平成15年度観光の状況に関する年次報告
第5章 観光交流空間の形成
第1節 観光地の魅力の向上
4 文化遺産を活用した地域づくり
地域固有の歴史や文化を知るという観光ニーズに対応するべく,地域に伝わる伝統芸能,文化財などの文化遺産を活用した観光地域づくりがさまざまな形で行われている。そこで,これに関して講じた施策について記述する。
施策概要
■地域伝統芸能等を活用した観光の振興
地域固有の歴史・文化等を色濃く反映した地域伝統芸能等の観光振興への活用を推進するため,「地域伝統芸能等を活用した行事の実施による観光及び特定地域商工業の振興に関する法律」に基づき,都道府県が策定する基本計画(16年1月現在,21府県が策定済)に沿って実施される地域伝統芸能等を活用したイベントの広報宣伝費用の一部に対して資金確保のための側面支援を行っている。
また,「第11回地域伝統芸能全国フェスティバル」が平成15年10月に広島県広島市で開催されたほか,地域伝統芸能等を海外においても披露し,観光客の誘致に努めている。
■地方拠点史跡等総合整備事業等
文化財の活用の観点から,地域の歴史的・文化的なシンボル地になっている史跡等を,遺跡等の復元のみならず,ガイダンス施設等の情報・学習提供機能を総合的に整備する地方拠点史跡等総合整備事業(歴史ロマン再生事業)を実施している。
また,我が国の歴史を理解する上で極めて重要な街道,水路などのうち,往時のたたずまいを残しているものを「歴史の道」として選び,それに添う地域を一体のものとして,保存・整備し,活用を図る歴史の道整備活用推進事業を実施している。
■歴史的集落・町並み
平成10年にまとめられた「伝統的集落における歴史的環境整備を中心とした地域活性化方策の調査・検討報告書」では,約1,000地区が保存の望まれる地区としてリストアップされた。この調査によって歴史的な価値が明らかにされた地区では,文化財保護法に基づく重要伝統的建造物群保存地区の選定が積極的に進められ(平成15年末では56市町村62地区 図5-1-1),市町村が行う事業に対して国の助成措置が講じられ,地区内の整備が進められている。
公開活用施設の見学等を通して学習と交流が図られ,また,地元住民による個性的なまちづくりが進められ,歴史的集落・町並みの保存が地域づくりに活かされている。
図5-1-1 重要伝統的建造物群保存地区一覧
■歴史的港湾施設
全国的には800以上の歴史的港湾施設があり,そのうち旧新潟税関庁舎(新潟港),富岩運河水閘施設(伏木富山港)などが重要文化財に,また,和賀江嶋などが史跡として国の指定を受けるなど,「文化財保護法」に基づき指定を受けているものがある。
運河,煉瓦造りの倉庫等の歴史的港湾関連施設を保存・活用し,文化的で歴史的な情緒漂う美しい空間とする歴史的港湾環境創造事業を,15年度までに,横浜港(神奈川県)等の13港において実施した。
また,瀬戸内海のもつ自然と貴重な歴史的資源の保全と活用を図り,海の歴史を軸としたネットワークづくりを行うための港湾施設を整備する「瀬戸内・海の路事業」を,15年度までに下関港等の10港において実施した。
歴史的港湾環境創造事業で整備された横浜港赤レンガパーク
■歴史的灯台
明治時代に建設された灯台の中には,今なお,現役のものが66基あり,これらの多くが,歴史的・文化財的価値を有していることから特に価値の高い灯台について,その価値を損なうことなく現役のまま運用することとしている。
■歴史的砂防施設
砂防施設の中には,歴史的価値を有するものが多く存在し,万内川砂防堰堤(新潟県),牛伏川階段工(長野県)等が登録有形文化財に登録されている。平成15年度には,歴史的砂防施設の価値を広く国民に理解してもらうとともに,地域の活性化を支援するために,歴史的砂防施設の適切な保存・活用等のためのガイドラインを普及させた。
■歴史的道路等
道路施設のうち,歴史的価値の高いものについては文化財保護法に基づく指定・登録を積極的に進めており,日本橋(東京都),天城山隧道(静岡県)等が既に重要文化財に指定されている。
また,特に重要な歴史的・文化財的価値を有する道である「歴史国道」(東海道「関宿」等24ヶ所を選定済)について,その整備・活用等を図った。
「歴史国道」として整備された関宿
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