平成15年度観光の状況に関する年次報告
第5章 観光交流空間の形成
第5節 観光資源保護活動等の推進
観光資源の保存と活用を進めるにあたっては,国民一人一人が意識を持って活動することが求められる。そのため,観光の意義や重要性の啓発等の施策が様々な形で行われている。そこで,これについて講じた施策について記述する。
施策概要
■観光週間の実施
「観光道徳の高揚と観光資源の保護週間(観光週間)」は,観光に関する正しい概念の普及と観光資源の保全等について広く国民に広報するため,閣議了解(昭和40年5月)により設けられたもので,毎年8月1日から7日までの1週間実施している。
平成15年度は「観光は,住んでよし,訪れてよしの国づくり」を統一標語に,関係省庁,都道府県が主体となり,関係団体の協力を得て,観光の意義や重要性の啓発と普及,連続休暇の意義の普及,観光道徳の高揚保護などを実施目標としたイベント等を実施した。
観光週間ポスター
■自然保護思想の普及
1)自然に親しむ運動
自然に親しむ活動の普及のため,毎年7月21日から8月20日までを「自然に親しむ運動」月間としている。平成15年においても,自然観察会等の自然とのふれあいを推進するための行事を全国の自然公園等で実施し,この運動の中心行事である自然公園大会(第45回)を水郷筑波国定公園(茨城県玉造町,霞ヶ浦町)において開催した。
2)全国・自然歩道を歩こう月間
自然とふれあいながら歩くことを推奨するため,毎年10月の1か月間を「全国・自然歩道を歩こう月間」として全国の自然歩道等において各種行事を実施した。
3)自然公園指導員
自然公園の保護と適正な利用のため,自然公園指導員約3,000名を委嘱し,自然保護思想や利用マナーの普及啓発,安全利用等に関する指導等の推進を図った。
4)パークボランティア活動推進事業
国立公園の利用拠点において,自然解説活動等の充実を図るため,ボランティア養成研修会の実施,解説マニュアルや活動計画の策定等,ボランティアの活動条件整備を図った。
■緑化意識の醸成
1)国土緑化
多面的機能を有する森林の整備・保全を社会全体で支えるという国民意識の醸成・高揚を図るため,全国植樹祭,全国育樹祭等の開催,森林ボランティアなどの広範な国民による自発的な森林づくり活動や巨樹・巨木や里山林等の適切な保全・管理のために必要な技術開発等を促進したほか,「みどりの日」(4月29日),「みどり週間(4月23日~29日)を中心とした各種緑化キャンペーン等を全国的に展開した。
2)都市緑化の普及啓発
「春季における都市緑化推進運動」(4月~6月)や「都市緑化月間」(10月1日~31日)において,全国「みどりの愛護」のつどい,全国都市緑化フェア等を開催するとともに,「みどりの愛護」功労者表彰,都市緑化及び都市公園等整備・保全・美化運動における都市緑化功労者表彰等を行い,広く都市緑化意識の高揚,緑豊かな魅力ある環境づくりを推進するための普及啓発を図った。
■文化財愛護思想普及高揚
1)文化財保護強調週間
「文化の日」を中心に実施する教育・文化週間(昭和34年9月4日閣議了解)の一環として,毎年11月1日~7日を「文化財保護強調週間」とし,各都道府県の教育委員会と連携しながら,国民一人一人が文化財を国民的財産として愛護するよう,積極的に広報活動を行うとともに,その気運の醸成を図っている。平成15年度は,文化財所有者等,関係機関・団体の協力の下,文化財愛護思想の高揚のための展示会,史跡めぐり等の各種行事及び広報活動が行われた。
2)文化財防火デー
1月26日を「文化財防火デー」とし,この日を中心として文化財を火災・震災その他の災害から守るため,各市町村消防本部及び各都道府県・市町村の教育委員会並びに文化財所有者等と連携し,全国的に文化財防火運動を展開した。平成15年度は,教王護国寺(京都市)において大規模な消防訓練を実施したのを始め,全国各地の文化財所在地において防災訓練や防災対策等の各種行事が行われた。また,「文化財防火デー」実施50年の記念事業として,1)平山郁夫氏による基調講演の実施,2)文化財防火功労賞受賞者の表彰3)文化財愛護絵画・標語コンクールを実施し,さらなる文化財保護思想の普及に努めた。
■ナショナル・トラスト活動の展開
ナショナル・トラスト活動は,募金活動等を通じて民間の自主的参加を得て,歴史的価値を有する文化遺産や良好な自然環境を有する土地等を取得するなどし,それらの適正な管理,保全及び活用を図っていこうとする運動であり,観光資源の保護や自然環境の保全の観点から,15年度においては次のような施策を講じた。
1)観光資源の保護と活用
(財)日本ナショナルトラストにおいては,市民からの募金等により,国民的財産として後世に継承するべき観光資源を適切に保護・管理しつつ,広く一般に公開し,活用する事業を行っている。
15年度は,飯高寺を中心とした巨木を育む里山(千葉県八日市場市),近江八幡のホフマン窯と赤レンガ(滋賀県近江八幡市)に係る観光資源保護調査などを実施しており,国としては同財団が実施するシンポジウム等を支援するなどの施策を講じた。
2)自然環境の保全
第21回ナショナル・トラスト全国大会には全国各地の関係者が参加し,シンポジウム等を通じて自然環境,文化遺産保全活動の一層の推進を図った。国としては,新たに活動を始めようとする団体のための手引書の作成や,同活動への企業の参加に関する調査など,普及,定着のための施策を講じた。
■美化・環境衛生対策の実施
1)都市公園
都市公園については,地方公共団体が地域住民等の協力を得つつ,清掃,補修等のきめ細かい管理を行っている。また,国営公園については,快適な利用が可能となるよう国が清掃等維持管理を行っている。
2)自然公園
国立公園内の集団施設地区とその周辺の美化清掃事業を関係都道府県等の協力の下に実施するとともに,その他の主要な地域においても,美化清掃団体を現地に組織し,平成15年度も引き続き実施した。
また,8月の第1日曜日を「自然公園クリーンデー」とし,関係都道府県の協力の下に全国の自然公園で一斉に美化清掃活動を行った。
さらに,自然公園内での歩道,便所,休憩所等の公共的施設の清掃,補修のほか,利用者に対する自然保護思想の普及啓発等の事業を(財)自然公園財団が,知床国立公園等20支部において行った。
3)廃棄物処理等
観光地においては,観光客が集中する特定の季節に排出されるごみ,し尿の量が著しく増大し,市町村による廃棄物の適正な処理に多くの困難が生じる場合がある。このため,廃棄物処理施設の設置に当たっては,廃棄物の質及び量の季節的変動を考慮に入れて施設の能力を設定することとしており,これに沿って補助を行った。
下水道については公共下水道,流域下水道,特定環境保全公共下水道等の整備を図り,観光の面からは特に国立・国定公園等における湖沼・ダム貯水池周辺地域等の水質保全を図るとともに,合わせて観光地における生活環境,周辺環境の向上を図った。
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