,緑豊かで安らぎとうるおいのある道路景観整備の推進を図った。特に,平成15年度については以下の施策を実施した。
・平成16年度から始まる「無電柱化推進計画」の策定
・景観に配慮した土系舗装等の開発・普及に向けた検討の実施
・ガイドラインの策定等による景観に配慮した防護柵の整備の推進
・市民と道路管理者が協力しながら街路樹を管理する「緑陰道路プロジェクト」の実施
■道路環境改善へ向けた社会実験
道路交通問題の解決が期待される先進的な施策について,場所と期間を限定して,地域の方々に試行的に施策を体験してもらいながら評価を行い,本格的に導入するか否かを判断するもので,平成15年度は沖縄県那覇市において中心商店街の活性化を念頭においた国際通りのトランジットモール化(道路を歩行者・自転車と公共交通機関に開放)の検証など20地域で実施した。
■賑わいの道づくり事業
商店街の再活性化を図るため,中心市街地の関係者と地元自治体が一体となって策定する活性化計画に基づき,交通利便性の確保と街並みの快適性の向上につき総合的かつ重点的に支援する賑わいの道づくり事業を全国5箇所で実施した。
■シンボルロード整備事業
都市・地域の顔となる街路を沿道建築物等と一体となったシンボル空間として整備するものであり,平成15年度は中央通(北海道小樽市)等で整備を行った。
■身近なまちづくり支援街路事業
歴史的環境と調和した都市空間等の整備のため,幹線道路や地区レベルの街路の整備を面的に実施するものであり,平成15年度は堀内地区(山口県萩市)等で整備を行った。
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